四百八十七生目 鎧服
「こうやって見ると、ずいぶんダメージの位置がバラついているな」
「あと、ある程度汎用の弱点としてパーツが別れてしまったものもある。接続帯が切れているのは絵でも書いてある」
職人のニンゲンであるカンタとサイクロプスたちと共に新防具の考案をしている。
絵はひどく壊れた鎧たちの絵だ。
ダメージ箇所がはっきり分かるようにかかれているためそれを参考にするわけだ。
4足型は兜に胸当てそれと足具に背当てに尾当て。
2足型はニンゲンとほぼ同じで尾があるものは尾当ても割り当てられる。
宙に浮いていたりする無足型なんかもいるが包み込むようになっている。
鳥型はとにかく軽量化が必須で最低限の鎧と戦闘用服とも言える頑強な服装になっている。
元はニンゲン用のアレンジしている。
「さて、データを集めると言った天才的発想はひらめいたものの、実際どうすればいいかはまったく考えていなかったな」
「そこは考えておこうよ。まあ集めてくれただけでも凄い助かるけれどね!」
サイクロプスリーダーにツッコミを入れつつ資料に向き直る。
言われている通りダメージ箇所はかなり異なる。
小型の方が上方を大型の方が下方を攻められやすいのはなんとなくわかっていたが実際図にしてもらうと実感できる。
「ふーむ。なんなんでしょうかね? 真っ白な箇所は鎧で受けづらいってことなのか?」
「なるほどな。受けようにもそこに攻撃が行きにくかったり角度合わせがしづらいのか」
カンタの指摘にサイクロプスたちがうなずく。
そうだなぁ、あとは……
「逆にすごくダメージを受けている箇所はふんだんに補強の見直ししたほうが良いかも。角度で受け流させるのも考えたりね」
「たしかに生き残れたのならそこの補強は必須だな。それと傷の向きか……そこまでは考えていなかったな。あとで調べるか」
何十分かわいのわいのと新鎧の案を出し合っていたら普段の私のバトルについて話が移り変わっていた。
「そういえば普段の戦闘時、ローズさんは鎧を着なくて平気なの?」
「うん? ああ、一応着てはいるんだよ」
服か……この4足のままでは出せないからと。
"変装"! 最近は自身に近いものならかなり高度に変化できる。
これでホリハリーの姿に変化。2足型だね。
「おお、相変わらず目の前でサクッと姿を変えられると驚く……ええ!?」
カンタが驚愕の表情を浮かべたのは無理はないだろう。
今私の服を見える化したのだ。
最初は私もびっくりした。
普段は毛皮に覆われているだけだが実際は服が一体化している。
私の意思で可視化可能で軽く光が現れた後にサッと服が出るわけだ。
服が私に馴染んだ証拠らしい。
なので私が回復することで服の被害も治っていく。
まさに生きた服だ。
「これを着ててね。最初はオーダーメイドのタダの服だったんだけれど、さっき見ての通り、ただの服じゃあなくなった。それとおそらく頑丈さもね」
「おお……どれどれ」
早速ということで私が着ている服に対してお試し攻撃をすることに。
近くにあったナイフをゆっくり服にそわせる。
本来ただの布ならばスッと薄皮がやぶれていくところだが。
「いっ!? ナイフが!?」
まるで無理矢理硬い岩に刃を押し付けたかのようにナイフの刃が潰れた。
おおう。改めて見てみるとすごいな。
「なあ、今の見たか?」
「え、ええ。斬りつけた瞬間に確かに服を着た主と服が呼応していた……」
「え? どういうことですか?」
サイクロプスリーダーが指摘しカンタも同意したが私にはなんのことやら。
そんな私にふたりはくってかかる。
「この頑丈さを手に入れたのはいつからですか!?」
「何か使ったのか!? 付呪は何を!?」
「ええっと……?」
おもわずたじろぐ。
付呪ってアレかな。武具なんかに魔法効果をつけるやつかな。
質問攻めにあい何とか回答すること数分。
今度はカンタとサイクロプスたちがうなずきあう。
「……やはりそうか。土の加護のついた血液が染み込み、体毛が自然に抜けたのを服が意思を持って取り込み食らう事でより強度を高めている」
「さらに、持ち主とのリンクを強め応じ瞬時に頑強化。普段は着心地に合わせ戦闘時は動きをサポートし被害時に柔軟な硬質化で受け流す……しかも俺たちが作る鎧よりも頑丈に」
「「はあぁ……」」
みな大きなため息をついた。
まさに感動といった様子。
カンタはともかくサイクロプスたちのサイズのせいで圧迫感がすごい。
「ええっと、何か役にたったかなぁ?」
「ええ、俺は持ってきた文献を漁って加護についてもっと掘ってみます!」
「俺は早速加護前提の武具を作ってみるか。ただそのためにローズから血を貰いすぎるのはな……」
さっさすがに毎回致死量の血を流すわけには……