四百七十四生目 欠片
「ありがとう! 足止めだけで良いからお願いできる?」
「任せ給え。さすがに死にかけのものに遅れはとらん。適当に投げて積んでおく。貴殿の配慮を考慮し殺さずにおこう」
適当に投げて積んだら圧死しないかな……
その不安はあるもののリビングアーマーにその場は任せ最下層にある横穴へと進んで行った。
崩壊した洞穴を奥へ進んでいく。
いやまあ崩壊したの大方私の"クエイク"のせいなんだけれど。
道なき道を奥へ進む間何体もの伏兵が既に倒れているのをみつけた。
……あの魔法改めて思うけど惨劇みたいなことが起きるな。
おかげでスイスイ進めたのだけは良かった。
大きく開けた場所までたどり着き空を見上げる。
そこは大きく空が見えていた。
天から降り注ぐ光を浴びてすくすくと育っている大量の草花。
人工的に植えられたものだ。
その花たちは生育場所はかなり限られるそうだが成分は非常に有用。
魔力を吸い込んで非常に有用な薬効成分へと変化させる。
1つから前世では考えられないほどにその薬効成分は得られる。
それは抽出と精製されれば医療用麻薬ともなり……
残念ながら使われる実情は混ぜ物だらけで量を確保し裏市場に回すものとなる。
この世界での阿片材料のひとつだった。
「クサイ場所にクサイ奴、合っているな」
「キレイな場所にキレイな私、でしょう?」
イタ吉が鼻をこすりながら1点を見る。
その先に居て答えたのはラヴだった。
相変わらずドウの巨体な肩に座っている。
「この大量の花々、みんなもしかして材料に?」
「そう、だ。ワタシは管理を任されてい、る。先程の戦いラヴを通じ見させてもらっ、た」
ドウが話すなりラヴが指を鳴らす。
空中に多数の光景が映る。
これは先程戦った相手側の視点か。
私達が逃げたり攻めたりした一部始終が流れているらしい。
ふたたび指を鳴らすと消えた。
「おお……」「何だ今の」
「誘惑した相手を通じて、全て見えるのね」
「ご明察。そちらの情報は戦わずして全て手に入ったも同然ですのよ。さらに言えばそもそも私の力でやっぱりあなたたちは何も出来ず、負けるのでしょうけれど。
あれほど苦労して集めた私の下僕たちを蹴散らしてくれたのは許さないけれど、それでもあなたたちが手に入ればそれ以上に役立ってくれそうだもの」
「はたして、それはどうかな」
ラヴが語るとおり彼女の能力はあまりに凶悪。
だがダカシが前に出るとラヴは露骨に嫌な顔をした。
実は事前にどうやって倒すかの話し合いで『あの能力封じは任せてほしい』とダカシに言われていた。
「あ、あなた! 懸念材料は、そうあなたよ! さっきのアレ……! ありえない! なんでさっき、私の攻撃を防げたの!?」
「アンタもなんとなくわかっているんじゃないか? 俺の中にいる悪魔とお前がなぜか『同質』だってことに!」
「くっ……! まさか……」
ラヴが腕を引いて構えると同時にダカシが低く唸る。
両方同時に動いた!
「はぁっ!」「###!」
ラヴが指を鳴らしダカシが悪魔言語を吠える事で霧のような光がそれぞれ発生。
ラヴは白をダカシは黒を発生させ互いの間で衝突。
前回とは違ってすぐに両者の光は弾けて消えた。
「あうっ!? この感覚、やはり私の欠片! なぜそこにいるかはわからないけれど、返しなさい! 私のよ!」
「誰がそう言われて返すか! むしろ全てこっちに渡してもらおうか!」
ラヴがドウから降りてツカツカとモデルのように歩く。
蹄にも見えるハイヒール履いているのね。
こちらもダカシがさらに前に出る。
「やりましょう。別室で、ね! こっちは任せたましたよ」
「待て!」
ふたりとも跳んで洞窟の道向こうへ行き姿が見えなくなる。
こちらは代わりに柱の影からダンダラが姿を見せた。
「麗しの君のために……ってね!」
「ワタシもやる、か」
ダンダラが宝石剣ビーストソウルを抜く。
ピンク色の2重刀身は否が応でも心が引きつけられる。
それはイタ吉やジャグナーも同じらしい。
つまり全員が"獣"の対象か。
確認しておこう。
威力3倍に威圧と恐怖を与えるオーラ。
さらに受けるダメージが半減し状態異常無効化。
この場合もしかして敵対していたら状態異常を治すということもできないのかな……?
だとしたら厳しい。私含めみんな"影の瞼"を発動させた。
対するドウは立てかけてあった大きな金棒を手に取る。
絵に描いたような大量にトゲのついた代物。
3mも有り筋骨隆々なドウの身体とあまり長さがかわらないそれを軽々と持ち上げた。
「早くドウを倒してしまおう、そうしたら召喚獣のラヴを消せるはずだ!」
「わかった! でもダンダラってやつのアレもヤバイよな?」
「倒すべき相手は見定めつつも、双方に気を配れよ!」
「さてそううまくいくか、な」
戦いの火蓋が切って落とされた。