四百六十生目 同化
「よう強いの、前言っていた、魔力生成の調子はどうだ?」
「こんにちは。だいぶ良い感じだよ」
「それはなによりだ」
サイクロプスリーダーが相変わらず大きいせいで遥か頭上から声をかけてきた。
強いのとは私のことらしい。
ええと龍脈車の調子は……っと。
龍脈はエネルギーとしてはあまりに過剰な力。
そのままだと使えない。
なので龍脈車で受けてかなりの重量があるこれを動かしてもらう。
そのさいに発生する電力を分解し魔力に還元。
各ご家庭へと送られます。
まあ今の所ごくわずかなのだけれど……
変魔機含めて問題はなさそうだ。
九尾の開発品は不安定になったらよく爆発するのが困るが作り上げるものは便利。
次はどこへ行こうかな。
フラフラと散歩していたらキッチン場についた。
ここは外と中の食堂に直結している。
ただひたすら食事を作る場所だ。
給食センターっぽくもあるね。
間違って火事にならないように石造りなのもポイント。
もはや何をどう探知しているのか。しれっとカラス人のアヅキが出てきたがもはやいつもどおりなので気にしない。
「これは主、少し何かつまんでいかれますか?」
「こんにちは。いや、そこまではいいんだけど」
アヅキは食事と衛生面を任されている。
ニンゲンの身の清め方なんかも記した本や情報も渡しているせいか最近はめっきりとキレイになった。
最初の頃は石鹸類の使い方が下手で大変なことになっていたが……
最近はニンゲンの品で軽く身を着飾り黒1色だった身体がポイントで輝きを持っている。
一体何に最近力を入れているのだろうか……
「散歩していてね。そう言えば今回の遠征、アヅキは参加したいって言わなかったけれど良かったの?」
「ええ主。以前までの私ならばそうしたがったでしょう。しかし! つい先日私は気づいてしまったのです」
わざわざオーバーリアクションでそう語るアヅキ。
私相手だとわりと芝居がかるよねアヅキ……
「気づいたって?」
「私が担当する調理。それは身体へと還元されるモノ。ならば主が私の考案し作り出す料理を召し上がってくださるのなら、それは私の意志が、魂が! 主に取り込まれているのとおなじ。すなわち! 私の全ては主の最もお側にいると同じ。これ以上の幸福は、ないのです!」
「お、おう?」
背の翼を大きく拡げキラキラと輝きが放たれるイメージがなんとなく見える。
何を言っているのだこのカラス。
「ちなみに、食事は主と同じ物を取っています故、私の身体も主と同じ構成、そして同化されているかと」
「いや、私向こうの大陸でそこそこ買い食いしているよ」
「なんと!! 別の魂が!! 構成物が!!」
アヅキ理論は早速くだけたようで膝から崩れていたが放置しよう……
きっと勝手に立ち直るだろうから。
今度はゴーレム広間へとやってきた。
すっかりゴーレムたちがおどったりジッとしていたりする大広間と化したが彼らの成長は目覚ましい。
今もたぬ吉と弟のハックがふたり仲良くいた。
「動かしてー!」
「せーの、やれー!」
ハックがオーケーを出したぬ吉が自身が作り出した草ゴーレムの中から指示を飛ばす。
するとインカ製のゴーレムたちが一糸乱れぬ動きでニンゲンよりも大きい巨大弓を構え城壁を破壊しそうなデカイ矢をつがえる。
そしてギュッと引き絞ってから放つと同時にそれぞれの的に命中した。
とは言っても矢はニセモノ。
的がぶっ壊されることはなく弾かれて地面に落ちた。
「こんにちはー、やってるね!」
「あ、ローズさん! こちらの調子はバッチリです!」
「お姉ちゃん! 見た? 僕の像がまったく同じ動きしていたよ!」
たぬ吉は草ゴーレムを開き中から手を振ってくれた。
ハックは近づいてきて親しいホエハリ系挨拶で顔をこすりあい。
あの巨大像たちはココ最近ハックが量産していた。
初期はともかく1度トランスさせると大きい分だけパワーが出ることが判明した。
成長はとにかく重量比でパワーの伸びが良い。
速度の伸びは悪いがそこは大きさでカバー。
そして力を活かしての動きとなるとこういうまるで兵器のような運用となってくる。
大きくて重ければそれだけパワーはあるというのはこの世界でも変わらないらしい。
実際の殴り合いではよってたかって殴られるだけで斃されてしまうかもしれないがこういう運用ならば強い。
ちなみに中型とも言えるニンゲンサイズはトラップの作動への運用や魔力面の伸びが良かったしバランスも取れていた。
小型は転がって移動なんかしたりして速い。
集団投入すれば戦場をかき乱せて平地で転がる岩たちになれるだろう。
「まあ、戦場だけじゃなくて、普段から活躍できれば良いんだけれどねー」
「もっと踊ろう!」
「ダンスダンスです!」
おっ踊りも良いけどねえ……