四百二十二生目 臼砲
一瞬でスライム本体が炎の柱に包まれる。
私達は距離を取り燃えて弾けるスライムは"防御"して防ぐ。
痛い。地味に痛い。
炎の柱は数秒の後消えてだいぶ溶解したスライムの姿を拝む。
今だ燃え溶けているスライムに悪魔の目がついにスライムのまぶたを越えて顕になった!
「こいつで!」
「トドメだーっ!」
オウカとダンが叫びゴウが矢をつがえて私はドライに頼む……前に動いていたが剣ゼロエネミーを飛ばしてもらう。
2人が飛び剣と矢が放たれ悪魔の目にほぼ同時に攻撃!
激しい衝突! 手応えあった!
……あっ!?
「うわっ!」
「またかー!」
なんとスライムは無理矢理身体を揺らして悪魔の目側にスライム分を集中。
剣と矢そして2人ごと悪魔の目を内へ飲み込んだ!
まずい今のは全力を放った後だから彼らの酸素がすぐに足りなくなって酸欠になる!
スライムの中は気体がまずないから無酸素。
今の大胆な取り込みでやや空気をとりこみ気泡も生まれたがすぐにふたりから引き離している。
その状態でも明らかに2人は怒りながら光の剣で斬ったり拳で殴ったりともがいているがあまりに分厚くてしかも自由に腕を振れない。
水中で武器を振り回すよりもスライムの中は重くさらに消化してくる。
魔法補助で皮膚がただれるほどになるまでには時間がかかるが……
「くっ、離してもらおう!」
ゴウが焦って2本矢を放つが再生仕掛けている触腕で受けた。
また一部砕けたが再生可能なスライムにとっては気にする程度のことではないだろう。
悪魔の目と内臓の方が大事だ。
(くっ! 魔法で! うまく剣が掴めねえ!)
ええ! ドライ、剣を魔法で掴めないの!?
(なんかすごいヌルヌルする!)
スライムおそるべし……念力のように扱っていたからこそこういう事故はないもんだと思っていた。
(空魔法"フィクゼイション"での掴みは空間ごとかなりの力でがっちり持つ。ただ摩擦係数が恐ろしく落ちるスライムが間にあると……)
なるほどすっぽ抜けるわけか……
しかもスライム自体意図的に邪魔はしたいだろうし。
"フィクゼイション"は敵に対してはそこまで強烈な効果が発揮できないから結果的に大きく抵抗されてしまうと。
だったら何か別の手は。ええとたれでもないこれでもないあれでもないこらでもな――
「お姉さんたち! 俺を使って!」
「え!?」「な!?」
その時船の中から飛び出して来たのはあの少年勇者グレンくんだった。
いやなんで彼が!?
そしてその光り輝く拳は何!?
「っえい!」
拳を前に突くとそこから黄金の光がきらめきながら放たれる。
私とゴウを包み込み何か力が流れ込んでくる。
"鷹目"で見てみると私達が輝くオーラを纏っているようだった。
「それで、少しの間だけ悪魔の力に打ち勝てるはずです! 勇者の力みたいです!」
「ほ、本当!?」
なんだかよくわからないがもしかしたらチャンスかもしれない。
あっ! 触腕がグレンくんの真上から!
ゴウもグレンくんすらまだ気づけていない。
「上! 逃げて!」
「な、わああああぁ!!」
だめだ! 戦闘に関してはてんで素人なのはさっき"観察"で見たとおりか。
驚いて身体を硬直させてさけんでいる。
ええいままよ!
飛び込みそのまま押し飛ばす。
すっとんだが私を見て驚いているあたり私の力で致命傷おったりはさすがにしていないな。
だが私の真上には触腕。
"止眼"! 時の感覚が現界まで引き伸ばされ全てが止まったかのよう。
触腕が私を叩きのめす時間で発動させられる魔法はひとつだけだ。
や、やりたくないけどやらんと私がバキバキにされるかもしれない!
空魔法……"インターラプトル"!
選択し発動準備。
"止眼"解除!
再び動き出す世界と共にノータイムで潰そうとしてくる触腕。
来る!
痛みが訪れるはずの瞬間に私の身体はどこかへとワープし消えた。
「お姉さーーーん!!」
グレンくんの悲痛な叫びが聴こえる。
無事だよーと答えてあげたいが本当にどこだここは。
少なくとも海の中に突き落としてはいない。
だが真っ暗だな……
ココは私の目に頼ろう。
獣の目は少したてば……この通り。
そして鼻でもなんとなくわかってはいたが室内か。
しかも上から振動に声が聴こえた位置も近い。
どうやら船内にいるらしい。
しかもここは少しだけある船の大砲場所じゃないか。
上の騒動で灯りがおかしくなっているのかそれとも点けていないのか。
ただここには濡れていない大砲の弾丸が積まれたまま。
この中の……あったあった。
臼砲の砲弾!
普通のとは違って時限式で爆発する危険なやつだ。
この世界の大砲の仕組みはまだ詳しくしらないがおそらく地球のものと似ているだろう。
ならば……まず1つの砲弾に触れて詠唱。
聖魔法"クリアウェザー"!
これで雨に濡れなくなった。