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五百二十三生目 飲料

「どうですか! こちらが魔物舎です!」

「おおー! 本当に大きい!」


 宿が欲しくて客引きについて行ったら割と立派な魔物舎だった。

 しかも喧騒から少しだけでも遠い位置にある。

 においの発生しやすい魔物舎はどうしても人通りの多い場所に設置するわけにもいかないから宿側としては少し立地不利だったのかもしれない。

 だが私には好都合。


 ちなみにダカシとイタ吉それにジャグナーはこうやって他人が絡んできた時に面倒を避けるために口をつぐむことを多くしている。

 そのかわり翻訳受信機に備わっている私達の脳裏に流れるログを介したチャットでこっそりと文字でやり取りをしているわけだ。


[ジャグナー:デカイな。デカイのは良いことだ。戦略的に有利になりやすい]

[ダカシ:俺も……まあギリギリか。ニンゲンとしてベットで寝泊まりが、恋しくはあるな……]

[イタ吉:てかデカすぎるだろ]

[それこそドラゴンでも泊める気なんじゃない? ほら看板のところ『リュウノネグラ』だって]


 私が大きな魔物舎の入り口天井近くにある看板を見るとみんなも見上げる。

 宿屋の客引きも視線に気付いたらしい。


「ええ、名前、お気づきになられましたか? 私達はいずれ、この魔物舎で(そう)竜様が寝泊まりしてくださるのを目標にしているんです! そのためスタッフも1流揃いですよ!」

「そ、そうなんですか」


 すごい勢いで押し切るように話すなこの人。

 ただ……


[イタ吉:蒼竜って……]

[ダカシ:大山脈の正体だよな? あのサイズは無理だ]


 ですよね。

 まあ知らぬが仏……いや彼らも本気で思っているわけではないだろう。

 セールストークだろうし。





 それはともかくダカシたちは魔物舎に入れてもらい私は宿の方に移動した。

 個室をとり一息つく。

 大量にオプション勧められたがなんとか大半断るのに苦労した……


 なんとか妥協案で受けたオプションは今私が飲んでいるドリンクサービス。

 ホリハリーの姿なのでカップから爽やかなフルーツドリンクを手で持ってゴクゴクと。

 それと……ダカシたち魔物舎の全体的なグレードアップ。


 自分はそこそこ質素な部屋で個室さえ確保できればよかったのでこれで良いがイタ吉たちはねぎらわなくてはね。

 今頃手厚くサービスを受けているだろう。

 なんか……マッサージとかブラッシングとか。


 さあてスクロールを展開していこう。

 通常市販される魔力探知スクロールをもとに私がいじって特定のものだけ探せるようにしたスクロールだ。

 魔法スクロールのもとはいわゆる事前処理をやっておいてくれて比較的かんたんにいじれるようにしたものだ。


 いわゆる前世で言うPCのOSあたりのことかな。

 少し違うがだいたいはそんな感じ。

 机の上に広げそれを所定の手順で起動。


 あとは勝手に探してくれるはずだ。

 少し時間が必要だけどね。

 さて次は何飲もうかな……


 うーん……うん!?

 並んでいるドリンクの中にドクロマーク!?

 なっなんだこれ!


 手にとって文字を読む。

 あ……アヘンチンキ!?

 当たり前のようにドリンク提供なのがこわい!


 アヘンチンキとはアヘン(パイプ)よりももっと手軽にアヘンを摂取するために作られたものだ。

 簡単に言うとアヘンを酒に溶かしてある。

 ドクロマークも違法薬物だからではなく『飲み過ぎ注意』くらいの意味合いらしい。


 これも『風邪の時、喉の調子が悪い時、気分が落ち込んでいる時に』といかにもな感じで書いてある。

 帝国では一時期アヘンが違法になるかもと騒動があったらしいか最近のゴタゴタで延期されているらしい。

 今も表に行けば大量のアヘンを箱買いできてそれをアヘンチンキに加工したものもさらに売られているだろう。


 きっと未来は大変だな……

 前世の歴史でもあったことだ。

 私はそっと瓶を棚に戻した。


 ……あ。ダカシたちにも一応注意するように連絡しておこう。

 やられたら私の魔法でも取り返しがつかないかもしれないからね。

 "以心伝心"の念話開始……






 宿からでてスクロールをしっかり握る。

 魔法の効果で私の視界にのみ追加情報が現れる。

 青い淡い光のような道筋だ。


 コレがスクロールが暴き出した隠された魔力ライン。

 実際は地下を通っているらしいが問題なく把握できる。

 光は一方向に流れていて送信と受信の向き確認も問題ない。


 この流れの上流……つまりは送信側に用がある。

 まずは私だけで潜入調査だ。

 逆探知妨害も同時に行っているから相手からは私がアクセスしていることはわからないはず。


 ひたすらニンゲンで賑わう大通りを抜け……

 繰り返された増改築のさいに出来てしまうすき間である裏路地を抜けていく。

 商売の質が活気からいつの間にかどこか暗い誘惑に変化していく。


 怪しげな気配がある場所に出たがルートはまだ先だ。

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