四百十八生目 勇者
航海3日目。
ココで変わったトラブルが発生した。
「密航者が見つかったので、どうしようかと」
「「密航者!?」」
早速その場所に私やゴウたちが向かうと確かに見慣れない人がイスに座らされていた。
左右に屈強な船乗りがいるものの暴れていないからか拘束されていない。
というより……
「こ、子ども」
明らかに年端もいかない子どもだった。
その少年は見た目は10行くか行かないか程度。
明らかに何か大きな考えがあって潜り込んだというよりかくれんぼしていたら運ばれてしまった感じが拭えない。
そりゃ拘束しないわな。
自然な金髪でバローくんやダカシよりも勇ましさを感じる目の雰囲気と普通の明らかに親が用意したような子ども服がどこかミスマッチ。
それにどこかで見たような……?
「あっ……?」
少年が私を見て驚きの声を上げる。
ちなみに今はノーマルの姿。
四足のケンハリマだね。
そりゃあ魔物が普通にいたらびっくりするわな。
「どこにいたんだい?」
「我々が見つけた時は、食料庫に。もちろん何度もチェックはしていましたから割と大胆に移動を繰り返していたようです」
オウカの問いに船員が答える。
なかなか潜入のやりてだったらしい。
私は船員の動きがどうで全員が何人かまでは知らなかったから光魔法"ディテクション"を展開していてもわからなかった。
「なるほど……ところでキミ」
「は、はい!」
「悪いがこの船は危険な場所へ赴く……ああ、危ない所に、行くってことだね。だから、理由は知らないがこれから帰すよ」
「え!? そ、それは!」
オウカの言うことはもっともで何やら少年は慌てているがまさか目的があってわざと入り込んだのかな?
だけれども……
「いつものように魔法でビュンと飛ばしてあげられるかい?」
「街まで帰ったら家はわかるかな? すぐに戻してあげるからね」
「そ、その!」
オウカに頼まれて空魔法"ファストトラベル"を準備する。
強化しなくては私ごと飛んで帰ってこられなくなるから注意。
船で移動しているから海の上だなんてそう特徴的なものも見つけられていないから直接は帰ってこられないのだ。
「待ってください! 俺この船が魔王を復活させようとするやつらのところへ向かうって知っています! 知って乗り込んだんです!」
「おや……?」
話にくわわっていなかったゴウが興味を示した。
それもそうか。
今私もかなり驚いた。
「おい坊主、どうしてそれを知ってこんな危険な船へ?」
「ええ、そもそも船の出港自体かなり隠していたものですから」
「あの……自分で言うのもすごく恥ずかしいんだけれど……俺、……なんです」
うん?
私ですらゴニョゴニョとしか聞き取れないくらい発音が潰れていた。
全員が良く聞き取ろうと耳を近づける。
「なんだって?」
「俺……しゃなんです」
「しゃ……?」
さらに寄る。
すると今度は少年が私に詰め寄り大きく息を取り込んだ。
「ゆうしゃ……なんです……!」
それでも恥ずかしさのフィルターでだいぶ声量がカットされ大半が漏れ出る息となる。
ただ今度ははっきりと聴こえた。
「ゆうしゃ……? って勇者?」
「おいおい坊主、さすがにそれは冗談がすぎるぜ」
「あの時しっぽで遊んでくれたお姉さん、信じて!」
ダンが頭をかきながら半笑いだが私は別の奇妙な感覚に襲われていた。
しっぽで遊んだ……?
よくよく思い出せば半年以内程度にそのようなことはあった気がするが……
「……でも、あの時遊んだ子はまだ5歳にも満たないような……それに今の姿と違うし……」
「ああ、そうだった! その時はまだ小さかった。お姉さんが姿変わるのは、この船で潜んでいたからわかったことで。それと年齢は……勇者としての能力のひとつみたいで、力をつけると一気に成長するんです」
うーんどういったことだろうか。
どこまで本当なのかまったくわからん。
嘘を言っているにおいはしないのが変だ。
「どうも嘘っぽいな……」
「でも嘘ついているにおいはしないんですよね」
「においでわかるの? ……私大丈夫かな」
オウカは大丈夫なので安心してもらいたい。
それよりも少年だ。
「あ、そうだ、誰か能力で相手を看破するもの、ありませんか? それなら多分わかります」
みなが周りを見渡す。
ということはそのスキル持ちがいないということ。
私を除いては。
軽く手を上げれば注目が集まる。
やるしかないか……"観察"!
[勇者のヒュレイLv.10 比較:かなり弱い]
[ヒュレイ 個体名:グレン
普通の人またはそのトランス体に見えるがその実特別な力を持つもののみがなれる。さらにこの先特別な道を歩み続けるだろう者で祝福された身]
[勇者 魔王の天敵たる存在であり人間が生み出した特別な存在。何があってもけして諦めない心を持つ]
「フゥッ!?」
思わず噴き出したが仕方ないじゃないか!
まさかまさかのだよ!