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四百八十生目 隣殺

 ダカシは悪魔と脳内会話しているのか少し間を置いてからまた話す。


「……悪魔も詳しくはわからないらしいからあまり話してくれなかったが、行使していた力と実際にあの場にいた数が釣り合わないとか……まあよくわからないが、そんな感じらしい」

「うーん……もしかして、まだどこかに伏兵がいた?」

「ん? いたとしてももう終わったんだ、関係ないんだろ?」


 イタ吉が口を挟んだ通りだ。

 すでにラヴの宝玉は手の内にあり誘惑を受けていた者は解除された。

 例えいたとしても何も起こらない。


「そうだよな。まあどこかでいきなり正気に戻って困惑しているかもしれないけれど、それはそれで勝手に帰るだろう」


 安心のため息をつきつつダカシがそうしめた。

 なんだろう今盛大にフラグが生成サれた気がする。

 大丈夫。後は識別に使う特別な鉱石を改めてわけてもらって持っていくだけだ……






「ザッケンナコラー!!」

「ヤるかゴラー!!」

「えぇ……」


 私が思わずひるんでしまった正体。

 それは町の外で隣町の民同士が武装しすごい剣幕で怒鳴り合っていたからだ。

 間に静止役の衛兵がいないと致命的なことになっているだろう。


 互いの主張を噛み合わせるとこうだ。

 双方の町から人気(ひとけ)のない場所からゾロゾロと武装した逆側の町の住人出現。

 パニックが起こり逃走したり鎮圧したり。


 突如現れた住人たち自体は『なぜかわからないが気づいたらそこにいたので逃げた』とのこと。

 帰ってこれず今だ詰め所にいる者もいるしけが人も出た。

 当然双方は腹の虫が収まらない。


 それで各自武器を取り詰め寄り開戦。

 戦いのプロではないから取っ組み合いのケンカとも言えるが怒りで思考が煮えくり返っている時の暴行だ。

 プロではないからこえてはいけない一線をやすやす踏み越え怒りのまま殺害が起こりかねなかった。


 慌てて衛兵たちが増援され大量投入。

 現在ニンゲンの壁として双方を抑え込んでいる段階だった。


 なお『赤茶』側はエルフ系のニンゲンが『青茶』側にドワーフ系のニンゲンが多いというのにこう並んで初めて気づいた。

 いやまあトランスする前は同じニンゲンなのだが……

 前世の創作を思い出すなあ。


「今日こそ消し飛ばしてやる!!」

「目障りなんだよー!!」

「うわぁ……」


 今ドン引きの声を漏らしたのはダンダラだった。

 ダンダラも誘惑がとけたため合流し治療を行って私達と共に騒動現場に来ていた。

 ダンダラは合流時に謝罪と感謝を述べた後、


「一生の不覚だったぜ……催眠術系能力を喰らったとは言え、まさか宝石剣(コイツ)以外に求愛しちまうとはなあ。ああ、赦してくれマイスウィートハニー!!」


と叫んでいた。

 ややオーバーリアクションで宝石剣を愛おしく抱くようにして磨いていた。


 それはともかく今は目の前の事態。

 話を聞いたら簡単に推測はできた。

 誘惑を受けなんらかの指令……例えば騒動を起こすなんかをするために潜んでいた。


 だが実行される前に私達がラヴを召喚から還してしまったため誘惑が解ける。

 結果的に騒動が発生してしまったと。

 迷惑すぎる。


 そして彼らにその事を伝えたところでこの騒動は絶対収まらない。

 誘惑の影響があったとは言え潜んだのは事実でその後誘惑が解けて暴れたのも最悪。

 事実伝えるだけ火に油注ぐのは目に見えている……


「ッスゾッラァアァ!!」

「ッケンナオラァァ!!」

「あれ……おさめられる……?」

「いやあ、ちょっとアレは……」


 ダンダラの話術に期待したものの速攻で否定された。

 そりゃあ話術も話を聞いてもらう前提がいるよね…… 

 ダンダラは目を閉じ手を当てる。


「開けろゴラー!!」

「許すなぁー!!」

「……そうだ、町長たちで緊急会談さえできれば」


 ダンダラが指の間から目を見開き何か思いついたらしい。

 相変わらず暴言が飛び交っているダンダラはその場で歩み出す。


「……いけそう?」

「状況に持ち込めれば、な。今度こそ役立って見せるぜ。その前に町長2人と閉じた場で話せる場が必要になる。場所と招待がいるな……」


 それだけだったらなんとかなるかな。

 ……うん。そうだね。よし。

 そうと決まれば。


「なんとかなると思う。本番は頼んだよ!」

「オウ!」





 夜。

 またバローくんに手伝って貰って『バローくんがワープ魔法を使っているという小芝居』をうってもらい偽装しながら事を進めた。

 バローくんはニンゲンの子どもでフクロウ人を思わせる雰囲気の容姿の心強い味方だ。


 まず町長ふたり別々に話を通して収拾(ケリ)をつけるために話し合おうと提案。

 戦意がギラつくふたりは案外簡単にのってくれた。

 何事もなく話が進んでくれれば良いのだけれど。


 私としては祈るしかない。

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