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四百三十八生目 熊猫

「あ、大技来るよ!」

「んなこと! 言われても! 抜けねえ!」


 必死にダカシが暴れるがパンダの出した草の盾から爪が抜けない。

 本来ダカシならやりようはたくさんあるのだろうが……なれない身体での戦闘に苦心しているらしい。

 その間にもパンダの準備が終わった。


 左腕についている草の盾をそのままに右拳にダメージを受けていた部分の斑点が集まる。

 そのまま黒い(エフェクト)をまとって爪ごとアッパー!

 逃れられないダカシは結構まともに喰らった!


「ぐううっ!!」


 その衝撃で爪が外れるものの後ろまで吹き飛ばされる。

 受け身着地して歯を食いしばり立ち上がる。

 耐えた。


「ほほう、今の一撃を耐えるか」


 ちなみにパンダは"観察"済みなので私のスキル複合効果で言語はわかる。

 分からないフリしているけれど。

 ダカシは今ので顎が貫通して牙が抜けるなどの被害があったが肉が伸びて覆って治る。


 表面上はね。

 じわじわと蓄積するダメージは生命力を削るし血は鼻に入るのは呼吸が乱れる。

 こちらは決定打はまだだ。


「向こうはカウンタータイプみたいだね」

「無用な攻撃はマズイぞ、どうするんだ!?」


 そこは自分で考えて欲しいんだけどなあ……

 まあただ元々押せ押せのダカシと相性が悪いのは確か。

 まったく活かしきれていないがダカシの方が能力が高いから本来は押し切れるかもしれない。


 ただまたガチガチに"防御"固めだしたパンダのカウンターはこちらの力が全て跳ね返るされてこっちの強さがアダになるかもしれない。

 対処は……


「いろいろあるけれど、1撃で仕留めるぐらい強力に噛み付くか、相手の手番を与えないほど早く連撃しつづけるか、相手の仕掛けに合わせて反撃するかかな」

「か、噛みつきは……まだ自信がない」


 わかるよ。私も噛みつきが強いとわかっていても口の中に毛皮と血が広がるのを考えるとためらうもの。

 ダカシは元ニンゲンとして特にその選択肢はつらいだろうね。

 他のもあまり現実的ではなさそう。


 ダカシは早ければ早いほど自分でそれを4足でやりにくく戦いの時は身構えているせいでやれる度合いがガタ落ち。

 カウンター狙いに対して相手の攻撃誘いは『あなたの土俵で勝負します』と言っているようなもの。

 やはり困難。


「……ん? わかった、やってみる」

「どうしたのダカシ?」

「悪魔が、なんとか出来るかもしれないらしい」


 ダカシが距離を取り低く身構える。

 パンダは身構えながらじりじりと距離を詰めている。


「何をする気だ? カウンター狙いなら無駄だ」

「悪いが、そうじゃない」

「むっ……? 話せたのかお前」


 受信機も翻訳しだしたようだ。

 それに明確にパンダ相手に話しかけたのは初めてだからっていうのもあるか。

 ダカシの背中の肉が盛り上がる。


 筋肉ではない。

 薄皮が破れるように変化し血と共に形状が伸びていく。

 湯気がたちあがり肉の中から剣が出てきて伸びた肉の先につながった。


「なんだこれは!?」


 パンダが驚く中全貌を表したのは背中から生えた腕にスモールソードと復讐刀がそれぞれ左右についていた。

 私と戦った時に穴に落ちかけたさい生やしたやつだ。

 変化した肉にしっかりと毛皮が乗る。


「かはっ! はあっ、これ疲れるな!」

「よくわからんが、そんなものが出来ただけで……!」


 そこそこ今ので疲労してしまったようだがダカシの目つきが変わった。

 剣を身構え足は全て地に食い込ませる。

 ダカシは元々剣士だったし今のポテンシャルなら。


「正義ではないが、悪でもない。そんなお前にこの復讐刀を使う。すまない、恨んでくれ」


 ガチガチにガードを固めるパンダ。

 次の瞬間にダカシがそこに飛び込むと背中の腕がしなるように斬り込む。

 そのままパンダの背後まで駆けると剣を振り終える。


 走る大量の剣の軌跡。

 輝く刃の軌跡は切れ味鋭くパンダは身体のあらゆるところからパッと花開くように血を吹き出してそのまま倒れ込んだ。

 ダカシの勝利だ。


「はあ、今のはつかれた……!」


 ダカシもそのまま倒れ込むと剣と腕が黒い(エフェクト)に飲まれるように曖昧に混ざってゆき背中に消えていった。

 後には何もなく前と同じ状態。

 一時的にしか出来ないのね。


「双方お疲れ様。いま治すね」






 パンダには"無敵""ヒーリング"組み合わせを行いダカシは普通に癒やす。

 おとなしくなってくれたのでパンダに話をすると近くの集落について教えてくれた。

 ニンゲンたちが少数住んでいるが最近『嫌な気配』がするのだとか。


「ありがとうローズ、それと戦いに付き合ってくれてありがとうお前」

「俺もまだまだだとわかったから良いってことだよ。来るやつに喧嘩売る日々もそろそろ引退だな……ああそうだ、少し良いか。この溜まったパワーは発散しておきたい」


 パンダはそう言うと自身の全身に現れた黒い斑点を指した。

 そういえばそれはダメージを受けたさいのたまった力が表面化しているんだっけか。

 かなりたまっているからどの程度力があるか試したいらしい。


「本来なら死ぬはずのダメージ、命を拾ってもらえたからな。おそらくとんでもないはずだ。ここらへんの木で……」


 背は低いがかなり根が大きくはびこっている木を見つけパンダが黒い斑点を右前脚に集める。

 完全に黒く染まった右前脚で渾身のストレート!


「あっ!?」


 次の瞬間パンダごと地面が吹き飛ぶ。

 あたり一帯の根と絡んだ根の先にある木も地面ごと吹っ飛んだ!

 さ、さすがにしーらない!

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