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その能力は無敵! ~けもっ娘異世界転生サバイバル~  作者: チル
そして迎えるは春か破滅か
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四百十五生目 血塗

「うっ、ぐあううあっ」


 暗殺者は胸に刺さった矢を無理矢理引き抜くが全身にうまく力が入らないらしくて立てないでいる。

 悪魔の目が白く濁って苦しげにうごめいていた。


「オウカさん」

「ああ」


 オウカがゴウに頷き光の刃を下に向ける。

 切っ先には悪魔の目。


「話が違う……! 無敵の力ではないのか……!」

「その話は後でたっぷりと、ね!」


 悪魔の目が貫かれる。

 それと同時に暗殺者が絶叫。

 だが暗殺者以外にも混じって何かニンゲンではない雄叫びが響いた。


 切っ先が身体から引き抜かれると悪魔の目が摘出される。

 そのまま白く光り輝いて悪魔の目は砕け散った。

 暗殺者は……気を失っているようだ。


 おぞましく変化していた肉体もすっかり元へと戻る。

 ただ悪魔の目が埋まっていたはずの場所にぽっかりと穴が空いていた。


「まったくえらく強かったぜ……」

「ほんと、みんなが揃っていなかったら――」


 ゴゴゴゴゴ……!

 廊下の方からした音にみな見に行ったら階段のあった天井が落ちていた。

 さらに部屋の一部が崩れだしている。


「うわ」

「マズイですね」

「私が担いで行くから早く逃げるよ!」

「脱出路は……こっちか!」


 地下室が度重なる攻撃についに耐えきれずに壊れだした!

 まあみるも無残で何回か爆発的なこともしたしね……

 よくぞ今まで耐えてくれたともいえる。


 オウカが暗殺者をふん縛って背負いダンが隠してあった脱出路を開く。

 そのまま急いで地下室を後にした。






「まさかこんな所に出口があるとは……」


 私たちは国の冒険者ギルドの事務部屋にいた。

 動かないはずの壁が歯車仕掛けで動き今また閉まっていく。

 あれはこっち側になんの仕掛けもないからこっちから開くのは無理そうだ。


「まあ、まさか! って場所にあるのが秘密通路だからね」


 オウカの言うとおりでもある。

 もちろん他言無用らしい。

 ちなみに暗殺者にはこっそり"無敵""ヒーリング"重ねがけをしておいた。


 これで素直に裏事情をはいてくれるとは思わないが少しはマシだろう。


「あー、疲れた疲れた……」

「あんな狭い場所ではもう戦いたくないですね……」


 ダンが肩をまわしゴウが傷口をそっと触る。

 オウカは早速ノビている暗殺者をそこにいた冒険者事務に連絡して衛兵たちを呼び引き渡した。

 あの地下室崩れたからしばらくは使えないだろうな……


 その後は地上で何があったのかを確認。

 まず脱出した者たちは無事だった。

 商人ギルドのおえらいさんは泣いていた。


 だが無事ではないものたちもいる。


「これはひでぇな……」

「精鋭の騎士たちが鎧袖一触(がいしゅういっしょく)か」

「奇襲もさることながら猛毒も厄介だったのでしょうね」


 ゴウが鎧の頭装備を外して顔を拝むと泡をふきだしがら絶命していた。

 暗殺者らしく大半は隠れていたようで建物の外を巡回している衛兵なんかは被害がなかったが。

 進入するための唯一ある地下への道前に配置されていた精鋭騎士たち。


 さらに階段でもしもの時に走って重要人物たちに知らせ逃がす役割の精鋭含め12人。

 血塗れの中に沈んでいた。

 もはや時間もたっていて私の聖魔法"リターンライフ"では蘇りはしなかった。


「キミ、本当に報告書にもあった通り蘇生術も出来るんだね……」

「ただ、今回はお役にたてそうも無くて」


 なんだか呆れ気味にオウカに言われたがなんでだろうか。

 それはともかくとして彼らは後日丁重に葬られるそうだ。


「私じゃない、専門の方で蘇生をさせたりは?」

「彼らは変えが利かない大事なひとつひとつの命だ。……それと同時に国としてはさすがにキミのような"リターンライフ"で蘇らない者たちを生き返らせる儀式はあまりに重くて……ただ遺族が手元の資金でなんとか生き返らせるかも知れないが、蘇る確率も低かろう」

「もはや神業の類ですからね。感情面はともかく騎士ひとりひとりにそれを施すのは国としては難しいと言わざるをえないでしょう」

「そうなのですか……」

「まあ、騎士っていうのは死ぬのも仕事のひとつに組み込まれているようなものだ。せめて安らかに眠れるように祈っていようぜ」


 なんというかダンに肩を軽く叩かれて初めて気づいて自分で驚いた。

 彼らの命を救えなかったのに落ち込んでいることを。

 もしかして今までも少しずつ拾えきれなかった命がこぼれるたびにこんな想いを外に見せていたのだろうか。


 命を左右出来ると思いこんでいるのは傲慢だ。

 それでもやはりまだ自分の無力さを痛感する。

 何かを食べて物を作って多くの命を散らす以上偽善的でしか無いとは思ってもそう感じずにはいられない。


「さて、話の途中だったね。改めて……」


 オウカが兜を取り軽く首を振る。

 殴れていた髪が揺れ顔が顕になった。

 その顔は……長年の戦いの傷跡が生々しく残るひどく年老いたお婆さんだった。


「私と共に大陸へ赴いてくれるかい?」

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