四百九十九生目 熱鎌
召喚獣スターべの力により私達だけ食事禁止を喰らってしまった。
倒さなければ私達は飢え死ぬ!
「ま、それは俺もやる気はねえ。俺がその前に喰ってやるからな!」
「あの喰う力……味方を癒やすうえ、喰った相手の能力を、転写する。出来る限り欠片でも、喰われるな」
シャキシャキと話すスターべと対称的にゆっくりしっかりと噛みしめるように響かせるホワイトアイ。
喰うと召喚者の傷を癒やし能力のコピーかあ……
"観察"した感じだと2重にゲージがある分の生命力と行動力どちらも満タンに近かった。
あの尾を喰うことで回復したのだろう。
行動力も治るとしたらやっかい。
ホワイトアイがボロボロだったのはたびたび食われたからだ。
「命令をこなすだけの狗めが。汚らしい口で儂をなんども喰いおって」
「虎だよ!? まあかなり喰ったのは否定しないけれど、口はキレイだよ、歯は命なんだからよ」
「たた食べられる部分が多い相手は、得意……!」
犬ってのはこう命令を受けるだけの存在みたいな面のことだとは思うんだけど。
まあそこは良いや。
それよりも状況が動く!
先に動いたのは全身に震えるほどのエネルギーを巡らせたホワイトアイ。
大きく羽ばたくと旋風を巻き起こしながら全員が高く飛び上がった。
「「うわっぷ!?」」
「っ! 待ちやがれ!」
風に煽られつつもすぐに立て直したのはスターべとエポニードだった。
スターべの腕や胸あたりが光で輝くと大きな翼が生まれる。
腕に翼が取り付けられたかのような見た目だ。
だがそんな見た目に反して羽ばたくと一瞬で空へ飛ぶ。
エポニードはそのすぐ後に何もしていないが空を飛び……あ。
違う。なんか紐みたいなの持っていた。
なんという強引な解決法……
召喚者と召喚獣が離れるとパワーが落ちるし命令もしづらくなるから対策は必須だけどね。
とにかく私もやらなければ。
「みんなは事前に言っていた対ドラゴン対策をアイツらに! 私は何とかアイツらを地上に落としてみる!」
「おうよ!」「ああ」「待っているぜ!」
私は空魔法"ストレージ"を唱え亜空間からドサドサと物をその場でばらまいていく。
コレらは後のお楽しみ。
まずは迎撃! 空へ!
「いっくよ〜!」
アインスの掛け声と共に一気に上昇!
良かった! 私が肉体を動かしていたのだったら今のは吐いていたかもしれない!
情け容赦ない急上昇でわずかな時間で上空の戦場に追いつく。
「うらっ!」
「ハァッ!」
すでに戦いは始まっていて空中を高速移動しながら爪と拳をかち合わせている。
竜の爪はスターべにカスるだけでも大きく傷が入り光が散る。
ただそれだけだ。スターべが痛みをこらえ反撃するだけで倒せるわけじゃない。
対してパンチは見ているだけで衝撃波が起こるほどとは言えホワイトアイの腕や身体を打ち付けても大した打撃にはならない。
氷のような結晶が振動して外に衝撃を逃しているようだしあまり有効打ではないようだ。
「ちいっ」
「へへ変化、フレイムカット」
エポニードが指示を出すと響きの良い音と共にスターべの手が変化する。
伸びたかと思うとカマとなり赤く赤熱していた。
「ぐっ、また熱鎌か」
「させない!」
ホワイトアイが渋い反応を見せたからどうやらあれに尾先をぶった斬られたらしい。
アインスが率先して反応して私の身体前方から大量にトゲを生み出しては"針操作"で発射!
火魔法"フレイムエンチャント"効果で燃える針をスターべを当てに行く。
「ちっ! うおっ!?」
とっさに鎌で塞ぎガリガリと防ぐが鎌では下半身が防げないのと勢いに負けガードをめくられる。
全身に刺さり削りさらには切れて勢いで後方に吹き飛ぶ。
そのまま落下し直線状圏内から逃れ再び浮上。
なかなか動きが慣れているね。
針も結局はすぐ抜けるし火傷させても召喚獣相手だと対して意味はない。
ただ火魔力の効果で威力底上げで吹き飛ばせたので良し。
「鈍い!」
ホワイトアイが追撃に白銀光の風をはばたいて何重も放つ。
スターべは何とか避けようと屈んだり跳ぶように飛んだり必死に避けるものの立ち上がりが遅かった。
最後の方に間に合わず食らう!
背後に回転しつつ吹き飛ばされるが同時に何か爆発が起きた。
ジュウウと熱が無理矢理冷やされる音も。
いやあの風は実際に極寒の風刃でもあったのだろう。
「ふむ。凍てつかぬ、か」
「あっぶねぇ。身動き封じられるところだったか」
「……う。へへ変化、スピードフライト」
大技が決まったが熱により相殺されてしまってホワイトアイはやや不機嫌そうだ。
スターべの肉体が再び変化し足がグニャリと伸びる。
変化した先はコウモリのような翼だ。
やや見た目は奇妙だが……油断はできないだろう。