四十生目 氷魔 ヒヤフリーズ
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帰り道、私はディテクションをかけ直す。
今の効果時間は1時間程度維持できる。
……ん? おや?
「あの氷のようなふわふわしたやつは一体?」
「ああ、アレは氷魔だね。冬だけいる魔物で近くで魔法を使わなければおとなしいよ」
冬だけの魔物か……私よりも小さいくらいか。
[ヒヤフリーズLv.29]
[ヒヤフリーズ 氷が意思を持った存在だが思考能力はほぼ無い。寒くなれば自然発生し暖かくなると自然消滅する]
む、私より小さいものの強い。
そしてその氷はスライムみたいな無機質でとってつけたような顔をこちらへ向ける。
レーダーが黄色。
あ、これはマズイ。
「さっき、探索用魔法を使ってしまいました……」
「そう、みたいだね。構えて!」
ハート姉の声に合わせてパッと私たちは散らばる。
レーダーは氷は赤色。
敵対した!
相手は格上だ。
こちらは集団でも私以外は全員レベルが10代。
当たらせないように気を配らなくちゃ。
私はひたすら強化魔法を全体化してかける。
シールド!
「敵はかなり強いみたいです!」
魔感が私を中心に広がる力を捉える。
敵の魔法だ。
私はとっさに影避けで認識をずらし脱出。
その場にキラキラとした空気が発生した。
前足をツッコんで見る勇気は無いが近くにいるだけで刺すような冷たさを感じる。
対象を凍らせる魔法か。
「私が魔法を使って囮になる間に攻撃を!」
「任せろ!」
ヒートストロング!
フレイムエンチャント!
身体をあたためつつ筋力を強化、さらに攻撃時に炎を付与!
これで何とか打ち合えるはず。
インカたちが私と敵の直線上を避けつつガンガン爪を刺す。
「冷たっ!?」
「でもなんとか耐える!」
「わからない、効いているのか?」
確かに囲まれても変化がないし切ってもガリガリ氷が削れる音がするだけ。
不気味ですらあるが生命力ゲージはわずかずつ減っている。
私への冷凍魔法を避けつつ次の準備。
思考能力が殆どないから、私の魔法にひたすら反応しているだけだ。
ただ攻撃されたさいの自動カウンターとも言うべきか、氷魔の周りの氷が増えている。
盾にしているわけだ。
さらにインカたちの動きが悪くなってきている。
攻撃すればするほど纏う冷気が身体を蝕んでいるのだ。
「少しずつですが効いています!身体が冷えたら下がって温めてください!」
スタッドボーン!
単純過ぎるほどの敵だがそれゆえに強い。
氷の力は今の環境に合いすぎているというのもあった。
晴れた暑い所では冷えは溶かされるが雪がちらつく寒冷地では追加で凍えてくる。
レベルの高さも相まって恐ろしい。
……!
上空から落下してくる力の反応を感じて転がるように避ける。
痛ッ!
直撃は避けたがざっくりと後ろ足が斬れた!
上からつららのような氷が降ってきたのだ。
これも魔法か!
そこそこ高い位置から落とされたらしいつららは恐ろしい切れ味を誇っていた。
防御魔法を重ねているのに血が噴き出た。
痛さがそこまでじゃないのも恐ろしい。
斬れた所が冷たすぎて感覚が薄れたからだ。
ただ私はヒートストロングのお陰で凍る事は無かった。
ヒーリングで癒やしつつ次を警戒。
今度は直接凍らせる魔法!
次はつらら!
時間差で襲ってくる組み合わせはかなり恐ろしい。
「結構敵は削れてきています! 私のダメージは自力で治しますから攻撃に集中してください!」
「ムリはしないでね!」
ハートペアも既に私の方が強いのは組手で知っている。
だから任せてはくれるが単純に私の被弾が心配なのだろう。
こちらに気を使わせてもらっている分も攻撃に回してもらった。
フレイムボール!
相手との直線上相手はあいているため気にせず火の玉を放てる。
ガンガン何度もぶつければ流石に相手も生命力ゲージが半分を切った。
かなり強いが後は押し切るだけだ。
火の玉をぶつけ、インカたちが炎で切り、補助魔法を使って囮になる。
繰り返し繰り返しの作業だが気が抜けない。
つららを避けて……なに!?
前後左右同時に四箇所囲むように力が……!?
私を仕留めに来たか。
思考能力は弱い、単純な囲い込みだ。
影避けで避けるがこれだけだと距離が足りない。
尾は引っかかるが贅沢は言えない。
被弾覚悟で包囲網に突っ込みつつ避ける。
ッ……!!
恐ろしい冷えが尻尾を支配した。
感覚が、痛みすら警告が来ないのが恐ろしい。
急にその部位の感覚が麻痺するのは想像以上に冷気が強いらしい。
けれど次はつらら。
これなら駆ければ。
!?
踏み込みがズレた、しまった尻尾のバランスとりが消えたせいか!
間に合えッ!
落ちてくる大きなつらら。
そして私は必死に跳んだ。
TIPS:
寒い所ほど……:
様々な環境の変化で自然にその属性の魔物が発生するよ。
寒い所ほど強力な氷のちからを持つ魔物が発生して危険なんだ。