四百十二生目 暗殺
魔王復活秘密結社。
彼らは自らをカエリラスと自称した。
場はどよめきざわつきはおさまらない。
「なんと……」「魔王復活秘密結社がこんなところで……」「カエリラス……なんて恐ろしい響き」「ヤバイぞあの国との取引が途絶えたら……!」
「みなさん! とりあえず話し合いはあとで」
壇上のオウカの言葉により再び注目がオウカに集まる。
オウカは手元の資料の続きを読んだ。
「まず今見せている似顔絵、一部の方はご存知だろうけど魔王復活秘密結社の重要参考人として指名手配をかけている男」
カムラさんの顔の元……魔王復活秘密結社カエリラスに所属している例の男だ。
死霊術師ウロスさんの初弟子でもある。
前に出会った時にひとこと言っていたが今回のことを行う宣言だったのか。
「彼が自身の顔と共に大きく今回の事を宣伝した。わざと各国へ見せつけるようにね。名は不明だが『願望者』と名乗っているそうだ」
願望者か……
国落とししてまで何をやりたいというのだろうか。
「魔王復活秘密結社がひとつの巨大な国を落としたというのは重要な出来事だ。世に混乱をもたらしかねない」
「なるほど、だからまずは重要人物だけ集めての情報伝達、そこから徐々に下へと浸透させるわけですな」
「このような話し合いが各地で行われている、というわけですね」
その場に居た人たちが次々言うことにオウカは頷く。
パニックは確かにおきかねないものな。
もしかしたら次はこっちかもしれないという恐怖もある。
「ここのみんなでもこの調子だ。国の重要部分を担うものたちがまず落ち着いて
、多くの民衆たちの不安をおさめる必要がある。今から持ち出し不可の資料を配るから、各々目を通したあとに回収させてもらう」
その後詳しい話を資料に目を通してチェックする。
さらに発言権のあるいかにもえらそうな人たちが互いに話し合って意見をすり合わせ今後の動きを決めた。
まあちょくちょく私や発言権がないはずのダンも言葉を交わしたが……
あっという間に重要な事が次々決まって行きもはや1秒すら惜しいと言った様子で素早く終わりを迎えた。
特に商人ギルドのおえらいさん。
見た目の恰幅さに似合わない素早い身のこなしで飛び出ていった。
「今日は急の呼び出しすまなかったね」
「いえ、こっちにも関係がありますからね」
「それで実は――」
人々が去ろうとする中オウカが私にねぎらいの他に何か語りかけようとして……
悲鳴が響いた。
「うわあああああ!!」
「なんだ!?」
「全員、戦闘可能な者は準備! それ以外のものは脱出を!」
オウカが素早く指示を飛ばし私も空魔法"ストレージ"で亜空間から剣ゼロエネミーを取り出し扉から飛び出す。
慌てて全力疾走でのぼりの階段を転げるように降りてくる商人ギルドのお偉いさん。
血相を変えているから明らかにただごとじゃない。
「く、くる! 早く逃げるんだ!」
「来るって一体……」
その続きを言おうとして結界内に侵入したソレを感知した。
結界が多重にはられていたからこそ気づくのが遅れたのもあるし階段の向こう側に見えたその身のこなしは明らかに常人ではない。
全身を黒いボロ布にも見える高い魔力のこもった服装で身を包み足音ひとつすらたてず歩いている。
私の耳でもほとんど拾えないとなるともはやスキルや服の特別な力だとしか思えない。
それはまるで死神が浮遊しながらやってくるかの如く現実感をそこから失わせていた。
ただひとつ彼に付着した血による死臭以外は。
「あ、あいつ、騎士たちを……!」
「あれは……ヤバイな」
「私がいると知って真正面から来るようなやつだからな……」
ダンが拳を構えオウカが光の刃を生み出す。
ゴウは狭い室内用の短い弓をつがえ今すぐにでも放てそうだ。
暗殺者らしき相手とにらみ合いになる。
その間にも商人ギルドのお偉いさんが走って離れようとして腰が抜けたのかそのまま倒れ込んでしまう。
その時暗殺者の殺気が私達から商人ギルドのお偉いさんに移ったのがなんとなくわかった。
1番近い私が飛び込む。
矢が放たれるがすでにそこに暗殺者はいない。
階段を飛び降りた!
そのまま商人ギルドのお偉いさんへ。
させるか!
剣ゼロエネミーを大盾モードに変化!
暗殺者のナイフが大盾に衝突して――
な!?
大盾を蹴り上げて回避した!?
そのまま背後にまずい!
「やああ!」
闇雲に後ろ蹴り。
仕込みナイフが少し脚を斬り裂くが暗殺者は避けるために背後に跳ぶ。
いてて、よし。
「こっちだ!」
オウカが光の刃を両手に持ち剣のように振るう。
暗殺者の身体がブレたかと思うと剣の位置から逃れ仕込みナイフのあった右手とは逆位置からリボルバー銃で撃ち込む。
オウカは鎧で受けて弾き追撃した。
よしあっちでなんとかバトルしだした。
いてて……
「大丈夫でしたか、今の内に脱出を」
「え、ええ、ありがとう……!」
商人ギルドの人が喧騒の隙間からこっそりと脱出専用経路へと抜けていく。
いてて……こ、この中にじわじわ長引く感じは。
毒か!?