四百十生目 黒幕
写真は日常的に貸し借りされていてその数は膨大。
なので覚えていないという結果だった。
捜査はふりだしに戻る。
アテといえばサイクロプスリーダーだ。
鉄塊を加工していたし他にも多くの加工を手伝っていただろう。
ただ彼はそこそこ問題がある。
というわけで会いにきて事情を話したわけだが……
「うーん……わからん。魔物だと言うのはわかるが」
「やっぱりかあ」
これである。
サイクロプスリーダーは10m近くある巨躯の単眼人形象。
私みたいに直接対峙した相手ならともかく大抵の魔物は裸眼でアリの違いを見分けるようなもの。
さらに大量の魔物たちから依頼を受けているしサイクロプスたちの誰かが受けたものをみんなでこなしていくスタイルだからかなりさっぱりわからないことが多い。
「うーん……あの像を作るように言ったの、本当に誰なんだろう」
関わる者が多くてもそれがかえって元凶が誰なのかわからなくしている。
その時ふと作業していたサイクロプスのひとりに目が合った。
「あ、あの……それなら多分だけれど、わかりますよ」
「本当!?」
「ボクが初めて依頼を受けた相手なので……」
まさかまさかの。
話は急速に解決することとなる。
アノニマルースの兵宿舎。
そこで私は複数の魔物兵士たちと向き合っていた。
そうこの騒動の原因は……
「まさか、あの時助けたキミたちが……」
「はい! 助かって、あの姿に感銘したのです」
「「ありがとう!!」」
……ものすごい笑顔でそう言われたら怒るに怒れない。
彼らは街の防壁が最も薄いところで霊獣ポロニアとの戦いで必死に耐えてくれていた魔物たちだ。
私がロゼハリーの姿で駆けつけてあたりをなぎ払いなんとか解決した。
あの私の"進化"姿4つがお披露目された時にやたらロゼハリーだけ魔物が多いわけだ。
本命を見に兵宿舎から兵たちが鎧を着ずにわらわらと見に来ていたのだ。
私は戦場をかけるさいはロゼハリーだったから当然戦いにでてた魔物は多く知っているだろう。
その兵から聞いた周りの魔物たちもロゼハリーのことを詳しく教えて貰えた。
そういう構図だったのだ。
特に意識していなかったから兵たちが多いとは思っていなかった。
みんな普段は練習用の武装しているイメージも強かったしね。
「……まあ、今回はもう仕方ないけれど、次からはちゃんと当事者に許可もらってね」
「許可……ですか?」
「いやがる相手もいるからね」
「「はーい!」」
やれやれというやつだ……
肖像権概念はまだ難易度高いだろうからなあ。
近々開く予定の教育の場ではどうしようか。
こうして私の像騒動は幕を閉じた。
〜視点変更〜
「あ、ジャグナーさんおつかれさまです!」
「おお、お前らか。ローズの像立派だったな」
「ええ、おかげさまです!」
「アドバイスとかお金とか、それにこういうの作ったらいいんじゃないかって教えてくれたから出来ました!」
「なあに、俺もニンゲンたちからたまたま聴いたことがあるだけだよ。ニンゲンたちは武勇を残せば像に残して永遠と祀り、神格化させるだったかな……? まあ言っている意味は半分しかわからなかったがな、ガハハハ!」
〜視点ローズオーラー〜
こんばんは。本を読む速度はなかなか自慢がある私です。
"言語学者"の力で高速に思考を働かせて"観察"と併用することで通常範囲を大きく越えて本を読める。
他人から見たらパラパラめくっているようにしか見えないだろう。
でもちゃんと読んでいるのよ。
今見終わった5大陸と5大竜の話もなかなか興味深かった。
かなり形があやふやながらちゃんと端から端まで繋がっている世界地図もある。
まずこの世界には5つの大陸が存在している。
島国はたくさんあって私のいる位置もかなり大きな島国。
一般的にシオウ皇国と呼ばれている。
このシオウ皇国は世界で1番大きな大陸にやや食い込む形で存在している。
簡単に言うと大小に割れたビスケット。
多分大昔の地割れとかで細かく別れたのだろう。
そしてその食い込んだ外側にあるのが隣国。
一般的にユラナミア帝国と称される。
大陸国家らしくかなり大きいそうだ。
さらに遥か遠くにある4つの大陸。
それぞれの大陸には祀られているとてつもなく強大なそれこそ神さまみたいに畏れられる竜がいる。
大陸を護るとも言うが大陸を汚せばそこに住むニンゲンにも容赦しない……と語られているとか。
1番巨大な大陸にいる蒼竜。
記録上最も活動記録がある朱竜。
活動記録自体は少ないが最も自然信仰の対象にされている翠竜。
勇者伝説の中で剣の材料に尾を貸したという金竜。
そして比較的最近代替わりしたらしい銀竜。
銀竜は噂程度の伝承だと当代が隕石から星の破滅を救ったらしくそれで代が変わったとか。
そのぐらいの力があるニンゲンにとって畏怖の対象でありながら頭を悩ませる原因のようだ。
何せニンゲンを指先ひとつで国ごと滅ぼせるみたいなこと書いてあるからね。
しかも機嫌の取り方もよくわからないみたいだから大変だなあ……