四百九生目 石像
「ただ、ぽんぽんぺいんする可能性があっても、気に入ってくれると思うよ」
「ぽん……よくわからんが、まあ、匂いは良いな……」
アイスを前にかたまる20の魔物たち。
さてみんなが未知の前にジレるのはわかる。
だから……いただこうか。
「いっただっきまーす」
ペロリとひとくち。
本来はスプーンを使うべきだろうけれどここではみんな魔物。
ワイルドに舐める。
ううーん!
冷たい! 口内に広がる牛乳のかおり!
前世ぶりかもしれないし前世でどれだけ食べたか記憶はないんだけれどね。
少なくとも今世で初。
冬で食べるあったかい環境でのアイスは最高だ。
ゴロゴロしたいね。
「あ! お、俺も!」
「食べるか!」
イタ吉が慌てだしインカは大丈夫そうだと口をつける。
他の魔物たちもおもいおもいに食べだした。
「うわっ! 冷たい!」
「でもうまーい! ナニコレ!」
口々に叫んだところで喜びに尾が舞いながらアイスにガッつく。
そして冷たくて悶える。
適当な食べ方というのを知らないから苦戦しつつ楽しそうだ。
血とあたたかい食事ならば良く味わうがまったく新しい冷たい食事に喜んでもらえてなによりだ。
そして叫びを聞きつけてさらに魔物たちが寄ってきた。
また作ることになりそうだ……材料足りるかな。
「おかわり!」
「はいはい、食べたいひとは手伝ってねー!」
その後たくさん消費されたアイスクリーム。
それと比例するようにお腹に雷が落ちた魔物たちがたくさん出たという……
なおそれでもペダルが踏まれない日はなかったが。
こんにちは。アノニマルース内で今私は中々凄い顔をしています。
こう。ジト目というやつかな。
思わずこういう顔になっていた。
「いつの間に私の像が……?」
先日に龍脈水車で鉄塊が打ち鍛えられていたのを覚えていただろうか?
私は忘れていた。
それが今大きく変貌して私の"進化"した姿の像がつくられていた。
最終的に錆びにくいような合金やらいっそのこと石を削り出したりとものにより色々変わっているようだが。
4箇所に今日いつの間にか配置されていた。
私は外部のこと中心だからアノニマルース内でもろもろ変わることが多くても後で知るのはよくあるが……
サイズは本物のだいたい同等。
デカイな……
今私が騒ぎを聞きつけ最後に見に来たのはロゼハリーの像だ。
首から白い茨を生やし猛毒の花を咲かせる超攻撃形態。
それが勇ましく構えている。
なんというか……補正5割くらい入っていそう。
「主、これは立派ですね!」
「すごいなー」「かっこいー」「あの時のだ」「みんなを守ってくれた時の……」
いつの間にかアヅキが隣にいたがアヅキはどうやら像のことは知らなかったらしい。
ただ周りの魔物たちとおなじく台座に配置されたそれを目を輝かせて眺めている。
それにしても周りから聴こえる声……
あの霊獣ポロニアと戦った時の姿知っている魔物多いな……
あちらこちらからその声が聴こえる。
防衛にでていた魔物たちから聞いたのかな。
「なんというか……めちゃくちゃ恥ずかしい」
「主の功績からすれば、この程度当然ですよ。誰の考案なのでしょうか?」
「わからない……」
ぶっちゃけアヅキが1番やりそうだとはおもったからなあ。
4体の中で1番ロゼハリー像が人気らしくてとにかく魔物たちが多い。
この像がただ魔物たちの力だけで出来るとは思えない……
そう。
私の姿を見ながら作る必要もあるし細かい技術もいる。
具体的に言うとニンゲンの技術。
"進化"した姿の撮影ならばひとり心当たりがある。
「写し絵? また撮らせてくれるのかい!?」
「いえ、そうではないのですが」
「残念……」
この残念がっているのは鍛治師のカンタだ。
本人は魔物愛好家が自称職業らしいが。
時は少し遡る。
実は先日鍛冶仕事の継続依頼をしにいった時に、
「それはもちろん良いが……受けるには費用と材料以外に条件がある」
「というと?」
「このアノニマルースには、写し絵の箱があると聞いてね、ぜひそれで、ローズさんの姿いろいろ撮らせてくださいッ!」
と食い気味にものすごい速度で頭を下げて言われ。
まあ減るものでもないしと"進化"後の姿含めて撮ってもらった。
撮影後にフィルムが減る事に気づいた。
そして時は戻る。
今その写真のその後を尋ねに来たのだ。
「誰かに写真を売ったり渡したりしました?」
「してないですよ! ただ……見せてくれと言われて貸したりはしたかな」
「それは誰に!?」
「ええとだな……」
もしかしたらその相手かもしれない!
だがそのあとの言葉を聞き私はうなだれた。
「めっちゃくちゃいる。何十もの魔物たちに貸したよ」
「えええ!?」
……捜査は早速暗礁にのりあげようとしていた。