四百五十六生目 休日
本日! 今日! 1日!
マイ休みデーだ!!
イェイ。
というのも別に急遽決めたわけではない。
事前に組んであったスケジュールだ。
いわゆる休日休み。
今日は1日アノニマルース内から出る気はない。
ボロボロになるほど激しい戦いの後にしっかりと休みが取れると楽だ。
ダカシとジャグナーは前回の事件の後何やら意気投合しだして今日も大陸で暴れまわっているはずだ。
というよりダカシはもちろん悪魔の力で自動的に肉体が治るのは知っていたがジャグナーも自動治癒のスキル持ちだとは知らなかった。
私やイタ吉は持っていないからうらやましい。
自動治癒系のスキルでうらやましいのはどうやら肉体をしっかり治し続けるという点だ。
普通は休んでいたりする間に筋肉は疲労をとり体中の不具合を点検し徐々に治癒していく。
回復魔法は生命力をとりあえず活性化させたり傷の存在を否定して因果逆転させて無理矢理治す。
だが自動回復は起きながらにして眠っているようなものなのだ。
使った筋肉はそれだけで傷ついてゆき癒えることでさらに強靭になる。
そのために必要な『休む』という手段を取る必要がない。
あと肉体部位が一部なくなろうが復活するのでスキルの中でもかなり便利。
もちろん脳は疲れるから休む必要はあるが……それでも良いなあってなる。
私まだ細々と寝るのをあわせたら12時間は休まなくてはならない。
ずいぶん楽になるだろう。
それはともかく本を読み潰しつつ他のみんなの情報をまとめておこう……
まずニンゲンチーム。
ウロスさんとユウレンに案内されながらまずはひとつの街へ向かった。
光剣のオウカに人狼のゴウそしてケンタウロス風ダン。
さらに子ども勇者グレンくん。
今回は彼と会話した。
いつもどおり向こうが"以心伝心"を"率いる者"の効果で使われて念話を送られる形だ。
『――とまあ、こっちは結構死にかけたよ。そっちはどうだった?』
『な、なんだかすごく壮絶なことに巻き込まれている……ええと、こっちはすごく楽しい! 僕もまた成長したから見せたいなあ』
ウキウキしている声がきこえてきた。
勇者の特別な力でレベルが増していくと肉体も早く育つらしいが……次に合流する時が楽しみだ。
『それで、この街についてから、観光したり、おいしいもの食べたりもしたんだけれど、もちろん使者としての仕事もやったよ。ここは来た降伏宣告に悩んでいたところだったから、渡りに船だったみたい』
『それは良かった。嫌な事は特になかった?』
『訓練のためにめちゃくちゃ戦わされたことと……王様に協力するのなら近くの山賊を倒した方が良いってことで、オウカさんたちが蹴散らしたんだけれど……俺はほとんど何もできなかったことかな』
なるほど道中に山賊がいるのなら確かに捕縛しておいて間違いはない。
ただ今の言い回しはなんだろうか?
『何もできなかったのが、嫌なことだったの?』
『うん。俺はもしもの時に後ろに控えててって言われて。そのまんま何もできなかった。俺に人を傷つけたり傷つけさせたりしたくないというのはなんとなく伝わったけれど、それ以上に自分が無力なのが伝わってきて……
こう、みんなの動きを改めて後ろから見ていたら本当に圧倒的で、俺もあんな風になれるか自信なくしちゃった……』
『あー……』
なんて言えば良いのだろうコレは。
まあ彼らむちゃくちゃだからね。
彼ら基準は色々ダメだと思う。
声は本格的に落ち込みモードに入ってきちゃっている……うーんそうだなあ。
『まず、子どもが大の大人に立ち向かうには順番がいるし、なるべくなら傷つけ合わないほうが良い。そこはわかるね?』
『え、うん』
『危険だし何より他者を傷つけるのに心から慣れてはいけないから、そこらへんは大丈夫みたいだけれど……それよりも、オウカたちはキミに戦う姿を見せたかったんだと思う。恐怖でも怖気付くでも、そしてグレンくんの言うように自信なくすでも。感じ取ってほしかったんだと思う。
本気で戦うという姿そのものを』
もちろん憶測だ。
本人たちに直接聞いてしまうのが早いだろう。
ただここでは自分の考えを述べておいたほうが良さそうだ。
『本気で、戦う姿……』
『相手も自分も傷をつけあうし特に同種族のその姿は心にひどいものを刻みやすい。
いきなりそれをやらせるのは大人としても彼ら自身としてもナシだったんだろう。
けれどこの時代、そしてキミの勇者は戦いに無理矢理でも向き合わせるし、キミも最初はそのために船にまで忍びこんだ。改めて、戦いというものの本質を見せたかったんだと思う。その上で、深く考え続けてほしいから』
『……なんだか、少しだけわかった気がするよ』
なんとかなったかな。
こういう話は難しいし私も正解とかはよくわからない。
ただしさだなんてその時その時で常に変わってしまうもの。