五百八生目 孤独
蒼竜を創造主と崇めるドラゴンのホワイトアイ。
彼が何かもう少しこちらに借りを返したいということでイタ吉が提案したこと。
それは友達にならないかということだった。何言ってるんだお前は。
イタ吉が2足立ちして前足をブンブン振ってアピールしながらとんでもないこと言い出した!?
大丈夫かな……? おるるおそるホワイトアイの顔を見上げる。
「ふむ……朋友になれと申す、か」
ごくり。
思わず生つばを飲み込む。
こんなところで話がこじれたくない!
「まあ、普段なら調子に乗りすぎだ、という所だが……良いだろう」
「え!? 良いんですか!?」
「其方は、それで良かったか?」
「あ、はい大丈夫です」
よ。良かったー。
何もひどいことが起こらなくて。
ひええー。危なかったぁ。
「うむ。朋友と決まれば改めて挨拶をしよう。儂は、ホワイトアイ。白き頂から世界を見る者よ」
「よろしくお願いします。こちらは……」
ホワイトアイにひととおりみんなの挨拶を返した。
よかったー。"無敵""ヒーリング"重ね合わせの効果はあったということだろう。
ドラゴンは基本誰に対しても敵対心むき出すからね。
逆に言えばドラゴン種は基本的に寂しいという感情はないっぽい。
寂しいは群れる生き物が群れていない状態の危険さを知らせるための感情だ。
ソロが基本の生物……例えばドラゴンはこれがない。
だから友達という発想はなかっただろうしそれを臆することなく提案したイタ吉にもビビった。
イタ吉からしたらウチのドラーグと似たような感覚で接しただけだろうが。
「うむ。確かにその魂、記憶した。其方たちは、いつでも来ることを歓迎しよう」
「う、うん。さすがにそんなには頻繁には来れないとは思うけれど……この山登らなきゃ行けないから」
「ああ、もしや儂の結界が邪魔か。それならば」
今さらっと言ったけれどこのワープ系妨害はこのホワイトアイの能力なのか!
先程からちらほら聞くに天候もホワイトアイの影響があるようだし。
物事の規模が大きすぎる。だから喰われまくってしまっていたのだが。
ホワイトアイが床に左前足の爪先を射し込むと不思議な音と共に紋様が現れる。
これは……結構独特だけれど魔法記述だ。
いわゆるクセ字がヒドイ感覚に近いが達筆側。
一瞬で記述が終わり魔法が生成される。
小さな青いサークルのようなものが現れてすぐに消える。
「これで良い」
「今のはなんなんだ?」
「儂の魂に呼応する召喚門だ。其方らの登ってきた場所を含め、蒼竜殿の身体を降りた付近に、いくつか対応門をバラまいておく。まだ、使えぬがな」
ダカシの質問にホワイトアイが回答する。
ホワイトアイは今度はみんなの頭上で右腕翼爪を立てる。
ようはホワイトアイの顔の前で指を広げるカタチだ。
「魂に呼応……? よくわからんな、魔法ってやつは相変わらず」
「私も話を聞く限りだと、ホワイトアイさんの魂にしかその門は反応しないように聞こえましたが……」
「そう急くな。これを、受け取るが良い」
ジャグナーは戦闘以外の方面はからっきしだ。
ホワイトアイの爪先からいくつもの青白い炎のようなものが生まれる。
極小サイズの魔力を感じる何かだ。
「それはなんなんだ?」
「儂の魂……というと、語弊があるな。儂という存在を抽出した、その欠片たちだ」
どういう違いなのかさっぱりわからないがホワイトアイが精神生命体なことに関係があるのだろうか。
青白い炎はぬるりと不思議な感触をしていそうだ。
こっちの匹数分ある炎たちが私達の眼の前まで降りてくる。
「これを、適合させる。少し違和感があるかも知れぬが、すぐ馴染む。料簡せよ」
「え? 我慢しろって? ……わっ」
青い炎たちはゆらりゆらりとした後にゆっくりと私の顔に近づいてくる。
思わずしかめっ面をして薄目になった。
ポワンと音を立て私の視界裏……つまり頭の中へ入った。、
「「うわあっ!?」」
一斉に驚きの声が上がる。
そりゃあいきなり色々無視して中に入ってくるとは!
さらにこのにゅるりとした異物感。
なんと言えば良いのか……!
気味が悪いやら気持ちいいやら。
全身が水面の波紋のように感覚がひびく。
周りを見るとみんなの目に青白い光が映って見えた。
"鷹目"で見てはいないが私もあんなちょっと神秘的なことになってるのかな。
そうして10秒するかしないかの間に光は消えすっかりと何もなくなった。
「今、こうして儂から、祝福を授けた。初めてではあるが、上手く行ったようだな。どうだ、『視える』ようになっただろう」
うん……? 言われるて気づいたけれど……こうかな?
私は体内に宿った不思議な新感覚に手を伸ばす。
すると……空に青い半透明なドラゴンたちが『視えた』。