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その能力は無敵! ~けもっ娘異世界転生サバイバル~  作者: チル
そして迎えるは春か破滅か
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四百二十四生目 戦士

 翌日。

 私はいつものように朝の柔軟を行っていた。

 船の緊急修復も終えていて無事船を出している。


「本当に、昨日はありがとうございました……あの時お姉さんが身代わりに死んじゃったと思って、そうしたら余計に身体が震えて動けなくなってしまって……勇者なのに、情けないですね」

「昨日も言ったけど良いっていいって、あの力には助けてもらったしね。まだ小さいのに大した心持ちだったよ。ありがとう」


 悪魔などに非常に有効らしい勇者のオーラ。

 あの黄金のきらめきをわけてくれるだけで彼の力はかなり有用と判断せざるをえなかった。

 だから絶対に守りぬく前提でここにいる。

 大人側が譲らない勇者に折れたとも言う。


 最終的にオウカが提案したことなので誰も反対しなかった。

 実際に力も理解しちゃったしね。

 グレンくんが獣な魔物だったなら例えばホエハリなら1歳もあればおとななんだけれどニンゲンは20年かかるから長いね。


 オウカは魔法便で元きた方向へ事の顛末を書いた文書を飛ばしている。

 文字通り空を飛んでいく便だ。

 じきに街について回収されるそうだ。


「ところで……お姉さん本当に魔物なんですね」

「そうだよー」

「みなさんから聞いたけれど、なんとも実感がないや……」


 まだ幼い子だからかあんまりニンゲンと魔物の見分けはつかなかったらしい。

 実際私も見分けるのは難しいとはおもう。

 3つ目で4つ足獣ならまあまあ魔物かなと思うけれど2足で服着ていればケンタウロスのようなダンや人狼のゴウもいるしね。


「ところで……ハァ、ハァ、武器がこれだけ当たっているのに、痛くないんですか……!」

「まあグレンくんみたいな力量がまだ低い子が練習用のモノ振り回しても、ねえ」


 グレンくんが私に対して練習用の木剣を何度も斬りつけかかっている。

 それを特に避けるでもなく防ぐでもなくさっきから受け続けているが痛くないものは痛くないので仕方ない。

 ポーンポーンとあたっているなーと思う程度。


 グレンくんはついてくるということで自身も戦えるように鍛えたいと申し出ていた。

 それで各自付き合うこととなったわけだ。

 今は武器の適性見極めで雑に私に斬りかかってもらっている。


「オウカさん、どんな感じ?」

「これは意外、本当に初めて剣を握ったの?」

「親は武器とかは買ってくれなかったもんで……ただの棒とかならまだ振り回してみたことはあるんですが」

「さすが勇者……と言ったところか。剣が独学だろうに、かなりしっかり振れている。自然に必要な動きを理解しているようだ。才能を感じずにはいられないよ」


 木剣で斬られている側としてはポーンポーンと弾かれるさまをみているだけなのにまるでオウカが褒めすぎな気もするが……

 ということで武器を次々変えていく。

 練習用に廃材を利用して木製で作り振らせることを繰り返す。


 今も船上は修理の途中でガタガタで廃材なら山ほど出てくる。

 私の力やゴウのスキルである"武器作製"で意外に見た目だけならマシなものが仕上がる。

 普段はこのスキルでなんでも矢にしてしまうスキルだとか。


「やあっ!」


 ポコーン。

 木槌が弾かれる。

 爪の出ていないネコパンチのようだ。


「弾かれた後のバランスのとり方や構え直しまでの動作、それに弾かれても怯まない心の持ちようはやはり良いね。問題はどの武器も適性があってどれを伸ばすか悩むことだね……」

「次は弓をやってみましょう」

「は、はい!」


 ちなみになぜ避けるわけでもないのに私が的なのか。

 これはそもそもカカシなんて船に置いていないということと実際に生物をぶん殴るさいの心構えを見たかったらしい。

 実践で相手の肉を穿った時に武器をもう握れなくなる者や肉切りに快楽ばかりを見出す者もよくいるとか。


 どちらも戦いに向いてない。

 前者はともかく後者は戦場で暴走しがちらしく調理人には向いているとか。


「行けっ!」

「お、ナイスショット」


 ペケーン。

 私は普段通り鍛えているが矢じりのない矢が私の毛皮に弾かれる。

 そこそこ近距離とは言えちゃんと当ててくるという点ですごさがわかった。


 私も弓矢やってみたことあるけど難しいよね。

 グレンくんはゴウが後ろについて正確に教えている差はあるもののまず飛ばないのよねアレ。

 指を痛めるばかりで。


 その後も武器を使わせればグローブでの殴りすらも素質有りとのこと。

 何より攻撃して息が乱れ行動力が削れ体力が落ち汗が流れて手が痺れてもグレンくんはやめなかったのも評価された。

 それと。


「本当に大丈夫ですかー!」

「大丈夫ー」


 常に私に気をつかいつつも手を緩めることはなかった。

 攻撃と疲労によるアドレナリンに支配されることもなくかといって怯むこともない。

 まるで手馴れの戦士みたいな心持ちを既に素人の段階で得ている。


 戦う心を持った子ども。

 良し悪しはともかく確かにそれは勇者だった。

 まあ最後まで私にカスリダメージも負わせられなかったが……


 それはそれこれはこれだ。


「鍛えがいがあるな!」

「いっそのこと全部使えるようにしましょうよ」

「あ、魔法も良いかな?」

「はぁ、はぁ、は、お手柔らかにおねがいします……」

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