四百九十四生目 蛇行
9合目。
何日もかけて登ったこの山についに終わりの兆しが見えた。
空気が凍てつき空に舞う世界。
「うわぁ……きれい」
「そんで、地獄でもあるよなあ」
そう。ある意味火山の中と同じだ。
あちらはすぐに服が燃えだしてこちらは服がどんどん凍てつく。
まともに生物が棲む環境ではない。
イタ吉たちをつれて9合目にきている。
ここは最高に高い山頂の隣の山頂だからてっぺんでもあるんだけれどね。
だが反対側に降りるためには隣の山頂付近まで移動し10合目付近まで登ってからぐるりと山を迂回する必要がある。
幸い魔物たちの襲撃すらもほとんどない極端な地。
酸素とか気圧とかは何とかしているから時間をかけて見えない崖やねずみ返し状の地形等を避けて歩くだけ。
普通なら厄介な雪の下の崖も私の地魔法"ジオラークサーベイ"と光魔法"ディテクション"で正確な脳内マッピングが出来ている。
ニンゲンたちのために目印の種を撒きつつまるで蛇行しているかのようにゆらゆらと移動し続けた。
ちなみにイタ吉が何度か落ちかけダカシが裂け目を新しく作ったりしているためジャグナー含め『なんでこんな移動しているのか』だなんていまさら聞いてはこなかった。
「うおっ、眩しいな!」
ダカシが驚いてボーイソプラノしているがダカシの高さだと余計に感じるのだろう。
山全体が照り返す白の光を。
しかも空気フィルターが少なめ。
ダカシは目を細め顔をしかめて必死に対抗している様子。
白の中の黒だからさすがに目立つなあ。
余計に光が集まっている気がする。
気がするだけだけど。
もくもくとあるき続ける事2時間ほど。
まあ歩くと良いつつ安全なところはそこそこ走っていたけれど。
ふつうのニンゲンの登山ではやってはいけないことだね!
とりあえず蛇行しつつ移動できたので山頂と山頂の間へ降り隣の山頂の下側へ移動できた。
ここの山頂は本当に高い。
何せ全体の高さ10分の2がこっからあるものなあ。
「ここで休むよー」
「まだいけるぞー?」
「ダメ、ここから竜の巣に被るし急斜面が多いから疲れていないうちに休んでおきたい」
「なるほど、とりあえずまた掘らなくちゃな」
イタ吉の強行案は却下しダカシの洞穴作成案は採用。
いつもの通り私が壁に穴を開けダカシたちは周囲警戒。
とはいえもはやここまで来ると生物が少ないが……
それにしてもやはりあの地図から生態系だけがズレていた。
上の方は情報が少ないのは仕方ないがそれでも少ない分かっている情報すらもズレたりしていた。
ただ危険地帯は合っていたのがまた奇妙。
それだけではなくドラゴンの方も問題。
噂程度だし人里には降りてこないため推測も多いがドラゴンとこの国は宗教的にも切れないから調査はされている。
ここに住まう青きドラゴンは一説では蒼竜の近種だとされている。
その肉体はもはや神の遣いとも言われるほどに現世離れしている。
おそらく何も摂食する必要がないらしい。
霞を食べる仙人とも言える。
つまり精神生命体とも言える存在。
肉体もあるし生きているのに輪廻を断絶した永命の者。
そのひと息でこの山は永久の冬山と化したと大げさな記述も。
この大山脈を見守っていてニンゲンが欠かさず蒼竜に祈りを捧げているか見守っているとかなんとか。
やや宗教に寄った記述もあったが……とにかく書かれていることは恐ろしく強いということだ。
ただまあ出会いたくない相手ではある。
それに会いに行かなくちゃいけないんだけれどね……!
人里を襲ったことがないという点にだけ祈って行くしかない!
掘って中で休んでいる間に最終チェックだ。
自分を"観察"。
ケンハリマ ローズLv.46→47 ポイント2
"無敵8" "近接攻撃11" "光神術4→5" "観察8" "峰打ち11" "魔感9" "鷹目7→8" "止眼5→6"
"頑張る6" "変装7→8" "ズタ裂き4" "回避運動10→11" "三魔8→9" "無尽蔵の活力9" "空蝉の術6" "四耐性6→7"
"以心伝心9" "怨魂喰い5" "言語学者9" "率いる者8→9 ""見透す眼6→7""地魔法3→4""魂の守り4→5""救急魔術師8→9""指導者7→8"
"戦士の心5→6""影の瞼5→6""森の魔女5→6""猛毒の花3→5""空の曲芸者3""電気魔法2→3"
"戦場の獣3→4"
レベルはさすがに上がった。
ラヴだの暗殺者だの登山だのやってやっと1つかい! という気持ちはある。
本当に上がりにくい。
魔法も使いこなしているだけあって全体的に上昇。
釣られて"森の魔女"も増している。
"森の魔女"はつまりは魔法を手先のように理解し扱えるようになっていくスキルだから重要だ。