表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
525/2401

五百十五生目 夜天

 こんばんは。私です!

 今夜は少しテンションが高い。

 なぜなら……


「ついにあの巨大肉の熟成が完成したんだって、妹!」

「うん。インカ兄さんも楽しみにしていたやつ!」


 兄のインカが修行を休止してまでアノニマルースにいる理由。

 それは今日が熟成肉解放の日だからだ。

 長いあいだ保存してあった大きな牛型魔物の肉がちょうど熟れてきてついに開封となる。


 今ふたりで祭りの会場へ足を運んでいる。

 普段の屋外食事所ではなく夜天宴会場という場所だ。

 郊外へと向かい切り立った岩山へ続く道を歩いていく。


 この先は道が限られている。

 だから自然に魔物やニンゲンたちが集まりワイワイと賑わってきている。

 はぐれないように注意しつつ人混みならぬ魔物混みに合流していく。


「あ、おねえちゃーん! お兄ちゃん!」

「弟かー!」

「ハックー!」


 少し遠くからハックが跳んでいるのが見えた。

 少しずつ魔物混みをさけて接近。

 向こうからも近づいてきたからすぐに合流できた。


「すごい魔物たち! 今こんなにアノニマルースにいたんだ!」

「うん。私も毎日流入してくる数は把握しきれないから、入国管理職は大変みたい」

「ドラーグ君がつくったんだっけか? いつも目まぐるしく働いているけれど」


 兵士たちや一部の者はともかくもはや全員の把握は私にも不可能。

 入国管理者たちががんばってくれているおかげで大きな混乱もなく万を超える魔物たちが募っている。

 元々群れている者や噂の伝達が早い者それにツワモノが集う場所を聴いた者。


 魔物たちもニンゲンに負けず劣らず噂が早い。

 開かれたこのアノニマルースに意外なほどに集まってきていた。

 それがこの魔物の群れ列だ。


「押さないでくださーい」

「順に歩いて移動してくださいー!」

「止まらないでくださいー!」


 案内役の魔物たちが声を張り上げている。

 ざわざわワイワイしている中でも良く声が通る。

 大した問題もなく崖の上まで歩む。


 そして。


 お祭りの会場である夜天宴会場についた。

 ここは空が星々に覆われるほどにキレイな場所だ。

 アノニマルース内の灯りからも離れ高い位置をとっているこの崖上は夜の明かりが良く通っている。


「ついたー!」

「おー、もう賑わってる!」


 開けた場所についたので3匹で駆けて列から外れる。

 すでに会場は魔物たちがたくさんいて各々席取りをしていた。

 昼行性組は明るめの装飾がある場所に集まっているが私達は夜行性組で大丈夫だろう。


 明かりが極限まで消しつつも屋台の炎が上がっている。

 多数あり料理のラインナップも同様に多い。

 お金を出して好きなものを買えばいいらしい。


 もちろんほとんどの料理は熟成肉が用いられている。


「結構みんな並んでいるな……よし。それぞれ並んで3つずつ買おうぜ! 俺は串焼き!」

「いいね! じゃあ僕はやきそば……? で!」

「私はこっちのカツで」


 列に並びしばらく待つと私の番に。

 トカゲのような風姿を持ちつつもガッチリとした肉体で二足歩行をしている魔物ふたりが店番している。

 リザードマンって言われるやつだね。


「あい、次の方!」

「3つで」

「おうよ! 3つ!」


 威勢のいい掛け声とともに受付の背後にいたもうひとりに指示が飛ぶ。

 植物油もしっかり仕入れる事が出来るようになっているため揚げ物もやれるわけだ。

 並べられた肉たちがすぐに衣付けされてトングで油の中に放り込まれる。


 火の前に立っているリザードマンも目の前のも頭巾はしているが何か着ているわけではない。

 火への耐性が高いということなのだろう。

 湿地帯に住むイメージがあるから火はもう少し苦手なタイプなのかと思っていた。


 そうこうしているうちにさっきのよりも前に揚げていた肉たちがトングで掴みだされる。

 調理用というよりも普段から戦いに使いそうな大ぶりの着色されたナイフでカツが刻まれる。

 まだ赤い肉だが牛だし雑菌管理もしてあるものなので問題ない。


 まあそれ以前に生で食べる種族がほとんどだが……

 とはいえしっかり火は通っているだろう。

 肉汁が溢れ出るのがその証拠。


 量産した土器皿に盛り付けて3つ私の前に並べられた。

 いわゆる練習品も多いためデキがばらついているのが特徴。

 だが肉はとても美味しそう。


「はいおまち! お代も確かに! ……で、もしかしてアンタが噂の?」

「え? 噂とは?」

アノニマルース(ここ)を立ち上げた青き英傑って、あんたなんだろう!」

「ううーん……まあ、間違ってはないような……誇張が大きいけれど……」

「ヒュー! 気配がそうは見えないところがイカスねえ! おい、あの英傑様だってよ!」

「あんだって!? おい英傑様! また寄ってくれよ! 暇な時にな!」

「う、うん、じゃあね!」


 思わず逃げるようにあとにした。

 恥ずかしいわ! 英傑とか!

 知らない面々からそう言われているのは知っていたけれど!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ