四百七生目 絶叫
「が……アアアアアッ!!」
氷塊に『喰われ』たのにもかかわらず炎の魔力を爆発させ吹き飛ばした!
氷塊以上の力を。そして自身の身体がそれにより傷んでも自爆覚悟で決める。
何という力だ。
「……主の言ったとおりになりましたね」
「だよね」
私はそっと剣を赤龍の大きな顔に剣を向ける。
"無敵"を合わせた敵愾心を削るオーラを放つ。
「最後の、ひと押し」
「ワタシに爪を向けるなあ! ああぁ……?」
赤龍は叫ぼうとしてまさにヘロヘロと倒れ込む。
長い身体が浮かぼうとしていたのにまた地面へと落ちた。
派手な着地音があたりに響く。
赤龍が慌てて周囲に目を張り巡らせて思考をめぐらせる。
まさかという顔に私はやはりなと理解した。
「ワタシは、何秒、いや、何分、気を失っていた……!!」
「もっとだよ」
あたりに広がるのは赤い燃え上がるような血の色。
それが凍りついていた。
赤龍は1時間ほど気を奪われて出血してしかも攻撃を使いまくっていたからか行動力がガス欠に。
「俺がお前のエネルギーを奪う間の時間はあったな」
それと"ヒーリング"と"無敵"の組み合わせを与えたのと剣ゼロエネミーでひたすら敵愾心削りしていた。
アヅキの風の魔法で相手のエネルギーをうばうことも出来たので残りそんなになかったらしい。
とは言え総量がとんでもなかったらしくあと10分はあのめちゃくちゃで戦えただろうが。
抵抗され吸いきれなかった行動力がさっきの爆発に使い切った。
気絶に関しては竜はたいてい気絶抵抗があるものの絶対ではないということ。
抵抗の上からアヅキは風で私は魔法で殴ったし"正気落とし"を魔法に組み合わせたからね。
"正気落とし"魔法バージョンは初めてやったけれどあんがい応用が効いた。
まあ使い込んできたからかもしれない。
とにかく出来たので良しとしよう。
アヅキも受信機をつけているから私が言葉を理解したあたりで受信機の先にある本体が言語を解析し翻訳可能となってりかいしできている。
「ワタシの……怒りが……」
「もはや怒る元気もないだろうから、改めて聞くけれどなんであんなに怒っていたの?」
「……近くに違和感が現れたので、ゴミを燃やしに来ただけ……ゴミが目に映るなど、許しがたいだろう……?」
本当に何にでも怒るなこの赤龍!?
ノータイムでキレられるとどうしようもないよ!
ちゃんと血を抜いて怒る元気失くしといてよかった。
「お前、主をゴミなどと!」
「どうどう」
アヅキがキレて拳を握りしめたがなだめる。
話がこじれる。
「……フン、まあ、ワタシを殺せたのに殺さなかった、そこまで追い詰めたのは……貴様等が初めてだ。生かした理由があるのだろう? ……願いを言え」
「いやまあ殺す理由がなかっただけなんだけれど」
あくまで上から目線でだが最後の言葉だけ悔しそうに言う赤龍に私のひとこと。
コイツマジか。みたいな目で睨まれた。
だって別に赤龍を食べるつもりもないし……
「ただまあ、仲良くはしたかったかな」
私の言葉に何言ってんだコイツみたいな睨みをされる。
こうやってやってきたんだもの。
私もオトク。相手もオトクでみんなハッピー。
「……仕方ない。本気で言っているのなら、このワタシが、貴様等を認めてやろう……!」
「この邪蛇どちらが勝ったか忘れてませんかね?」
「ドラゴンは基本こんな感じだから……」
ドラーグの情けないくらい腰が最初から低かったのは……特別だ。
赤龍の治療が終わりアノニマルースへ送った。
今は暴れないと約束しておいて行動力は治っていないからまあ大丈夫だろう。
向こうでうまく体験暮らししてくれるはずだ。
ドラーグあたりがうまくやってくれるはず……
私とアヅキはこの秘境を熟成倉庫にするためにきたのだから調査再開。
正直かなり壊されたけれど。
壁は貫通していないがそこそこ溶解されているし地面は色々暴れまわった後がある。
「うーん、大丈夫かな……?」
「色々と直す必要はありそうですが、結構頑丈でしたね」
「わああああああああ!?」
びっくりした。
絶叫したのは水面からいつの間にか顔を覗かせていたユキモザメだった。
サメの絶叫というのも変な気分だけど。
こう。叫ばれる側では?
「あれ、おかえり」
「何の連絡もなしに置いておかれたから戻ったらなんかすごいことになっているじゃないですか! あと血がたくさん凍っている! 溶けていたら危なかった……」
「危ない?」
アヅキの問いにユキモザメは肯定する。
「ナマの血のにおいをかぐと、食欲が止まらなくなっちゃって見境がなくなるんですよね……」
「なんだそれは、見境くらいつけろ」
「我々の悪いクセで……」
サメだから血はねえ……
そしてショタに見境がないアヅキには言われたくないと思う。