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五十生目 成長

 あれから大烏は一度巣へと帰っていった。

 誰もいないとはいえ一応ホームだ。

 やり残したこともあるだろう。

 その間に私はキングとクイーンにお呼ばれした。


 彼らの普段ゆっくりしている森の一角。

 ある意味スミとも言える地形で隆起に囲まれた中だ。

 最近はめちゃくちゃ土器が積まれてて物置にも見える。

 群れのみんなの献上品だ。


 今回呼ばれたのは、まあ先程の事についてだ。

 私の進化能力やら大烏やらと。


「よく来た」


 父ことキングはあまり話さない。

 職業上全ての指示などはクイーンを通さないと出せないのもある。

 けれど最近、元々の性格でのコミュ力の低さを感じる。

 顔には出さなくとも汗とか心音とかでなんとなく、ねえ。


「早速ですが、あの不思議な姿についてと、その時の戦いに関して教えてください」


 母はいつも上機嫌に笑っている。

 心配しているわけではなく、正確に我が子の成長を見ときたい、みたいな面だなぁ。

 よしよし、ちょっと緊張する。


「あの時の姿は進化で……」


 その後は私は自分の力や大烏との戦いについて話した。

 さすがに包み隠さず話すととてもアレなので、話さなくて良い所は話さなかった。

 力加減とか進化の仕組みに関して話すだけだ。


「……と言った感じです」

「なるほど! それはすごい!」


 母は最後までニコニコして聞いてくれた!

 ……なんか母が父を突いているな。

 こういう所からも何となく見えてくる、父の苦手分野。


「……よくやった、小さき英雄だ」

「あらあら、良い言い回し! 確かにもう、小さくても立派に英雄ね!」

「いえ! もったない言葉です」


 ホエハリの指す英雄とは、群れの救い主。

 父は昔、英雄となった。

 仲間とともに群れから新たな群れを作るさいの一員だったそうだ。

 その時にこの今の場所で恐ろしい敵と戦い場所を確保したんだとか。


 クローバー隊メスの(かた)が失敗パターンなら父が成功パターンだ。

 誰もがムリだとおもった凶暴な魔物相手。

 それに、まだただのホエハリの身で立ち向かったらしい。

 母は、その時なんどもボコられた父の回復役だったとか。

 立派にふたりで英雄という感じだが英雄といえば父を指すそうだ。

 そこらへんはあれだろう、勇者が前で剣ふる人。

 後ろで回復する人が僧侶で目立つのは勇者みたいなものだ。


「そこで!

 小さな英雄にはもう大丈夫ということで、単独行動の権利を与えたいと思います。

 どうですか?」

「え、本当ですか!?」


 単独行動の権利は事実上おとなの証みたいなものだ。

 仕事さえしてればふらっと縄張りの外へ行っても叱られる事はない。

 そして子どもの仕事はハートペアに教えをこうくらいで殆ど無い。

 つまり、フリーってやつである。


「ええ、どこへ行っても無事戻ってきてくださいね」

「ありがとうございます!」


 ……今の言葉、何となく心のうちを見透かされている気がする。

 大丈夫、帰るべき故郷はここだから。




 ぐっすり眠る夜の中。

 長い……声……

「…………」

 行かなきゃ……そのために……私は……




 おはよーございます!

 夢ってなかなか思い出せないよねー。

 今日は夢に幽霊がでてきたなー、みんなでタップダンスしていた。

 なんて陽気な幽霊! と突っ込んだら目が覚めたよ。


 私は単独行動権利を手に入れた。

 さあ早速動こうかなと思ったけれど忘れかけていた事を思い出した。

 今日にはニンゲンたちが帰ってくる!

 朝食を済ませ許可をとってから早速おでかけだ。


 さあ行こうかなと思った時。

 空から羽ばたく音。

 背中の翼をはためかせ大烏が帰ってきた。

 着陸するとその特徴的な腕を地につけ脚を折りひざまずいた。

 え、どこで覚えたのそういうの。

 元からなの?

 というかなぜその姿勢?


「主よ、ただいま戻りました。

 お出かけですか? ぜひ私もお供させてください」

「え、いや、そこまで改まらなくて良いから」


 ええ、何なの?

 烏は狡猾な種族だからなーこうやってへりくだって虎視眈々と逆転狙いなのかなぁ。

 何考えているか分からないのは怖い。

 においや音それに目は普通だから余計怖い。


「いえいえ、私を捧げると決めたお方、この程度は当然です」

「いやいや、そんな事しなくていいから、まず立ち上がって、ほら」


 いえいえ、いやいやを繰り返してやっと少し折れてくれた。

 折衷案で別に跪かなくて良いという案だけは通した。

 ただし私は主呼びされる事に。

 はずかしい。


 ちなみに大烏は立ち上がれば私の数倍の大きさ。

 具体的に言うと大きな熊クラスの父が立ち上がったくらいの大きさ。

 翼はそれを支えるためにかなり立派なサイズ。

 それを気にしてか大烏は立つだけで非常に申し訳無さそうだ。

 大きさなんて気にしくていいのに。


「それでなんで私の行く所に付いてくると?」

「はっ。私は主に仕える身、(めい)の無い時は常にお側におります」


 なんなのだその王様相手みたいな感じ。

 違うよ、プライバシー配慮して欲しいタイプの小市民だよ。

 これもやっぱり、いやいや、いえいえの繰り返し。

 今度はあまり断るための言葉を持たなかった私が押し切られてしまった。

 まあ、せめてニンゲンと一緒にプライバシーについて勉強してもらおうかな……


 大烏を引き連れ私は森を歩く。

 森の中てこてこ歩きながらスキルの無敵について考えていた。

 無敵は、強い相手は間違いなく弾かれている。

 それを実感した。

 差し伸べられた腕を払われるみたいな感触があるから分かる。


 総合的に肉体が強いというのは、精神も肉体の一部。

 当然精神面も強い。

 頭の良さは関係ない。

 無敵はこの精神面を攻撃して鎮めるのだが敵対している時には強くてとてもムリ。

 相手を肉体的に弱らせてから無敵を使わないとまともに効かない。

 本当に使いにくいな!


 戦闘後に敵意をうやむやにして交渉しやすくなる程度か。

 回復と組み合わせれば強くなるとはいえ戦闘中にやれるか!!

 あと回復+無敵が通じたとしても、戦意無くされて身体の治った相手はだいたい逃げる。

 怖いからだろうね。


 いまんところ成功例はイタ吉たぬ吉、ニンゲンに大烏か。

 レベルあげのためにこの10倍くらい使ってるんだけれど、仲良くは中々なれないね。

 やはり落ち着いたあとの交渉次第といったところか。

 イタ吉たぬ吉と交渉した覚えはないけどね。


 まあ今後もおりをみて使いレベルを上げていこう。

 そうすれば、もうちょい何とかなるかもしれないし……

 そういえば大烏も名前つけた方が良いよなぁ。

 鴉月(あづき)なんてどうだろうか。

 あずきみたいにな感じで。




 天然洞穴付近へとやってきた。

 そこはもちろん私とアヅキのバトったところ。

 見るからに荒れ放題で……


「大変ですぜ魔獣使いの旦那と魔獣の姐さん、何かがここいらで暴れたみたいで!

 ……って何!? ミルガラスがなぜここに!?」

『おっとニンゲンですか、どうぞお任せをすぐに片付けますから』

「落ち着け! 味方だ!!」

『味方だから下がって!』


 互いの言葉がわかってないせいでいきなり切り合いになりそうな所を仲介する。

 こいつら目を離すの危険だ!

 とりあえず私を通して自己紹介。


「お、俺様はガラハ! 姐さんに何かしたらぶっ殺すからな!」

『ガラハって名前で、ここでお世話になっているからよろしくお願いします、だって』

『それでは。私はミルガラス、主の一番の臣下にして忠実なる僕。主に馴れ馴れしくするものは殺すぞ、と』

「ミルガラスって種族で、まだ仲間になったばかりなので頑張ります、だって」


 デカすぎる敵意を超変換して私が橋渡し。

 さあ、仲良しの握手。

 互いに差し出された腕の向きが同じ。

 それで無理矢理握手して握力自慢大会行われている。

 ミニオークちゃん折れるぞーやめとけー。

 というか違うからな!

 仲良くしろや!!


 これはかなり苦労をしそうだ……

TIPS

女嫌い:

 アヅキは女の子が嫌いだ。

 主は別だしおとななら違うが、どの種族の女の子も生理的に難しいらしい。

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