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四十一生目 命尾

 ぬぁぁ……!

 痛くない!

 痛くは、ない!

 だからこそ恐ろしい。


 私の尾が斬れ落ちている……!


 凍てついて血すら出ない尾。

 完全に冷凍保存されて新鮮なまま搬送される準備が整っている。

 対して私の方はじわじわ温まってきている。

 私が痛みと血でのたうちまわるまであとわずか。

 次の魔法攻撃を避けつつ尾を口にくわえる。

 味方は攻めに集中していてくれている。

 今なら場が乱れることはない。


 私はまともなバランスも取れずにコケるように回避。

 スキを見つけて唱える。

 血が出始めた私の尾てい骨あたりに尻尾を置いて初めて使う魔法。

 イノスキュレイト!


 部位を接合し治す魔法。

 光が私の尾周りに集まって嫌に生々しい肉の音と感覚が来る。

 そして見事跡もなく繋がった!


 うう……ただ物凄い体力削った気がする。

 自身に観察を使うと生命力が1/3になっていた。

 何度か連続で被弾したことと今の魔法で生命力を使ったのだ。

 ヒーリングで生命力を治しつつ敵のつららを避ける。

 二度同じ轍は踏むまい。


 まさか尾が使用不能になるだけでここまで恐ろしい運動障害が起こるとは思っていなかった。

 斬れた尾も今は繋がっているとはいえとんでもなく痛々しい光景だった。

 ニンゲンだったら気づかなかった尾の愛おしさよ。

 絶対にアイツに勝とう。


 徐々に尾の冷えもヒーリングとヒートストロングの魔法の力で改善された。

 尾が動けば我が世の春。

 コレ以上の手はないらしく、凍らせ、つららとやたら滅多ら撃ってくるだけだ。

 相手の残り生命力は1/3!


 一種の魔法を撃つ機械のようだ。

 不動で氷の盾に任せつつひたすら私に向かって放ち続ける。

 ちょっと考えれば周りで殴ってるやつらをどうにかした方が良い。


 ……と思ったらなんだ!?

 奴の周りに急激に力が高まる!

 どんどん氷が増殖され覆い尽くす速度が増している。


「何かしようとしている! 離れて!」


 私が叫ぶと同時にみんな距離をとった。

 そして相手はそのまま勢い良く氷が増殖。

 あっと言う間に。


「なんなんだ、これ……」


 インカたちがそう言葉をもらすのもしかたないものが出来上がった。

 あまりにも大きな、氷の塊。

 先程の相手を隠してしまった。

 スキル観察……なるほど!


「どうやらアレは自身が氷で出来ているのを利用して、この中で自らの氷を冷やし、直しているみたいです」


 生命力が回復している。

 少しずつとはいえ私達5匹合わせたよりも大きな氷の中だ。

 掘り尽くす頃には回復が終わってしまう。


「早く削らないと!」

「いえ、考えがあります、一撃で決めたいので少し離れてください」

「うん? わかった、任せるよ!」


 ハート兄に許可を取ると全員が距離をとった。

 本当はこの手は使いたくなかった。

 何せ反動が凄まじいらしいからだ。

 ただ、私の尾がやられたままで引きこもられ、あげく完全復活されたらたまらない。

 魔法を使うだけで反応するというたちの悪さも冬の間怖さがつきまとう事になる。

 必ず斃す!

 "私"が決める!


 光、火、土の魔力を作り出し、それらを配合。

 そして莫大な力を生み出す。

 私の全力の一撃!


 くらえ!

 マジカルビーム!!

 私の前方から撃ち出された白いエネルギーは光を一瞬歪めるほどの力で直線に飛ぶ。

 いっけええええええぇぇぇッ!!


 氷に当たり分厚い物にぶち当たる音。

 そして氷全体にヒビが入り光が漏れる。

 ドカンッ! と響く音と共に氷は粉々に砕け散った!

 氷と光の中から氷魔が飛び出る。

 見るからにボロボロだ。


「トドメを!」


 私の掛け声と共に全員が一斉に氷に喰いかかる。

 5つの炎の牙が氷に刺さりそして。 砕け散った。




[経験値累積 +レベル]

[経験値累積 +レベル]

 終わった……!

 私は2つもレベルが上がってしまうほどの強敵だった。

 ちなみに今私は先程の場所の近くの木陰にいる。

 "私"の勢いで最後とびだせたものの、その後恐ろしく反動が全身を襲って動けなくなったのだ。

 何とかみんなに運んでもらい休憩中。

 生命力は何とかなっているが、体力とかスタミナとか行動力らへんがみんな吹っ飛んでしまった。

 指一本動かすのも苦痛というやつである。

 全身ビリビリ痺れるような破壊力のビーム。

 真面目に一回こっきりで十分な技だ。

 『あれ凄いね! 教えて!』みたいなこと言われたが、その直後私がぶっ倒れたのを見てそれどころではなくなった。

 使った側もやられる技は、危険だねぇ……


 みんなで冷え切った身体は寄せ集まることで温まる。

 おかげで今は毛玉の塊状態だ。

 モフモフ祭りだ。


 スキルのレベルは回避が5に、火魔法が3にそれぞれ上がった。

 火魔法の新たな魔法はこんな感じか。

[フレイムガード 自身正面に短く炎熱を張る]

[クールダウン 対象が猛熱を発していたさいに通常の温度に戻す]


 フレイムガードは10秒くらいだけ自分の正面に恐ろしい熱が薄い膜の形を取る。

 防御にも使えるがこのまま突っ込んでも良いかもね。

 クールダウンは戦いが長く続いた時に便利そうだ。

 毛皮は熱を逃さないので寒くなりにくいが暑くなりやすい。

 熱がたまると当然クタクタになってしまうからリフレッシュ出来るのは便利だ。


 新しい魔法をチェックしているとハックが近づいてきた。


「お姉ちゃん、さっき凍ったり尻尾が切れていなかった? 大丈夫?」


 うあ、見られてたか。

 もちろん今は大丈夫。

 氷魔に心があるかは知らないが来世の平穏を祈るくらいは余裕。


「あちゃー、見られていたか! まあ治したから大丈夫だよ」

「本当?」

「ほら、動くって」


 私がしっぽを動かして見せるとハックが感心した声をもらした。


「凄いねお姉ちゃんの魔法! そんなことも出来るんだ!」

「いやあまぁ、今回は私が原因だったから良くないこともあるよ」

「仕方ないよあれは。事故だよ」


 そう言ってくれるとありがたい。

 それにしてもかわいいやつめ。

 グリグリと撫でてやる。


「くすぐったいよお」


 そういってハックはけらけら笑っていた。




 帰ってからはスキルポイントを使って新スキルの獲得だ。

 私のレベルは24、追加ポイントは2。

[切り裂き 相手を身体の一部などで斬る。レベルが上がることで能力が増す]

[頑張る 生命力が一定以上あるさいに大きな攻撃を喰らってもぎりぎりで耐える。生命力と大きなダメージの度合いはレベルが上がると増えていく]

 切り裂きは殴打の後にあった。

 串刺しと殴打と同じタイプで、爪での攻撃はこれに該当する事が多い。

 便利だと思う。

 頑張りは土魔法からの派生だが魔法ではなく、必要になった時に起こるスキルのようだ。

 保険ではあるものの、今後も大変な戦いはあると思う。

 油断せずにこういうのを集めていきたい。


 今回の戦いは危なかった。

 この森にはまだまだ危険で強力な相手もたくさんいると思い出させてくれたよ。

 最近は安全な狩りが中心だったからね。

 イタチやタヌキみたいなのばかりではないのだ。


 そう言えば群れに帰ってからはふたりとも今私の身近にいる。

 これまではイタチもタヌキも片方ずつだったので珍しい。


 ……もしかしてさっきの苦戦をこいつらに見られてたかなー私。

 ちょっと恥ずかしい。


 なんで2人仲良く寄ってきたかはわからないが、良い機会なので名前をつけよう。

 イタ吉とたぬ吉だ。

 まあ、彼らはわかりやすくね。

 早速サウンドウェーブを使って呼びかけたら怪訝な顔をされた。

 まあ、日本語なんて聞き覚えないだろうからね。


 ……そういえばこいつらも観察したら言葉がわかるように?


 そんな思いを抱いてうっかり気軽に観察したら、強制スピードラーニングで酷く苦しんだのは言うまでもない。

 あ、あの時の氷や虫は苦しまずに済んだの、言葉とか意思があんまり無かっただけだったのか……!?

TIPS

尾が繋がる所:

 ホエハリ族は尾がそのまま背骨に繋がっているよ。

 普段は尾でバランスを取っているため切断時は背骨へもダメージが入るよ。

 だからとても大事な場所なんだ。

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