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五百二十四生目 誘惑

「安いぜ……! この質のアヘンは滅多にこの価格じゃ出回らねえ」

「うちの武器はいわくつきだ。そういうの好きだろう、みんな?」

「おねえさん! この先に良い男たちが集まる店、あるけどいかがかな?」

「け、結構です……」


 やりすごすというのも大変だ。

 さっきから歩けばとにかく声をかけられまくる。

 場合によっては物理的にでも止められる。


 幸い行き交うニンゲンたちの数は多い。

 だから私だけに固執しないから抜け出せている。

 場合によっては気配をうまく操って相手の視線がよそを向いた瞬間に消えるように移動できる。


 さすがにそこらへんの慣れはこっちのほうが断然に上。

 客引きパワーは強くてもそれでなんとか対抗だ。

 話術系スキルのせいでしっかり話を聞いてしまうとスキルの力でごり押される可能性があるのはこわい。


 だが優先すべきは今探知して追っている魔力の流れだ。

 それまでよそに構わないと決めているからその分楽……


「イヒヒ……今ここにしかない、今日だけの魔本たち、あるよ」

「お、おおお……」


 フラフラ……ハッ!

 今のは危なかった……!

 くっ。なんて強い言葉なんだ……!


 私がそういうのを好きって分かって放ってきているかのようだった!

 気をしっかりもたなくちゃ。


「今、価値のわからん輩が多い表じゃあ、あんまり出せない呪具たちが揃っているよ……」

「おおお……」





 気を取り直して。

 なんとか怪しげな店の多い通りを脱出しふたたび民家の間にある裏路地に。

 商売屋台が置けるほど広くない通路になるといきなりニンゲンの姿がまったく消えるから面白い。


 まるで裏世界に迷い込んだかのようで。

 ここは鏡写しの異次元世界……

 だなんて定番の思想しか思い浮かばないけれど。


 ゆっくりと歩き魔力を追っ――


「うっ!?」


 急に身体がふらつく。

 急いで物陰に寄って座り込む。

 落ち着いて魔力を再生成……混合……発動!


 ふう。状態が落ち着いた。

 最近"進化"しているとこのように不安定化することが多くなった。

 召喚獣のひとりプライドから何かを身体で受け取ったあとから少しずつ。


 さらにドラゴンのホワイトアイから魂のかけらを受け取ったあとに加速度的に悪くなっている気がする。

 今の所大局には問題ないがこれほど多いとさすがに気になる……

 もともと"進化"はかなり欠陥寄りな強化方法だ。


 魔法種類を複数自前で用意という時点でハードルが高い。

 魔法が次にそのスキルに結びつかないと成立しえない。

 私は運が良かった以上の何者でもない。


 そのさいに魔法3つか4つ分の行動力を摩耗する。

 私のように軽減や回復スキルが無い限り行動力は貴重だ。

 なのに戦闘にはぶん回す必要がある。


 この時点で重いが魔力をセーブして混合させるのは訓練しても困難。

 私みたいに良い師と出会いそれなりの才能と努力が求められる。

 多数の面々を見てきてこの世界での私の能力は少しは把握できているつもりだ。


 言っては悪いが私には魔法の才能があった。

 インカ兄さんは未だ魔法をひとつも使えない。

 そのかわり直接戦闘は恐ろしく優れているみたいだが。


 さらに混ぜ合わせ全身に巡らせるとなると出来るものはかなり少ない気がする。

 わかっていても単純に難しい。

 そして……いざ"進化"すると今度は万能感と共に莫大な力を得る。


 これは今も"進化"するたび感じるものの最悪な組み合わせだ。

 きっちり抑え込み向き合わなくては私の心が侵食されていく。

 魔法やスキルでのリカバリーもあったほうが良い。


 なかなか偶然"進化"にたどり着けてもおそらくは大半ここで死ぬ。

 たしかに強くはなるもののそれだけだ。

 地力が足りなければ油断とスキだらけの相手を周りが仕留めないはずもない。


 そして"進化"維持の肉体負担と終了後の脱力感。

 アヘンを馬鹿にできない要素が揃っている。

 気をつけなくてはあっという間にクセになるのだろう。


 ただ最近のはそれを差し置いてもおかしい。

 とにかく不安定化していて"進化"が崩れそうになる。

 どの"進化"先でも同じだから石を1回切り落としたというのは関係ない。


 なんだかわからないが私の中で何かが起ころうとしている。

 その直感だけはあった。

 これで風邪ひいたってオチだとむなしいが。


 さてそろそろ移動再開しよう。

 スクロールよし。しっかり握って魔力の流れ可視化よし。

 "進化"のことは気になるがとにかくこちらを優先だ。






 しばらくあるき続けること数十分。

 なぜだろう。

 私の横にひとり誰かがいる。


 その彼は別に私に話しかけたわけではない。

 ただひたすらに私の行く道とかぶっているのだ。

 私は魔力の流れを追うために何度も裏路地と新たな別の通りを渡り歩いている。


 それなのに道がかぶるのおかしくないか?


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