四百九十一生目 目印
白い狼魔物がかすみの向こうから狙ってきている。
まあでも強くはない。
待機させてあった剣ゼロエネミーは念力のように魔法で掴んでいる。
そうれ!
剣を空に飛ばすとかなり驚いた表情を見せる。
なにせ隠れているはずの自分たちにまっすぐ向かってくるんだからね。
そのまま対策が間に合わず剣が振るわれる。
"正気落とし"!
光を放ちながらしろ狼たちに襲いかかった!
頭! 横首! 逃げる背中!
さっくりと気を失わせた。
「ん。今狙ってきていた魔物たち倒したから行こう」
「ああ、またか」
もはやこなれたものでありダカシもそっけない返事。
混戦になったのは最初くらいでその後はたいていこちらが先手とって勝つ。
相手もそこそこやるのだがさすがにこっちの戦力が高すぎる。
いつもの通り"無敵""ヒーリング"組み合わせを与える。
気絶から揺り起こして話を聞き。
辺りの地図情報を更新してまた登ると。
これをルーチンワークでこなしていた。
さて……さっき白狼たちから聞いた情報だとそろそろなだらかな場所があるかな。
地図情報とも合っている。
「んん? 吹雪が弱まってきて……おっ! ついたか!」
イタ吉が歓喜の声と共にかける。
やっと休憩ポイントについたらしい。
思わず私もほっとため息。
「よーし、エリア確保するぞ。イタ吉は奥。俺はここらへんを。ダカシは左、ローズは右だ」
「はいよ」「おう!」「うん」
ジャグナーの指示に従い手早く場を確保していく。
まず魔物たちがいないかを警戒。
その次に支給されていたものを地面に深く埋め込む。
見た目は全体に奇妙な紋様のある杭だ。
まあ魔法記述なんだけれど。
内容は魔物避けの結界だ。
イタ吉たちは識別に組み込まれた魔物避け結界無効の効果で平気だし私は九尾博士の丸薬を飲めば無効化できる。
4箇所で有効化されれば結界が球状に張られる。
それにしても本当に雪がたくさんある!
……よし。やっと地面の下まで掘れた。
ここに打ち込む。
ハンマーはないし今の4足状態だと持てないのでジャンプして……ストンプ!
うん。確かに地面に食い込んだ。
これを強く固めて埋め直す。
興味をもった魔物が掘り返さないようにね。
しばらくすると結界が発動した。
光が伸びて膜のように全体を覆っていったが見えなくなる。
これで完成。
結界の外側に対して魔物へ嫌忌させ拒絶し最後には身体を弾き返してしまう。
ニンゲンたちが住み分けのために色々と考えた結果の代物だ。
まあ私達魔物なんだけど。
この後は下がクレバスだったりしないかを調査。
これが支給品使ってもしばらくかかりそうで。
骨が折れる……まあ登山よりは楽。
その後数時間ちまちまと調査やら実際にキャンプ建設してみるやらとゆったりとした時間をすごした……
数日かけて攻略中の大山脈!
ガンガン登るぞ5合目! 多分!
多分なのはもう道も看板もなんもないから!
変な破壊後とかどっかの誰かが戦闘して氷の山が出来ている後とかかなり状況がひどい!
そして!
「ぐおおおお!! これ大丈夫なのか!?」
「ま、魔法で防いでいるからー!!」
「えー? 何ー!?」
至近距離にいる互いの声が聞こえないほどの吹雪。
私が"鷹目"で全員確認しながら動いているから何とかなっているだけでもし目視を怠ってはぐれたら詰む。
しっかり支給された目印種落としていかないと。
これは落としたその場所に根を張るものでそのままだと何も目立たない。
しかし別の特殊な魔法を使うことで光って見える。
このような雪山ではかなりの命綱として運用されているそうだ。
今までニンゲンの道具に頼った探索はしてこなかったからなかなか斬新。
残りはまだたくさんある。
しっかり撒かないと。
ここらへんはもはや雲の中。
豪雪は私の出身地もそうだしあまり気にはしないが風が強いな!
風により雪が流されるため上からどんどん降ってくるのにあまり高くは積もっていない。
いやそれでも1メートルはあるけれど。
私埋まるんですが。
ダカシが先頭でスコップ役やってくれるから大丈夫どけれどね。
こういうとき巨体は頼もしい。
身体の大きさでモロにくらうはずの吹雪も魔法で天気無効化しているから声が聞こえなくて先が見えないぐらいの弊害しかない。
ガッツガツと進む。
「……ほんと、寒さに体力が奪われないのはかなりマシだな」
「魔法であったまっているからなー。それでもそろそろヤベーんじゃねーかって思うが……」
6合目。
雲を突き抜けた。
もちろんさらに上にも雲があるから吹雪いている。
なによりつらいのがもう酸素薄い!
酸素の薄さは手持ちの魔法では……と思ったが水中に潜るさいの酸素確保の魔法があった。
これは脳内で探っても見つからないから一瞬焦ったがふつうに記憶どおり正しく詠唱すればよかった。