四百十六生目 相談
こんにちは私です。
先日ついに兜を外したオウカに一緒に大陸に来てほしいと頼まれた。
まあすぐに、
「ああ返事は後日で! もう今日は疲れたから帰ろう帰ろう」
と言って兜をかぶりなおしたが。
なぜか周囲のゴウとダンが兜を外した事自体にひどく驚いていたけれど。
そんなにあの兜外さないのかしら。
まあ見た目素朴なお婆さんに切り傷火傷それに何か呪いめいた皮膚が浮き出るような傷跡もあるのだから外したがらないかもしれない。
あれが長年戦い続けてきたということなのだろう。
しかもちゃんとした手当を受けられることは冒険先では少ないだろう。
それが跡としてちょっとずつ積み重ねられたと。
(それだけじゃないな。あれは心に負った傷が肉体にも影響を及ぼしているみたいだ)
なるほど……ドライが言うには心の傷か。
過去の戦いでああやって騎士たちみたいに多くの死を見届けてきたのだろうか。
厳しそうだ。
それはともかく。
「どうしようか……返事」
なんて返せばいいのやら。
正直魔王復活秘密結社のカエリラスがここまでデカイことしでかすとはおもってはいなかった。
もはや散々敵対はしていたが今まではもっと裏で動く感じだったからね。
もはやなるべく関わり合いになりたくないが今までと言い暗殺者の件と言い安全地帯がどこまで確保しきれるか怪しい。
近くの火の手を放置しておけばこちらに燃え移るのも近いだろう。
それに……国を落とすほどに魔王を蘇らせることに本気なのならば。
魔王が復活すれば是が非でも私たちに関わってくる話になるだろう。
そう直感している。
何せ魔物の王だしなぁ……
こういう時は……そうだな。
「かくかくしかじかってわけなんだ」
「ほーん」
イタ吉に相談してみた。
もっと相手はいた気がするがなんかイタ吉にたどり着いていてまあいいかなって。
ちょっと話してみて整理できたしね。
「良いんじゃないか? メンバー組んで行っちゃえば」
「まあイタ吉ならなんとなくそう言うだろうなとは思っていたけれど……一応聞くけどなんで?」
イタ吉は上の方をみながら軽く唸る。
今考えているなこやつ。
「そうだなぁ、あえて言うなら冒険だからかな。海をこえてでっかい場所まで行くんだろう? 難しいことはともかく、楽しめば良いさ!」
「簡単に言ってくれるね……」
思わず苦笑い。
重大な任を持って現地に行くことになるだろうから遊びにはいけないだろう。
でもまあ。
「うん、そうだね。そのぐらいの気分のほうが良いのかも」
「まあ、あとお前は魔法でいつでも帰ってこれっしな!」
確かに空魔法"ファストトラベル"があるかないかは大きく違うね。
いつでもとはいかないけれど帰れるからね。
ニンゲンの街で私はふたたびオウカと出会った。
冒険者ギルド裏手の客室でオウカに承諾の返事をしていた。
「正式にその仕事、受けさせてもらいます」
「そう言ってもらえるとこちらも嬉しいよ。何、冒険者たちに求められるのは国との戦争じゃないしね」
色々と契約の紙を読んだが今回の依頼は正式にはこうだ。
国による動きに先行して大陸へ進入。
現状を調査してそれを報告するものだ。
問題があるとすれば明らかにそれ以上を求められていることが……
そのことについて言ったらやはりオウカもそう考えているらしい。
「まあ明らかに調査以上の……そうそれこそ実際にぶつかって見てもらいたいというのが見え透いているよね」
「やっぱりそうなんですか」
「実際乗り込んで無事で済むとは思えないしね……それに大帝国を落とした相手。正面から軍を動かして潰すというのは困難だろうからね。数で勝てる相手ならばまず帝国が勝っている」
それもそうか。
大事に構えて先日みたいな暗殺者のような者たちが大量に攻めてきたら元も子もないだろう。
こっちの国も占領されておしまいだ。
「多分時間をかけて勢力調査したあとに、各国ほぼ同時に仕掛ける……ってあたりの事を考えているのでしょうかね?」
「多分ね。もし本当に魔王を復活させられたらこの世界は窮地に陥る。相手が頭のおかしいテロリスト程度の認識の者がいたら直ぐに正させたほうが良いからね」
そう。和平の道がないだろうと考えられている最大の要因は魔王に関してだ。
少なくともニンゲンたちは歴史書からも魔王そのものの存在が人類を脅かすと考えている。
少なくとも復活させる側のやつらは高い悪意を持って今までも生物をおびやかし続けている。
「とりあえず、こっちの準備が済み次第出立するつもりだよ。そっちも精鋭用意してくれるんだっけ」
「ええ。生きて帰れるメンバーを選んで行きます」
こうして私たちは後手後手から攻めに転じるために海を渡ることにした。