四百八十九生目 地獄
私はまたこの赤の世界にやってきていた。
さすがに何十と見せられると明晰夢になる。
夢の中で深くため息をついた。
そこはまさに地獄。
あらゆる生命体が死に絶えて地のマグマにより燃え尽きたそこ。
その場所唯一私だけが立っている。
まあ夢なんでこのマグマの上にのっても平気なんだけれど。
そのまま歩いていけば何かあるかというと何もない。
改めてこの繰り返し見る夢に関して思いを巡らせていればいずれ目が覚める。
それがいつものパターンだ。
そう。もしかしたら魔王が復活したらこんな世界がやってくるのかもしれない。
そう考えると絶対食い止めねば。
それにしてももしみなが死に絶えたりしたらどこへ逝くのだろうか。
そんなことも考えてしまう。
何せ私は転生者だ。
どこかへやはり生まれ変わるのだろうか……?
こんな大量のキャパを宇宙は受け入れるだろうか。
まあ大量の微生物換算すればなんとか……?
ただそれはともかく。
死んだあとのことというのは私にとってかなり他人事じゃないからなあ。
何せ私は……「自分はみなの死後を」……うん?
なんだ今のは。
うう。頭が痛む。
コレはそろそろ目が覚めるな。
またこの悪夢を見ませんように。
おはよーございます。
まったくあの悪夢はロクでもない。
またあの夢と魔王の関係性について考えていたら目が覚めたか。
さてここは……私の部屋か。
どうやら眠ってしまった後運び込まれたらしい。
ご苦労様だ。
空魔法"ストレージ"で亜空間から宝玉を取り出す。
召喚魔法の媒体で召喚獣ラヴを喚び出す。
ただし……今私には使えない。
暗証ロック魔法記述がかかっているせいではない。
それは解いた。
問題は『召喚拒否』される点だ。
どうやら召喚獣たちはそこそこ自分の意思で許諾か拒否できるらしくて私達相手の喚び出しはキャンセルされてしまうのがわかった。
うーむ手ひどくやられたのが怒っているらしい。
ダカシの中の悪魔の件もあるからね。
今日も試してみたが召喚魔法は実らない。
仕方なくまた亜空間へと戻した。
私達はその後も帝国を大きく移動し続けた。
ダンダラとわかれた後は比較的スムーズに移動が出来た。
道なき道を行きたまには人里も訪れる。
しかし今や識別もありだんだんとコツも分かってきて揉めることは格段に減った。
そもそも召喚獣による攻撃仕掛けられないからね。
元々敵対していなければこんなものだ。
ウォンレイ王の土地から外れ隣の場所へ。
野山にある迷宮にも出入りしてみたりも。
もちろん目立つように動いているのでたまにはカエリラスの刺客がくる。
ただ主に不意打ちによる暗殺狙いだからボコボコにして返り討ちにできる。
向こうも無理せず変わったアイテムで逃げる。
煙が発生して一瞬で消え去るというものだ。
おそらくどこかにワープするたぐいのものなのだろう。
忍術みたいだ。あれがあるから無茶な攻めができるんだろうなあ……
私も安全のために欲しいや。
そしてそれらを繰り返し大きな事件がなかったこれまで。
だが次はあまりに巨大な山脈越えをしなくてはならなくなった……
「この山は越えなくてはならないのか?」
近くの村の中で付近の地図を広げつつ話し合っていた。
ダカシが指摘する通り普通ならこの山脈はこえなくても良い。
ただ偶然が重なってここに来ざるおえなかった。
「うん。まず第一に私達の経路。なるべく他とかぶらないようにと動いていたから、他のできるだけ山脈のすきまを通れるようになる関所は、他のニンゲンたちが行っている。かといってここを越えないわけにもいかない。この先に帝都へのルートがあるからね」
さらにウォンレイ王によると軍事的にも重要らしい。
屈強な個人ならともかく軍がここをこえた記録はない。
まともに考えて消耗が大きすぎるからだ。
普通の迷宮なんかよりはるかに危険な大山脈。
雲の上に山が突き抜けているのは基本で永久凍土であり竜の巣がありなおかつニンゲンたちが祀る蒼竜の神殿もある。
そのため観光地でもあった。
もちろん大半のニンゲンはふもとから大自然を眺めるだけ。
登山家。冒険者。熱心な信徒だけが無謀な山登りにチャレンジする。
とは言っても通常は蒼竜神殿があるもっとも低い山頂狙い。
ちょうど雲の上にあたるらしく眺めは壮観らしい。
だがここは道が細い上宗教上や一般人配慮のためにも軍事力の通行禁止。
昔ここの虎の尾を踏んだ権力者が蒼竜教を敵に回しあらゆる手を使って潰された過去があり絶対ダメ。
「だからってこんなに高い位置に行く必要あんのか? 寒いんだろう?」
「うーん私も現地にいかなきゃわからないんだけどね……道の太さと竜の巣が、ね」
ここを通れれば不意打ち行動としては最適。
だからこそ行きたいが障害が多い。