表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
478/2401

四百六十八生目 筋肉

「いやあ、ずいぶん詳しく教えてもらえっちゃたねえ」

「へへへ、そうでしょ、だからその、見逃しては……」


 結局そのあともかなり詳しいところまで吐いてもらった。

 どうやら相手はこの先にいるらしい。

 見たら特定可能だろう。


「んじゃま、面倒だしサクッとやっておく?」

「ぎえっ!?」

「やらないし、衛兵に突き出すよ……」


 ダンダラのこうした面は今後も要注意かなあ。






 山賊たちを一度町の衛兵へ届けた後。

 今度こそ砦の奥へと足を踏み入れた。

 少しの間頼りない山道が1本続き……そして。


「ついた。ここに敵さんがいるわけね」

「ひっろいな!」

「すごいな。山を飲み込む勢いだ」


 ダンダラの宣言と共にイタ吉が飛び込みダカシが自身の大きさを踏まえてなお驚く。

 ニンゲンたちが長い月日をかけて掘り進めた大穴を山の上から見下ろす形になった。


 螺旋状に徐々に下へと掘られている。

 さらにいくつもの山内へと入り込む穴も掘られていた。

 ブランチマイニングで効率よく採ろうとしているのだろうか。


 落下しないようにちゃんと柵もあるしトロッコ路線も引かれているようだ。

 多分列車能力はないけれどかなり使いやすくしてあるのはよく分かる。

 ただし意図的に道が岩やら鉄柵やらで塞がれてなければだが。


「……なあ、気づいたか」

「うん……」

「これは……」

「登ってきている!」


 中からはいくつかの強い気配はあったもののその中で飛び抜けて強い気配が登って来ていた。

 私とダンダラは剣を抜きダカシたちは身構えてみんなで近くに合った階段を駆け下りた。


 1つ目の大きめの足場に降り立ったところで同じ高さの別足場の方。

 そこの壁にあいている横穴から気配の主が姿を見せた。

 ――それはまさに絵に描いたような巨体だった。


 3mはある本当にニンゲンかも怪しいサイズの巨体は穴をかがんで通ってきた。

 まだニンゲンには肌寒いだろうに大きくはだけた衣装を荒々しく纏いその代わり頭はフルフェイスの重そうな鎧。

 赤肌な全身の筋肉がこれでもかというほど盛り上がって『力!』をアピールしていた。


[パワーオーガLv.30 比較:かなり強い]

[パワーオーガ 個体名:ドウ オーガ系統で何度かトランスした姿。性別問わず筋骨隆々となりあらゆる事を力で解決出来る。鍛え抜かれた筋肉は皮膚と呼応し振られる剣を弾く]


 清々しいほどに力推し!

 だが気になるのはもう1人。

 ほとんど気配が感じられなかったのが恐ろしいが巨体のドウの肩に乗って来たのを見て初めてその存在感に気づく。


 圧倒される。この気配はあのプライド以上!

 "影の瞼"が発動する。異様な見た目の女性……こいつは!


「みんな私から"影の瞼"を!」

「「あ、ああ」」「え? 何?」

「あ、ダンダラは見ないで!」

「いや困る!」


 なんとか慌てつつみんな私から"率いる者"で"影の瞼"を借りて発動できた。

 ダンダラはわけがわからないがとりあえず目をそらしたらしい。

 ダンダラも山賊たちからその特徴を知っているからね。


 ひと目見ただけで個人の感性を踏みにじり『美しい』と褒め称えてしまいそうになる魅惑の姿。

 純白でこの世界のものとは思えない素材感でぴっちりと全身を包み込んでいる。

 浮き出たシルエットを強調し黒髪と山羊の角がなびく。


 繊細そうな眼鏡の奥に山羊と同じ瞳孔が地面と水平な瞳が獲物を狙う。

 そして……身体が白い(エフェクト)で構成されていた。

 やはりプライドと同じ!


[ラヴ 召喚されし太古からの神の1柱。月の清潔と汚損を司り現界時は山羊の姿を取るとされる] 


 "観察"したら予想どおりレベルや生命力などの情報が出なかった。

 召喚者はラヴが乗っている巨体のドウか。


「フフフ……」「……来た、な」

「クソッ! いきなり当たりか! 見れないのは困る……」


 ラヴが妖艶に笑いドウがつぶやく。

 ダンダラの愚痴ももっともだが見るとやられるのは強烈すぎる。

 その見ていたらやられるというのを含め彼女の力は恐ろしい。


 個性とか感性の違いなんてものを無理矢理ねじ伏せて心が美しさに服従しようとするのだから。

 "影の瞼"がすぐに発動して遮ったからいいもののかなりその手の能力が強い。


「まだ"宣言"もしていないから、そう固くならなくても死なないのに。改めて、"宣言"。『私を見たものは、美しさの奴隷となる』の。さあ、美しさに(おそ)れ、服従なさい!」


 あれ。この言い回し……

 うわ! 白い光が霧のようにラヴから放たれた!

 なんて力だ!


「「うわあっ!?」」


 パリンとイタ吉たちの"影の瞼"が破られる音がする。

 やはり借り物じゃあ能力が多少落ちてしまうか!

 私はスレスレで耐えているがこのままじゃあ……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ