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四百九十三生目 氷蝠

「た、大変だった……」

「お、おつかれ」


 迎えに行ったら氷の魔物たちにしこたま凍てつかされながらもなんとか撃退したイタ吉たちがいた。

 ゆっくりと移動し服を乾かすため脱いで中に引き込み木炭を火魔法で燃やす。

 暖が採れてやっとみんなひと息つけていた。


 光魔法"ヒーリング"や聖魔法"トリートメント"で傷を癒やしつつゆったりとした時を過ごす。


「わりとヤバかった気がする。なんか途中熱くなってきていたし。こんなに寒いのに」

「なにそれこわい」

「なんでここにドラゴンがいるんだ。ドラゴンの巣からは外れていたじゃないか」

「ジャイアント級の雪男もな。あの地図はまだまだ未完成ってとこだな」


 イタ吉の臨死体験はともかくジャグナーとイタ吉の話は気になるところがある。

 あの地図の書き込みはニンゲンが調べられる範囲ではあるがかなり詳細に書かれていた。

 ここだなんて空白地帯とは言えその周囲は危険部位がきっちり書かれていて未調査ではなく調査して安全とされていた。


「もしくは、魔物たちの勢力図が変わっている……?」

「あー、そこらへん聞いてくりゃあ良かったぜ。追い出すのに精一杯だったからな」

「うん、ご苦労様」


 イタ吉たちをねぎらいつつ私は立ち上がる。

 3匹はもう少しあったまっていてもらうとして。


「私は結界の設置とか補強とかやることやってくる」

「ああ、ゆっくりやっていれば後で追いつく」

「あー、こういう時身体がでかいと全体に火が当たらないな……ちょっと動くぞ」


 ダカシは最小サイズの今でも立てば1階建て越えであるのに4足だからなあ。

 広く掘った洞窟が少し狭く感じるほど。

 慎重に足場を選んで周りを踏み潰さないように回転していた。


「あー、ココ、ココ」


 あれでも元は10代のニンゲン少年。

 少しでも肉体をどうにかする方法を見つけられれば良いのだけれど。

 





 登山再開!

 天候が乱れやすいのは仕方ないがずっと吹雪いているわけじゃない。

 朝の今の時間帯は太陽からエネルギーが降り注ぐ。


 ただ寒さは変わらず。

 風もあるので上から雪が飛ばされ落ちてくるのも変わらず。

 だからまたフル装備で登山だ。


 ここからは転移魔法が案の定使えなくなっていた。

 空魔法"ストレージ"は大丈夫だから物の運搬は大丈夫。

 道もかなり急で歩いても地の底に落ちないだろう範囲はかなり減ってきた。


 縦1列になって歩む。たまに斜面や雪の中それに少しだけ開けた場所で魔物に襲われつつも撃退。

 特に曇って雪が降ってくると近くの洞穴から氷コウモリが飛んでくる。

 自身の身体が氷で出来ていて近づく珍しい相手をエサにするために突進してくるのだ。


 触れるだけで身体が氷に覆われるスキルのようなものがあるし突進時は身体を折りたたんで鋭いツララのようになる。

 しかも数が1回10匹以上と多い。

 襲われるとダカシがしょっちゅう凍てついてしまう。


 身体が氷に覆われるだけなので暴れればすぐに壊せるものの数が多いから連続で来て困る。

 ちなみにコウモリの肉体が9割の構成が氷でも生物なので殴っても割れてしまうことはなかった。

 とても大変だったが制圧しながら進行。


 順調……とは言いにくいがこれども順調に進む。

 小さい洞窟で氷コウモリたちから間借りして休息したり手頃な場所がなかったらまた掘った。


 7合目はそんな感じで突破し8合目になると一気に道が広くなる。

 まあ順番にくねくね登らないと行けない歩は変わらないが。

 7合目も1日8合目も1日たっぷりかけて登る。


 高山病を避けるためにも単に厳しいって意味でも疲労をさけとにかくゆっくり時間をかけて登る。

 もう降りるまでアノニマルースに帰れないのだから。

 空が近い。


 魔法で酸素供給や気圧調整……本来は水圧調整のものをいじって使っているから良いものの普通だったらここまではこれないな。

 ここに棲む魔物たちもエラ呼吸ではないが独自の呼吸器官を持っている者がほとんどのようだ。

 じゃないと生き延びれないから。


 見下ろせばどこまでも広がる雲の白。

 見上げればどこまでも続く氷山の白。

 空気が薄いせいで音がやたら静寂で声をかけられてもどこか遠いところから聴こえるようだ。


「――って聞いているか?」

「ああ、うん、イタ吉。相変わらずこの感じなれないよね」

「本当だぜまったく。さすがにここまで変わるとはな」

「吹雪ですらもはやあまり問題じゃあなくなってきたな」


 イタ吉とジャグナーがどこまでも続く道にため息つきながら歩く。

 ダカシは背後で周囲警戒しつつも半ば死んだ目になっている。

 気持ちはわかる。この白色に染まった景色は毒だ。


 どこまで続くのか。そしてどう降りるのか。

 地図はあるし目指す場所に向かって歩いているはずなのにまるで同じところをループしているかのよう。

 山の上はやはり改めて危険だと理解できる。


「後少しが遠いなあ……」

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