四百七十ニ生目 必殺
「我は常に想像してきた! 我を打ち倒すほどの強者を! 想像上の化け物は何者も越えがたい。だが良いぞ、貴殿はその片鱗が見える!」
「くっうう!」
化け物とか好き放題言ってくれちゃって!
剣ゼロエネミーが土魔力を解放していても受けきっている理由は彼が魔力を斬れるからにほかならない。
何とか剣は拮抗して何回も斬り結んでいるが剣モード以外にするのは危険。
そのスキを突かれる以上に痛いのが剣モード以外は節々を魔力の帯で繋いでいるということ。
しかも巨大化する分どうしても剣モードより1つの部位ごとに割り振れる力が弱くなりひと振りの元バラバラにされる可能性が高い。
なので剣モード以外には無理。
そしてスキを突いた一撃でどうにもなるものでもない。
彼は生ける重鎧。リビングアーマー。
鎧の下は急所ではなく空だしあの鎧部分を破壊するしか生命力は削れない。
もっと深く何度も切り開く必要がある。
ドライ、剣操作頼める?
(ああ、コレは攻め込まないと読み切られてこっちが斬られるしな!)
代わりに身体の操作を完全にこちらに回してもらって。
アインス、魔法を!
(ほじょと、こうげき! やっちゃうよ〜)
剣ゼロエネミーがドライ操作になり今まで構えていたような動きから変化する。
機敏にリビングアーマーも反応して構え直す。
「む! 気配が変わった!」
剣ゼロエネミーがそもそも持っていないという利点を最大限活かすために私の前に置くのをやめる。
素早く空を飛び回りあちらこちらから飛び交い切り結ぶ!
「ほう! 想定よりも自由度が高いな! だが貴殿、本体のスキはどうする?」
高速であらゆる角度から突っ込んでくる剣に対して大剣を当ててはいくが今回はまともにぶつかり合うつもりがない。
ひらひらと避けつつなんとかスレスレ鎧に傷を走らせる。
うーんやはりドライでも一気に斬り裂いていくことは出来ないか。
そして言うとおりこちらの守りは手薄に。
大剣を振り回すだけと見せかけて180度斬り上げしてそのまま地面を叩く。
するとこちらに向かって光で可視化できるほどの衝撃波が飛来してきた!
大丈夫ただの直進技!
今度は私自身もアグレッシブに動いて柵を駆け上がり踏み越えて跳ぶ!
大丈夫ホリハリーの姿でも肉体はそこそこ動く!
「はあっ!」
そのまま同じぐらいの位置にあった別の足場の柵まで跳んだ。
なんとかスレスレ掴みよじ登る。
普段の姿ならひとっ飛び楽々なのだが仕方ない。
「なるほど! そこまで動いてもこちらの精度がブレぬとは集中力や観察力も並外れている!」
「それはどーも!」
そもそも意識わけて別のこと担当しているんだからそりゃあね。
"鷹目"で常にどう攻めるかの視界は確保している。
アインスがここで補助魔法や攻撃魔法を放っていく。
精霊含めて3つまで同時詠唱可能だから集中さえできていればこの通り。
火魔法"エクスプロージF"でリビングアーマーの元で大爆発が起こり同時に凍てつくツララが飛来し何本も巨大なものが突き刺さる。
今の氷魔法は?
(かりた! みんなから!)
"率いる者"で誰かから氷魔法を借りたのか……私だとなかなかそこまで手が回らないからなあ。
膨大にいる相手を選びそこから膨大な相手のスキルを選んでさらに魔法なら膨大な選択肢からほしいのを探る必要がある。
戦闘中にやることじゃない。
アインスはやれているようだが。
「鎧斬一刀流……!」
煙幕の中から声と共に光が走る。
くっ! まだ無事か!
膨れる殺意と共にその剣技が放たれた!
重厚音と共に煙が裂かれ代わりに赤くきらめく光。
避け、れない!
速い以上にどこまでも赤が広がっている!
「"象潰し"!!」
「うわあっ!!」
壁ごとぶち抜いて洞窟の一部を破壊しながら奥の壁まで吹き飛ばされる。
何とか"防御"が間に合った……!
象どころかあたり1面潰すほどの力だ……!
何とか立ち上がるもののフラフラする。
頭を振って現状確認。
"観察"した結果生命力が半分以上減少していた。
"防御"成功していなかったら危なかったな……
アインスが素早く"ヒーリング"を発動させる。
全身が傷だらけで血に濡れているがまだ大丈夫。
「ほう! 剣がまだ動くということは、まだ生きているか! さすがよ!」
なんとかリビングアーマーの元へ戻ったらあちらも無傷とはいかなかったらしい。
ゼロエネミーに胴部分を斬られた跡があるし焦げ後と1本だけ腕に刺さったつらら。
防ぐことより攻める事を選んだ結果か。
"鷹目"で私が吹き飛ばされている間にもドライは斬り込めていたからこその傷。
ただまだ元気そうだが。
……よし、今最後の補助魔法が発動。補助魔法が一通りかかったからもう決める!