四百三十四生目 使者
話している間に兵士が次々ニンゲンを誘導してきて総勢10人程度となった。
その間にも話は聞けたがあまり多くの情報はなかった。
ある時一気に西側から侵攻され大量のアンデッドと共に帝都へ向かったらしいとのこと。
帝都が陥落して占拠され各地で奇妙な異常が起こっているらしいとのこと。
詳しいことは把握しきれずに現在も情報集めている段階ということだ。
集まった情報はオウカが魔法郵便で飛ばす。
私達が仕事の終わりで良いとされるまではこれをやり続ける必要があるそうだ。
まだ先は長そう。
「よし、これで私が呼んだものは全員だな」
「このメンバーは……?」
「それは自分から説明します」
臣下のひとりが会話に乗ってきた。
ここからは彼が仕切るらしい。
「このメンバーは全員、一定以上の水準を高く満たしているとして特別にウォンレイ王に認められたものたちです」
「つまりは、強いってことだな」
ダンの言葉に臣下が頷き話は続く。
「他の者たちは、集団で組んださいの実力を見る段階に移っていますが、あなたたちはそのまま、特別な戦力としてカウントさせてもらいます」
「ようは、行軍じゃなくて独自に動いてもらいたい」
「そ、それは、良かったぜ……」
王様の話に反応したのは背後からの声。
見てみると……あ。さっき倒したニンゲンだ。
確かダンダラ。
「起きましたので、お連れしました」
「ご苦労」
兵士が下がる代わりに現れたのはあちこちに包帯巻いた姿のダンダラだった。
ねんざとか打撲かな。
「……あれ、治癒魔法は?」
「順番待ちだそうだ。それにこのぐらいツバつけときゃ治る」
ボソッと疑問をつぶやいたら聞かれていて答えられてしまった。
ちょっと恥ずかしい。
それにしてもあまり治療術師はいないのかな。
ただまあ医療自体は結構正確みたいだから大丈夫そうかな。
治すのは魔法だけじゃないからね。
「さて、改めて説明を」
「ええ、続けさせてもらいます。軍隊より先行し情報収集と問題があれば解決をして、軍隊到着までにうまく道を確保して欲しいのです」
「道の石拾いってことか」
「石で済めば良いのだけれどね……」
臣下の説明にダンが自己流に訳しオウカが未来を憂いる。
「軍隊はその石ひとつでも多くの支障が出て多人数特有の消耗が顕著に出します。ましてや岩なんてあろうものなら……数日滞在するだけでどれほどの費用がかかるかわかりません」
「しかも狙われる可能性が跳ね上がってしまうね……」
臣下が解説した後のオウカの考えに臣下は同意した。
そりゃあ大人数でゾロゾロしていたらそうなるわな。
「事前に軍隊が通れるように告知してもらいたいので、各地の長にこちらが発行する書類を届けてもらいたい。費用を出すから食糧の確保などをお願いするむねの物です」
「それと口をつぐんでくれるようにお願いだな。事が順調に運ぶように私の使者である証も渡しておこう。悪用はしてくれるなよ?」
「はは、まさか首をはねられたい奴はいないだろ」
王家の紋章がある赤茶色の指輪だ。
まあこれを悪用なんてしたらすぐに王様の耳に入って斬首刑だろうなあ。
そこらへんはダンダラは詳しそう。
「詳しいことはこの地図を見ながら話そう。なるべく複数の場所に向かってもらいたいので――」
その後しばらくは作戦会議になった。
「先ほどはご苦労だった。少年も、退屈だったろう」
「いえ、俺は大丈夫です……」
やや眠たそうなグレンくん。
まあ会話に混ざっていなかったし眠くなるよね。
今私達はまた別にウォンレイ王に呼び止められていた。
私達が冒険者で外国人ということでちょっと話を聞きたいんだとか。
「臣下には仕事をしてもらっている。護衛たちは……気にしないでくれ。それよりも、キミたちほど強いのに本当に冒険者なのか?
皇国の精鋭兵と言われても違和感がないな」
「ウォンレイ様、この国では冒険者の立場は弱いみたいですが、我が国では冒険者はかなり重要視されているので、個人で突出したものがいるだけなのです」
ウォンレイ王はうんうんと肯定。
「蒼竜に誓って、疑ったわけじゃあないんだ。ただ我が領土の冒険者と比べると驚いただけさ」
「蒼竜に誓って……?」
「あー、簡単に言うと、神様に誓えるほどこれから言うことは嘘じゃないよ! ってことだよ少年、いや、勇者の方がいいかな?」
グレンくんの疑問に答えるだけ……と思いきやいきなり爆弾発言。
そうか、"観察"のようなことが出来るならばグレンくんの正体を見破ることも出来るのか!
グレンが1番驚いて目をひんむきオーバーなほどにリアクションとっている。
「ええっ!? なんでそのことを!?」
「はっはっはっ! 私の能力でな、みなある程度の事なら見られるんだよ。そこの剣折乙女のローズオーラ君以外はね」
"影の瞼"はかなり高確率でその手のスキルを防いでくれる。
てか剣折乙女って私かい。
変な異名つけないでほしい。