表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/2401

四十三生目 再降

 今日は休みだー!!

 5人組は今日は町へ行っているしハートペアの教育もないので完全フリーだ。

 積雪が90センチ近く行っている気がするが群れ周辺の雪は固めているから大丈夫。


 5人組には小遣いも渡してある。

 働いたぶんからある程度被害者へ渡すのを引いたものだけどね。

 文字を読め算数が出来るかの戦いだ。

 冒険者3人組もついているとは言え、そっとつれそうだけの予定だ。


 彼らはその日暮らしを繰り返してきた。

 計画性云々の前に、その日使わなければ盗まれたり食べられたり腐ったりする。

 だから寝る前に使い切らない事に恐怖心がこびりついている。

 心的なリハビリが必要なものはしつこくなくならない状態を繰り返して恐怖心をならす。

 理屈で心を納得させ実践で心を安堵させる。

 それを延々と繰り返し、やり方を調整するしかないと私は思う。

 もっと良いやり方が現代社会ならあるかもだが、原始的なやり方ぐらいしか出来ないのよね。

 お薬調合とかできません。


 というわけで彼らはしばらく現地学習で今までの訓練を活かしている最中。

 数日は帰ってこないはずだ。

 私はたっぷりと寝る!


 あの3種混合魔力によるビーム発射後、私はあの感覚をたびたび思い出していた。

 確かにとんでもない反動だったが、あの力を実感出来たのは大きな進歩だった。

 あれから何度も実験していたがもう少しでいけそうな気がする……

 理論は教わった、キッカケは掴んだ、後は練習のみだ。

 でも根を詰めてもうまく行くことはない。

 ぐっすり休んでそのエネルギーで成功させよう。




 夕暮れ時。

 あたりがざわざわと騒がしくなり、私は休憩を終えることとなった。

 穏やかじゃない空気。


「また奴らが来るぞ!」


 それがクローバー隊たちが慌てて帰ってきたさいの言葉だった。

 だいぶ前にクローバー隊たちが帰ってきて伝えていた(カラス)たちの襲撃。

 それをクローバー隊たちも覚えていたらしい。


 事は少し前。

 クローバー隊が帰ろうとしていた時に烏に襲われ撃退。

 ここまではいつも通りだったのだが。

 そのさいに大烏が上空を飛びこちらの群れへ飛んできたらしい。


 冬は食糧が少なくなる。

 それを烏たちも把握していて、じゃあハラがどうしても減ったならどうすればいいか。

 答えは前襲った相手の食糧をまたかっさらえば良いというものだ。

 前回の襲撃時私たちはかなり無力だった。

 大烏はかなり強力だし、思考と連携もうまい。

 だが今回はクローバー隊が命からがら烏たちより早くこちらに辿りついた。

 奴らは飛んでいるとはいえ、正確な私達の位置を見つけるのは難しい。

 特に今は近くに火の手がある。

 賢い烏は私たちの位置ではなく人の位置だと勘違いするだろう。

 その間に迎撃体制を整える。


「もう来そうか?」

「わかりません、しかし空の様子は騒がしいですね」


 父と母がジャックに連れられ出てきた。

 私は兄弟やハートペアと共にその場を離れ、少し離れた洞穴へと避難。

 少し歯がゆいが、レベルも体格差も私がまた狙われかねないからだ。

 前は大烏の襲撃時に大烏は父母になすすべなく撤退した。

 今度は予め合流しておいて初めからぶつける作戦だ。

 それで帰ればよし、帰らなかったら……




視点変更


「来たぞ!」


 その掛け声と共に全員空を見上げる。

 稼げた時間はそのまま戦力となって群れの対策は整っていた。

 対して烏達はまた前と同じように襲撃を仕掛ける。

 まずは烏の先鋭隊が空から急襲を仕掛けた。

 しかし、急襲は対策されていては意味がない。

 烏たちが空から降ってくると同時にスペード隊は背の針を立てて向けた。

 勢いに任せた攻撃は勢いのままにトゲに突撃することになる。

 先陣が赤い血を散らして貫かれることでやっと踏みとどまれた烏陣。

 貫かれた烏たちを捨ててかかるスペード隊。

 何かがおかしいことに気づき慌て始める烏たち。

 隠れていたクローバー隊やダイヤペアもそこにかかり一気に劣勢になった。


 たまらず烏たちは上空へ逃げようとする。

 すると上空から降ってきた岩を1羽が喰らい潰された。

 あまりに急な一撃に目を走らせる烏たち。

 すると地上にいる1匹のホエハリが岩の魔法で撃ち込んできていた。

 慌てて機動回避をはかる烏達。

 完全に出鼻は挫かれていた。


 一方前回食糧があった所に降り立った烏達。

 こちらがメイン隊だが困惑することとなる。

 そこには紺色の姿のガウハリが佇んでいた。

 絶対に接敵してはならないとされていた存在。

 そしてここにはいないはずの敵。

 どうすべきか判断に迷った集団。

 集団だからこそ動きが淀んでしまったその時が彼らに地獄をよんだ。


 黒い影が一声吠えると姿が消える。

 次の瞬間には烏の群れの中で1羽を食い破りもう1羽を引き裂いていた。

 巨躯とそれに似合わない速度。

 呆気に取られていた烏たちは即現実を取り戻した。

 ギャアギャアと騒がしく鳴きながら相手を囲うように上空へ飛ぶ。

 救難信号だ。

 彼らでは敵わない相手を見つけた合図。

 すぐ近くの大烏へ向けたものだ。

 そして上空ならば相手は当たらないとふんでの動き。


 黒王は脚に力をこめ跳ぶ。

 跳躍は瞬間的にとはいえ彼らの位置すら捉えた。

 背の針は光を纏い周囲にエフェクトがかかるように光が層をつくる。

 空気を貫くような見た目のそれはそのまま烏たちを貫き砕いた。

 一撃での絶命。

 シャレにならない威力だった。


 烏たちは上空すら危険とさらに高度を上げる。

 しかしまだ15羽以上いる烏たちへ追撃がやむことはない。

 近くの木に脚をつけるとそのまま爪で落下を防ぐ。

 そして再び垂直だろうと関係なく跳ぶ。

 木を利用した壁キックのぼりはあっと言う間にまた彼らに追いついた。

 1羽、また1羽と撃墜される。

 ふざけるなというのが彼らの統合された意思だった。

 なぜ奴はそこまで身軽に空を動き回れるのだと。

 なぜここまで跳んで来れるのだと。


 恐怖に飲まれる。

 ヤケになった烏たちが上空から猛襲。

 突っ込んでくる(くちばし)は弾丸のごとく。

 しかし黒王は正面から受け止め全てを薙ぎ払っていった。

 切り裂かれる弾丸達はその命を散らし怯え逃げようとした翼は串刺しされて砕け散る。

 無情な戦場は一方的な殺戮でトドメを刺された。




 戦場に降り立った大烏はそのあまりの静けさに怖気が走った。

 散らばる部下たちの血は彼らが無惨に散った証。

 あまりに静かなのは、目の前の黒王が全て殺した証拠。

 圧倒的な力量差になすすべ無く片付けられた命達。

 自然界として生き残るための競争はつねにこうして行われる。


 だからこそ大烏は激昂に駆られた。

 絶対に自らの群れを危機に陥れる怨敵を討たんと震う。

 外から見れば襲撃した側が悪だ。

 しかしそんなくだらない他者評価なんぞ関係はない。

 自らの群れが滅ぶか怨敵の群れが滅ぶか。

 その2つに1つの戦いなのだから。


 雷の刃が生成され大烏は特徴的な腕でそれをつかむ。

 1振りすれば絶縁体の空気すら斬り裂く実体化した力の塊。

 黒王もその自らの力が極限にまで高まってゆく。

 研ぎ澄まれた場に余計なものはいらなかった。

 相手を殺すか殺されるかの勝負。

 両者前傾。

 駆け出した時に戦いは始まった。

TIPS

ホエハリの睡眠時間:

 20時間くらい寝ているくらいでも良いとされるホエハリ族。

 この時主人公は16時間くらい寝れたそうだよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ