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五百十四生目 切除

 私の胸に輝く石はロゼスオーラ……というものらしい。

 いわゆるニンゲンの血のように赤くそれでいて透き通っている。

 角度によっては赤が薄まり淡いカラーを見せる。


「ロゼスオーラ、この記録では……かなりの品物らしいですよ。使う杖はたちまち使用者を輝かしい魔法の道へと向かわせもするけれど、みずぼらしい杖なら耐えきれず破壊し、またあるものは魔法の闇に溺れこの赤色の足しにされたとか」

「赤色の足し……?」

「あー、血を出させられたってことだね……それもたくさん」

「あ! あー」


 カンタの読み上げでバローくんが複雑な言い回しにとまどう。

 私が直したらバローくんは空を仰いだが。


「まあ言い回しはともかく、ようは強いってことだろう? そういうのはたいていハクをつけるためにわざとそう書くと、ニンゲンから聞いたことあるぞ」

「「うんうん」」

「ああ、まあそういうことはありそう」


 サイクロプスリーダーの言葉に周囲のサイクロプスたちが各々肯定。

 私も続いた。


「じゃあ私としてはこれを使うのも悪くはないかな……とは思うんだけれど。これ、取ろうとして取れるものじゃあないんだよね……」

「あ、そうなんですか?」

「ほら、首飾りに見えるかもしれないけれど繋がっているから。だから……」


 私は服をはだけ首飾りのように見える部分をヒラヒラと手で動かす。

 いわゆる外耳のようにひらひらと動くがちゃんと繋がっているのだ。

 周囲で見ていたみんなが「おおーっ」と感嘆符を上げた。


「金の装飾に縁取られた宝石の首輪……に見えるが」

「実際は、トゲの先に生えているみたいな感じなんですね」

「え、これもしかしてひっぱると痛むんです?」

「力強く引っ張らなくちゃ大丈夫……」


 バローくんは私の首飾りに手をそわせる。

 あんまり他人に触られたこと無いからぞわぞわする……!

 神経はまあ外耳程度には通っているから。


「さーって、やるしかないし、切り落とそう」

「え! 大丈夫なんですか!?」

「大丈夫じゃない、けれど魔法で癒やすのと同時にやる」


 聖魔法"トリートメント"を同時に構えてカットの準備。

 とはいえここは剣ゼロエネミーで魔法で空中に浮かして操り切るぐらいしか現実的ではないか。

 そっと首元にゼロエネミーを添わせる。


「う……こ、怖い! 今更だけど!」

「やりましょうか」

「いや、それはもっと怖いから……」


 さあ……落ち着け自分。

 いつもどおり。血なんかを採取して土加護の武具や土器を作るときと同じだ。

 ちょっと位置が危ういが一気にやらないと私が痛い目になるから!


 さあ……

 いくぞ!

 いくぞ!!


「はぁ〜〜」

「お、おい?」

「そこまで深刻な顔をするんなら、やめたほうが……」


 なんか外から見たら顔がアレらしいが気合がいるから仕方ない!

 ふーっ。

 ふーっ!


 刃が沿う。

 ゼロエネミーが問いかけているように見える。

 本当に大丈夫? と。


 土の加護と本格的な魔法強化があるから交信できるからね。

 意識のなんとなくのやりとり程度だけれども。

 首飾りと石はひとつの薄い布のように見える部分でつながっている。


 だからここをきれいに切れば……大丈夫だ。


「なあおい、やっぱやめたほうが――」

「らあっ!」

「いった!?」「切れた!」

「ん〜〜『クァアアアオオン!!』と、"トリートメント"!」


 光神術"サウンドウェーブ"ではなく思いっきり口から悲鳴をあげてしまった。

 即"トリートメント"を発動すると石が再生しはじめる。

 一瞬身体がバラバラになるかと思った!


 痛みのあまり地面で転がっている。

 剣ゼロエネミーが鋭い一発できれいに切ってくれたからまだ良かった。

 い。いってええぇ……!


「う、ぐおおお」

「大丈夫ですか!?」

「な、なおしてるううう!」


 それになぜか"進化"が解けかけた。

 ふう、ふぅー! 石が治った!

 ってあだだだだだ!!


 また地面を転がる。

 手で治療部を必死に抑える。

 治療痛いったっ!!


 急ぎすぎたせいですんごい治療痛がする!

 "トリートメント"は優秀だけれどこれがあるから辛い!

 結局まともに立てたのはそれから数分後だった。






「普段あんなに戦っているローズさんがそれほどまでに痛がるだなんて……!」

「今は平時だしね……あ、それと2つ目は無理」

「だな」「でしょうね」


 やっと落ち着いて会話が出来るようになった。

 さすがにあの痛みは二度目は勘弁願いたい。

 それでも成果はあった。


 私は地面に落ちていたロゼスオーラを拾い上げる。

 これが目的の品だ。

 私のトゲに似た材質で縁取られている。


「これ、改めて杖の制作出来るかお願いします」

「はい、承りました」

「これだけじゃあなくて、量産出来るものもつくらなきゃ、なんですよね?」

「ああ、アノニマルース内で募った方がいいかもしれん。生え変わりの角、牙、変わった毛、それらはこれだけ種族が集まっている中ではたくさんあるだろう」


 こうしてロゼスオーラを使用した杖制作と魔法加速器のための材質募集を始めることにした……

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