四百六十九生目 追走
巨体のドウと召喚獣で人山羊のラヴ。
"宣言"というものをされたら圧倒的な力で無理矢理誘惑をさせられかけている。
「え!? っ! ###!!」
ダカシが何か叫ぶと急に楽になった。
その代わり黒い光が相手の白い光と衝突している。
すごい。相殺している。
「え!? 今のは! なにこれ……いえ、まだ!」
山羊特有の瞳をキッと強め指を鳴らす。
拮抗していた力が崩れ白い光が膨張。
そのまま黒い光をうち破りどちらも消えた。
「ぐうっ!」
「っはあ、はあ、ちょっと整理したいことが出来まして、引かせてもらいます」
「強敵、だ。ゆっくり休ん、で」
誘惑のオーラに押されていたがやっとまともに動けるようになった。
と思ったらまさかの飛び降り。
まっすぐ最下層まで落ちてそのまま走っていった。
ええとここビル10何階分……
私もまねできるかなと思ったけれど唐突に幼い頃の落下記憶がフラッシュバックした。
足がすくむしやはり常識的に止めておいた方が良いだろう。
「ダンダラ、大丈夫? ……あれ?」
隣にいたはずのダンダラに声をかけたがいない。
唯一私から"影の瞼"を借りられないから目を伏せておいてもらったのだが……
……いた! 細かく跳んで少しずつ下へ向かっている!
「ダンダラ!? 先走っちゃあ危険――」
「あああ!! 愛しの君よ今行きます!!」
「あ、あいつもしかして!」
イタ吉が指摘したとおりだろう。
誘惑にかかっているな!?
まずいピースマインドが間に合わない!
ああっ! どっかの横穴に入られてしまった。
見ないでって言ったのに!
イヤもしかして最初一瞬だけ見た時点で判定があったのか?
その後つよく光がまかれたうえ"影の瞼"みたいなスキルで防げなかったから……
まずい早く追いかけ――
「ん!? 来る!」
「おわっ!」「わあっ!?」
ダカシが叫んでジャグナーと私が飛来物をなんとかかわす。
矢だ。どこから!?
見るとあちこちからニンゲンだの魔物だのが顔を見せた!
「麗しの君のために!!」「ウオオオォン!!」
「「麗しの君のために!!」」「「@#%$#@!!」」
多重に重なる叫びと吠え。
それと同時に矢や弾丸それに魔法の火の玉や電撃が飛んできた!
「「わあぁ!?」」
すぐに柵の裏側へ身を寄せる。
ただダカシは隠れる場所がない。
というより道もダカシが通るにはギリギリでもはや蜂の巣寸前。
「くそっ! 突っ込んで――」
「いくらなんでも無理がある! 一旦逃げて!」
「――ちい! すぐ戻る!」
ダカシが跳んで山の上へ批難。
姿が見えなくなれば当然今度はこっちに集中。
全員遠隔行動するわけではないがさすがに100を越える数で攻撃されては!
「うわあ! 壊れる! 柵が持たない!」
「えーい、今なら! 行って!」
剣ゼロエネミーに空魔法"フィクゼイション"で念力のように掴む。
そのまま柵の外側に出して大盾モードに。
柵が完全破壊される前になんとか防げた!
特に土魔法と電撃魔法はぐんぐん吸収していてくれる。
今の内にたてなおさねば。
「俺行ってくる!」
「ああ! 俺は――いや、来たか!」
イタ吉が消えるように素早く走る。
叫びながら武器を携えあちこちからやってくる敵をジャグナーが見つけ身構えた。
「少しだけ耐えて! 少しは何とか出来る!」
「ああ! そうりゃあ!」
ジャグナーがまとめて3体かかってきた相手に向かって拳を突き出す。
それと同時に光が赤く輝き拳の方角に拡散。
ドン! という音とともに3体とも吹き飛ばした。
「「うわあああ!!」」
「おーい! こっち!」
「行こうジャグナー!」
「ああ!」
迫りくる相手はできるだけ相手しない。
ひとつ下側の洞穴内をイタ吉が確保したらしいから急いで向かう。
だが剣や牙をかかげ突っ込んでくる相手は正面からも背後からも下からも耐えない。
銃撃は大盾で防いでいるが逆に言えば今私は素手。
しかたない!
慣れていないけれど格闘を……
ドライ頼んだ!
("私"かよ! 魔法の援護は頼んだぞ!)
今1つは詠唱で使っているが精霊たちが2つ枠がある。
ひとつは補助魔法で光魔法"シールド"あたりで防御力高めるため唱えつつもうひとつを火力に。
正面切って道を開けるために……火魔法"Fリビエイション"!
それを唱えきる数秒。
正面に来た4足の獣が飛びついて来たところでかがむ。
そのまま腕を振り上げ開いた下顎を叩いた!
「ギャン!」「通して!」
次に剣を縦に振ってきた相手の腕を絡め取り後ろへ流すように投げる。
同時に槍で突いてきた相手は身体をひねってかすらせてピッと切れる。
そのまま腰をひねり回して鎧ごと横腹を蹴って弾き飛ばす。
「おわっ!?」「ぐっ!」