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四百六十四生目 話術

「隣町に識別輪の職人さんがいるんですか?」

「ああ」


 魔物使いギルド員のウノによると隣町に腕の良い職人がいるらしい。

 彼ならば作ってもらえるらしいが……あまりオススメはしないそうだ。


「ン? なんであまりおすすめしない選択なんだ?」

「実は……この町と隣町はちょっと仲が悪くてな。個人では仲良い相手はいてもそこから来たってバレるだけでかなり嫌悪される。流通も滞る勢いでなぁ」

「な〜るほど、町長とかが言ってた言葉そういう……」


 ダンダラがウノにたずねて返ってきた言葉に顎をなでる。

 何か思い当たるフシはあったらしい。


「だからオレなんかは顔が割れているから今まではこっそり品を回してもらっていたんだ。入れてもらえねーからな」

「そ、そこまで……」

「まあ長年の積み重ねがあるらしくてね。特に年寄りたちはヤベェ。その職人にだけはなんとか顔が利くからな、バレないよう紹介状を渡してくれ」


 ううむ。先行きが不安だ……





 魔物使いギルドに戻りウノが一筆したためてくれた。

 これを指定された職人『だけ』に事情を知らせて渡せば良いらしい。

 そこまでか。


「そうそう、ローズさんのイタ吉くんとジャグナーくんはうちで預かって在庫の識別をつけておくよ。ダカシくんは……職人に直接見てもらう必要があるから連れて行ってやってくれ」

「そ、そうなのね」

「暇だし俺もついていくぜ。面白そうだしな」


 別にこなくても良いのだがダンダラも来るらしい。

 そしてダカシを連れて隣町に識別なしでいく必要があるのか……

 陽動としての役割は良いがさっき聞いた話のあとに面倒ごとになりそうな要素増やしたくないのが正直なところ。


 ただまあやるしかないか。







 山を1つ横切る途中にその町はあった。

 地盤が固くさらに地震はめったにおきないせいか一見山崩れの被害にあいそうな地形をそのまま活かしてその町は存在した。

 さっきまでいた町とあまり規模が変わらずに市と集落の間で簡易な壁。


 そして先ほどの町を『赤茶』という全体イメージとするとこちらは『青茶』の色。

 門構えなんかも記憶と照らし合わせるとカラー以外まるで鏡合わせ。

 仲がいいようにも見えるが実際は……競争して同じ要素をどちらも足していった影響なのかな。


 そしてやはりダカシのような巨大な魔物が来たということで大騒ぎ。するかと思いきや……


「おーい! ウォンレイ王の使者だ! 俺たちだけでも入れてくれ!」

「お、ウォンレイ王の!?」

「待て、アレは確かに本物の王家の紋章……!」


 ダンダラがなんやかんやと素早く手を回して銅の指輪を見せて鎮める。

 そのあとも慣れているのかあれやこらやと説得してあっという間に中に通してもらえた。


「んじゃ、そういうこって俺はここの町長たちに話通してくるわ」

「うん、ありがとう」 


 言葉自体に説得力があるというよりもかもしだす雰囲気や宝石剣そしてわずかな言い回しと発音の変化で押し通してしまった。

 もちろん使者の証も大きいが……私ではああはいかないな。

 宝石剣があってもうまくいかないだろう。


 ということはやはり話術の能力が高いのとスキルを駆使したのかな。

 明らかに世渡りは上手そうだもんなあ……

 ないものは仕方ないので私は私のやることをしよう。


 教えてもらった地図通りに行き1つの工房へたどり着く。

 そっと開けて見たら中からは金属を叩く音と威勢の良い声が響いてきた。


「ほらよ!」

「はいよ!」

「えいさっ!」

「ほいさっ!」


 おお! 彼らは!

 全身が長いけむくじゃらで顔すらろくに見えないずんぐりむっくりたちが自分の倍もありそうなハンマーを軽々振るっては金属を鍛えている。

 その隣ではきれいになめした革を器用にカットし整え早すぎる速度で手先を動かし縫い合わせている。

 オールドイングリッシュシープドックのような容姿のニンゲン……つまりドワーフだ。


 場合によってはドゥーマーなんて言い方もするのかな。

 "観察"したところ種族は合っている様子。


 さて困ったぞ。誰に渡せば良いんだ。

 さすがに名前を聞かないとまったくわからないぞ。

 中で働いているニンゲンは5人。


 全員がドワーフ系のニンゲンでこれといって違いがわからない。

 みな作業服だしなあ。

 ダル・ド・ザケ・ガァッ職人以外に詳細を話すのは危険。


「ん? おうい! 何か用かい!」

「あ、ああ! ええと、実はお届け物がありまして、宛先の方は、ダルさんと言うそうなんですが……」


 いきなり話しかけられてびっくりしてとっさの嘘をついてしまった。

 頼む。通ってくれよ。


「ダル……? ああ、ザケか! それなら、ほら1番奥の!」

「ありがとうございます」

「そのカッコ、冒険者だろう? 行き先のついでに頼まれた口か。隣町のもんじゃなきゃなんでも良いが、隣町のもんからの頼みじゃないだろうな?」


 なぜだか手に持つハンマーが不気味に光を照り返している気がする……

 本当に恐いほどに対立しているんだなあ……

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