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五百二十五生目 青年

 スクロールの力で結界に力を送っている魔力回路をたどっている。

 どこもニンゲンだらけなこの商いの街でだが裏路地に入るとさすがにニンゲンたちはグッと減る。

 それなのに私の横にはなぜか同じニンゲンが共に歩いているようだった。


 一瞬ストーキングか疑ったがそれは違う。

 追いかけるのに横にいてどうする。

 私が速度を緩めたら普通に抜かしていっちゃうし。


 ただ相手もたまに立ち止まる。

 少し何か考えたそぶりを見せてからまた歩き出すのだ。

 ……なんか私がストーキングしているみたいだな。


 あまり気にするのはやめておこう。

 私はこの街に詳しいわけじゃあないし私が通る道は誰かの生活通路であってもなんら不思議じゃない。

 ただなんとなく気になってしまうが。


 細身ながらしっかりとした体型で頭から後ろ向きに2本細くねじれたツノが生えていてきれい。

 服は帝国のニンゲンがよく着ている特に特徴のない洋服だが帽子はさっきあそこで売っていたものかな。

 少し前に売っていた瓶の酒精入り甘酒を飲んでいる。


 気づくと手に持っているものが変わっている気がする。

 どうやら見かけたものをどんどんと買って食べているらしい。

 減る速度が早すぎる気がするけれど。


 他者のことを気にしている場合ではない。

 魔力の流れを見失わないようにしないと。

 魔力の流れは一直線だから街の道にはまったく沿っていない。


 うまく向こう側へつながる道を探りつつ進むことになっている。

 まあ光魔法"ディテクション"や"鷹目"そして"見透す眼"で地形を探り脳内マッピングしながら進んでいるのでほぼ最短でいけているはず。

 まあ……だからこそ彼とかぶっているのかもしれないが。






 そのまま進むこと10分以上。

 結局彼と行先がかぶりきったまま同じ場所にたどり着いた。

 しかもなんというか……入るのにとても躊躇するほどにただの民家に通じている。


 "見透す目"でみても中身はただの民家そのままで中に誰もいない。

 無人のようだ。

 あのニンゲンの家……だったのかな。


 ……ドンドンドン!


 あれ。彼なんか家の扉叩き出したんだけれど。

 しかもおかしいなって首かしげている。


「仕方ない。入るか」


 ……!

 はっはやい!

 私から見てもかなりの速度で魔法を!


 しかも最小限の規模でこっそりと発動させた!

 普通じゃあ見逃してしまう。

 カチリと金属音がして扉が開く。


 今ピッキングしたよね?

 魔法で鍵開けたよね?

 コイツもしや何か悪いやつなんじゃあ……?


 あまりにも堂々と入り込むものだから止めるまでもなく奥へ行ってしまった。

 ボーッとしている場合じゃない。

 扉は開いたままだから追いかけよう。


 足音を立てないようゆっくりと駆ける。

 中に入って様子を伺う。

 スキルで中の様子をもう1回……


 バタン!


 背後で急に扉がしまった!?

 前から気配! 身構える。


「やあ! なんでかは知らないけれど、行き先が一緒だったみたいだね!」


 思わずキョトンとしてしまった。

 あまりに場の空気に合わないほどに気の抜けた明るい声。

 さわやかな笑顔を見せたのは……先程の彼だった。


「あなたは、さっきの……」

「こんちわ! お嬢ちゃん、そう身構えないで。さっきまで一緒だった仲じゃない! こう見えて、怪しいものじゃないからね!」


 帽子を指で弾いてどことなく見たことのあるポーズをとる。

 アレだ。かっこつけの笑顔だ。


「いや、さっきピッキングしていたし、今の扉も魔法の応用で閉めましたよね?」

「うっわ〜! きっちり理解(ワカ)られていた。どうあがいても怪しいお兄さんだねこりゃ」


 かっこつけのポーズが思いっきり崩れた。

 なんというか締まりきらない雰囲気を彼から感じる。

 とりあえず構えは解こう。このぐらいの範囲ならすぐに動ける。


 苦笑いしている彼に"観察"!

 ……あれっ妨害された!


「おっと、『観よう』とした? それはダメだよ、お互い話して理解(ワカ)りあおう」

「……わかりました」


 むむ。抜けているだけかと思いきや"観察"に感づいた。

 いまさら見破るためのメガネかけるわけにもいかない。

 それになぜだか全く敵意を感じない。


 こう普通はもうちょい警戒するだのさぐろうと思うだのあると思うんだけど。

 なんというか……何も気にしていない。


「まあ、そうだね。理由があるし」

「心の中を読んだ!?」

「いや、顔に出ていたから……」


 そこまでわかりやすいかな私。

 ただ"影の瞼"は発動していないんだよね。


「まあ、お嬢ちゃんも察している通り? ここは防音結界があるから、多少何はなしても大丈夫そうだしね!」

「っ! やっぱりそうでしたか……」


 あまりに目の前の存在に気を取られていたが確かに良く探ると結界がある。

 やはりこの場所は特別らしい。


「じゃあ腹の探り合いをしても仕方ないし、言うけれど。僕が蒼竜さ!☆ミ」

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