四百九十ニ生目 穿穴
「みんなー! 無事ー!?」
「ああー! なんとかなー!!」
「じき死ぬがな!!」
「シャレにならねえ!」
イタ吉とジャグナーそしてダカシの無事をチェック。
やっと休息地についた。
今までも複数作ってきたがおそらくここからが本格的に危ない。
6から7合目あたりから噂では特殊な磁場干渉があるらしい。
転移魔法が使えなくなるのだ。
今までは帰って休んでいたがそれも不可能となる。
そしてこんな魔法なきゃ凍死待ったなしで吹雪いているところは平地みたいなところがまずほとんどない。
あってもそんなところテント張れない。
というわけで洞窟のクリエイトが急務となる。
既存の洞窟はダメなのだ。
当然魔物たちがたくさんいるからね。
縄張り争いになるし既存の生物を追い出すのはなるべく避けたい。
というわけで洞窟つくりだ。
もちろんそんな無茶は依頼されていない。
普通に既存の洞穴確保のみだ。
けれどそれは私が嫌なので……空魔法"ストレージ"!
亜空間から私作製シャベル!
空魔法"フィクゼイション"で空間ごと掴んで念力のように操り空中に。
「掘るぞー!」
「俺たちは本当に待っているだけでいいのか?」
「すぐ後に出番あるから待機で!」
イタ吉たちはシャベルはそううまく使えるわけじゃないからね。
それとこのシャベルは私の血液を込めてあるが既存のものとは違って職人のカンタたちの力もかなり借りている。
より能力を増して素材もこだわったシロモノ。
「そうれ!」
ショベルを操りブン! とひと突き!
光まとわせ振るえばザクりと雪山の雪壁に刺さる。
だが雪は問題ではない!
「おお!」
シャベルが跳ねれば雪壁が一気に壊れる!
まさに爆散。だがシャベルは止まらない。
連続で勢いよく雪を吹き飛ばしていく。
「うんっ!?」
カチンと硬い感触。
ここから氷か! 火魔法"フレイムエンチャント"!
濃縮された火の魔力がスコップへと宿る!
青い炎を纏った1撃をもう一度差し込む!
感触が変わった!
熱で膨張した氷と雪が一気に爆ぜ蒸発する!
「ううっ!」
「「わあっ!?」」
おっとっと……危なかった。
みんな雪と水まみれである。
急いでブルブル身体を震わせ落とす。
何せ極寒の気温だからね。
吹雪の影響で凍りついてしまう。
まあそれ以前にベタつくのは……
それとちょっと痛かった。
死なないほどだから良いというわけじゃあないし痛いものは痛い。
けれどついに現れたぞ。壁!
スコップに行動力を注ぐ事で土の魔力を開放!
このギミックは剣ゼロエネミーと似たようなものだ。
黄色の光が炎と共にまとい付きなんだか派手なことになっている。
こいつを思いっきり! さしこみすくう!
うん。軽い!
壁が土加護のシャベルを受け入れているおかげで硬質な山脈の壁すらもゼリーにスプーンをさしこむかのようだ。
魔法に力を込めシャベルを回転させながらすくい上げるよう引き抜く!
通常では不可能に近い動きすらも楽々行えて土がごっそり抜けた。
だがこれではまだ穴があいただけだ。
なので! 連続で! 止まらずに! 掘り進む!
土が物凄い排出されるが山は広いので問題ない。
ただ……
「あ、来た! 派手な音に釣られて魔物たちが接近しているから、戦わなくても良いから近づけないで!」
「おう! 出番だな!」
「なーるほど、このためか!」
「この霞と山の地形じゃあどこに潜んでいるかわかりにくいな……」
ジャグナーが前足同士をかちあわせ靴のスパイク部分を鳴らす。
イタ吉も納得し駆けだした。
ダカシは打って変わって冷静に身構える。
よし。私は掘る作業に集中しよう。
そーれそれそれ!
面白いほどに土が吹き飛んでいく。
背後から戦闘音が聞こえだしたが大丈夫だろう。
多少竜の咆哮っぽいのが聴こえていたりもするが問題あったら帰ってくる。
気配としてもそこまでの強さは感じない。
ひたすら無心で掘り続け……
良い汗かいて労働に体内の魔力がいい感じに巡る。
血液が全身に良く行き渡り……
「出来た! このぐらい深ければ!」
ひとり掘った穴の中でそう叫んだ。
声がエコーしてよく響く。
私が手で持っているわけじゃあないので上下に広く掘り込んである。
軍がきて良いように奥にはただっ広い空洞。
吹雪を避けるように入り口で2回は折り返し焚き火の排煙関係で入り口の方は高く奥は下に広がっている。
入り口が塞がらないように屋根や雪よけも後で作ろう。
木炭は持ってきているので亜空間から取り出して置いて……と。
あとは全体の補強もしなきゃなー。
このままでは自然に変形したり潰れかねないし。
よし。外でも見てくるかな。