五百二十生目 無線
現在ダカシから魔法がかき消えるさいの説明を聞いている途中。
暑さの中にさわやかさがある草むらの地でやっている。
「上位能力そのものは分かるか?」
「うん。いくつかあるからね」
私がホエハリからケンハリマへトランスしたさいに上位スキルが習得可能になった。
現在も多数所持している。
「なら話は早い。上位能力は基本能力に対して圧倒的に優位に立てるということだ」
「例えば基本能力の火の魔法ならば相手が上位の火への耐性や魔法耐性を持っているだけで半減以上されるらしい。能力の力量差が大きいならなおさらだ」
「そこに耐性自体の能力による減算、本人の魔法耐性やシールド系統による減算、そして当たる部位自体の頑強さで、最終的な魔法の効果が決まる」
「この時……あえて数字で表すなら攻撃側の威力がゼロ以下になってしまえばレジスト成功でかき消えるわけだ」
だいたいわかった。つまり上位能力はあるだけで有利なのか。
なんとなく能力がまとまっただけかと思っていたよ。
「なーるほど……つまり攻防が逆の場合も?」
「そうだ。放つ火魔法が上位能力ならば相手が基本能力で火耐性を持っていても、かなりの割合を貫通できる。例え基本での耐性を高くもっていても油断はしないことだ」
うむむ。基本能力結構不利だな!
想像を絶するレベルでスキル格差があった。
なんとなく優先してとっていてよかった上位スキル。
"回避運動""近接攻撃""森の魔女"あたりで防御と物理攻撃と魔法の上位が揃っているからここまで戦ってこれたのかもしれないなあ。
「あと、お前の土の加護……だったか?」
「うん? 確かにあるよ」
「その加護とやらもかなり大きいらしい。俺には無いからわからないが、攻防ともにそのジャンルで大きく違いが出るとか……だからお前にはあまり土魔法が効かないんじゃ……ないか?」
「あー……心当たりはある」
そういえば私に対する土魔法はあまり通ってなかったイメージがある。
基本避けていたし戦闘時それどころじゃなくて気になってはいたけど放置していて忘れていた。
「俺には加護はないからな。あそこらへんは自力で感覚掴め」
「うん、ありがと」
そうしてまた旅路に戻り……
……うん? 連絡だ。
"率いる者"で"以心伝心"が借りられた。
『ドラーグです! 帝都につきました!』
『おお! はやい!』
「うん? 何か連絡が?」
「ドラーグが帝都についたらしい」
「流石に早いな」
ドラーグは影に潜んでほぼ直進で進行していたからかなり早い。
もちろんたむろったり別の事をして進まないことも少なくないが。
『それで、どう? 入れそう?』
『それが……直接見てもらったほうが良いかもしれません』
どういうことだろうか。言葉では伝えづらい感じなのか?
何があったのか……
とりあえずダカシに告げてまた歩行を止め"以心伝心"のもう一つの力を使う。
五感共有!
うち視覚と聴覚!
ドラーグと視界が同調化する。
『あ、来ましたね。見えます?』
『うん。って……本当にこれは、なんなんだ?』
ドラーグを通して見えた景色。
それはどこまでも続きそうな黒い壁だった。
視界が動き上空へと移動していく。
『今空を飛びました……上空から引いてみると、こうなっているんです』
『これは……規模がまったく違うけれど、見覚えがある!』
どんどん高度が上がりつつ下がっていく景色。
全体像は……あまりに大きくそれこそ大都市を包み込むほどのもの。
ドーム状に暗黒が広まりすっぽりおさまっている。
アレは私達が前に集落で分断に使われた結界だ。
あらゆるものを内外問わずに通さない絶対防御壁。
これを帝都に使われていただなんて!
あの時は祀られていた大岩の謎の力で吸収され助かった。
だがその後の調査であの大岩はすでに何も吸収しなくなっていることが判明した。
たしかに魔法吸収の痕跡は認められたもののその1回で使い切ってしまったらしいというのも判明している。
つまり同じ手は使えない。
というか規模が違い過ぎて多分同じ手では無理。
だけれどもここまでの大規模な重い結界ってそうラクラクとは生み出せなかったはず。
『ドラーグ、私からじゃあ良くわからないけれど、ここまで大規模になると多分どこからか外部からエネルギー供給が来ていると思う。魔力を追えないかな?』
『わかりました、今分身で調べます』
"以心伝心"を切り報告を待つことに。
だがこれは困った。
もうじき軍を動かすらしいこの時に進行不可能がわかったら軍は動かせない。
まあ先に気づけてよかったとも言える。
もし軍が動いてから気付いたら……軍が詰む。
うん? ダカシが何か言いたげにこちらを見ている。
「なあ……なんで、さっき交信能力使っていた時に片耳を抑えていたんだ?」
「ああ……ついクセで」
イメージしやすい身体の動きはとても大事。