四百十三生目 連携
「気をつけて! 武器に毒が!」
「なるほどね!」
激しい金属と甲高い音が鳴るものがぶつかり合う音が鳴り響く。
光の剣だろう。
ううっ急激に気持ち悪くなってきた。
全身に力が入らず座り込む。
脚を切った仕込みナイフに猛毒が含まれているのにすぐ気づけたのはいいが……
向こうは1撃当てれば全身に力が入らなくなって勝ちというわけか。
私は"猛毒の花"で毒耐性があるにもかかわらずかなり厄介だ。
だけど……光魔法"アンチポイズン"強化発動!
筋弛緩剤のような毒へ強力に働きかけるように唱えた。
スッと楽になる。
さらに範囲化してこの場で敵の暗殺者以外に唱えた。
これで少しの間は耐性が出来る。
「毒耐性入れました!」
「ありがとう!」
「よし、今度は俺が前に出るぜ!」
暗殺者が室内用の細剣にいつの間にか切り替えていた。
細剣は鎧をまとうオウカでは不利。
毒をおそれてあまり前にでられなかったダンが殴り込む。
目にも止まらぬ早さで細剣からリボルバー銃へ切り替え2発ダンに撃ち込んでから私の方に向けた!
「わっ!」
ダンへの2発は構えていたためにかする程度で済む。
私の方への弾丸が飛んでくるが床に当たりなんとか避けた。
多分銃弾にも毒があるから"アンチポイズン"は大事。
「ちょこまかと!」
弓のゴウはあちこちに味方がいて明らかにやりづらそうだ。
だがスキをついては正確に撃ち込んでいくからかなりの腕前だしそれを避けたり仕込みナイフのある手甲で弾くあたり暗殺者もかなりの慣れ。
"観察"……したがダメか弾かれる。
"観察"を強化するためのメガネを取り出したいが今はそれに手をさくのも惜しい。
まずは空魔法"フィクゼイション"で空間ごと剣ゼロエネミーを抑えて念力のように振るう!
相手は明らかに多対1に慣れている。
じわじわとこちら側が押されているのもその証拠。
狭い場所なため囲んで叩くこともできず派手で強い大技は地下室のここでは危険すぎる。
燃やしたりしたら酸素消失するためもっての他。
ゴウは特に大弓も出せないしね。
逆にダンはかなりやりやすそうだ。
獲物はグローブで己の拳。
さっきから暗殺者と互いに傷をつけあいながらだいたい互角に殴り合っていてる。
拳が壁に当たれば凹んで壊れ踏み込むごとに床がズレてきているがまだマシ。
そしてオウカはというと。
「ムムム……下手に武技が使えないからあまり攻め込めない」
「間違って使ったらあたり一帯吹き飛ぶものが多いんですから、やめてくださいよ!」
「わかっているよ!」
オウカがゴウにそう言って基本的な剣技術や武技で守りに徹していてる。
なるほど暗殺者がわざわざこういう場所を狙うのも理由があったわけね。
そしてさらにリボルバーの銃弾が放たれゴウに当たるが頑丈さか着込んでいたのか両方かそこそこ痛がる程度で致命的なダメージではなさそうだ。
さらに今のでリボルバーの残弾が切れたらしくダンの拳とオウカの剣それに私の剣ゼロエネミーを身軽に回避して距離をとり弾丸を取り替え始めた。
味方全員にチャンスだという思考が走る。
即興の連携。
ゴウが低威力の矢を連射し踊るように避けながら弾をこめようとするところにオウカが両手で光の剣を思いっきり横薙ぎ。
光が伸びて壁を斬り裂く。
暗殺者は壁を駆け上がってなんとか回避。
私が言うのもアレだがニンゲン離れシているな!
だが壁を切り裂いたところから光が溢れ爆発が起こる。
爆発で吹き飛び暗殺者は上空に身を投げ出される。
行け! 剣ゼロエネミー!
念力のように動かして直線状にし大きく土魔力を解放させて光をまとう。
そのまま縦に大きくスラッシュ!
とっさに身を防いだ暗殺者の上から力いっぱい斬り裂かれ土魔力の爆発で煙が舞う。
そこを地面スレスレから煙をかきわけ暗殺者が飛び出す。
「らあっ!!」
ダンが横からタックルをかましてかっ飛ばす。
暗殺者はくの字に曲がりながら壁に叩きつけられた!
「シッ!」
ゴウが力のこもった1撃を放つ。
光がまたたき煙の向こう側へ容赦なく追撃された。
みんなの肩で息する音だけが聴こえる。
「はぁ、はぁ、強いな……」
「これ以上やったら私達より部屋が崩れるよ」
オウカの指摘どおり部屋はすでにズタボロ。
私達の怪我や即席でのコンビネーションによる気まわしによる疲労も大きい。
地下室だから崩れる可能性が出てきている。
魔法とりあえず準備を。
煙の向こうで何らかの音がする。
やがてゆらりと影がうごめき煙がはれる。
暗殺者はあれほどの打撃を受けたのに銃弾をこめ終えた。
だが装備の方はついていけれずにいくつも剥がれ落ちる。
影のような衣は大きく裂け手甲や着込んでいた軽鎧が割れ落ちた。
「うっ!?」
「あれは!」
そして胸元から覗くものは黒く染まった目。
悪魔の瞳だった。