四百五生目 風舞
東洋的な蛇型の竜。
それも全身が雪国に似合わず赤い。
太く長い身体は10mはあるのかな。
グネグネして空を飛んでいるせいでよくわからない。
[憤怒のガリュウバLv.30 比較:強い 異常化攻撃:火傷]
[ガリュウバ 炎を操る魔物ながら低温の場所を好んで生息する。そのため周囲の相手を一方的に燃やし尽くす]
[憤怒 ニンゲンたちのつけた2つ名。怒りやすい性格ですぐに手がつけられなくなるほどに怒り狂う]
嫌すぎる感じの相手が来たー!?
ユキモザメも相手を見て白目向いて大口あけている。
「あ……あああ! マズイですよ! あれは!!」
「みたいだね!」
空魔法"ファストトラベル"でユキモザメとお腹のユキモグラを飛ばす。
場所は迷宮内の安全な場所にしておいた。
強化して私は飛ばないように変更したものだ。
私は残念ながら引くわけにはいかない。
このまますんなりおとなしくしていてくれれば良いと思うが竜は私たちを見つけては目を輝かせる。
「ガアアアアアッ!!!」
低く響く強い咆哮!
やる気まんまんだ!
ダメだなこれは!
「どうやら一筋縄ではいかないようですね……」
「だね……!」
アヅキが私の作った手甲を身に着ける。
やるしかないか。
もはや何に怒っているかわからないが私達の方へ真っ直ぐと怒りに瞳を燃え上がらせながら突っ込んできた!
「行きます!」
アヅキが正面きって突っ込む。
電撃の剣は生み出さない。
代わりに何か唱えているようだ。
私はアヅキと自身への補助魔法に集中。
私が他者と組む時はだいたいこんな感じで戦う。
補助魔法は地味だけれど効果はかなり大きい。
それを効率よくやるためには……4つの魔法を唱えて中断。
魔力を4種類ためて。
「こっちだ邪蛇!」
アヅキが殴り掛かると同時にアヅキの魔法が発動して左手元に何かが生まれる。
そのまま赤龍の顔に殴り掛かると風で頭がのけぞる。
赤龍がお返しに炎魔力の光で牙を作り噛み付いて来る。
だがアヅキは火の余波がカスるだけで回避。
私の方は魔力混合完成! 爆発的な力で……"進化"!
ホリハリー! 2足歩行だね。
この姿だと靴が具現化するから少しは冷たさがマシ。
「アヅキ、それは?」
「剣というのはイマイチ肌に合わなかった、というのは主に指摘された通りなのですが……新しいものを覚えましてね」
左手に持つ長くなびくのは羽根……の寄せ集めにも見えるもの。
風の魔力で緑の光に見えるそれは……言うなれば扇の形をしていた。
背の翼で羽ばたきながらアヅキが左手でひらひらとはためかせる。
「まだ使い心地を調べる段階ですが……なかなか使いやすいです、よ!」
赤龍が吠えて連続噛みつきを加える。
アヅキは舞って風を散らしつつ回避。
赤龍が大きい分すばやくて避け続けるのは困難。
だが散らした風がアヅキの周りに壁を作る。
攻撃の瞬間に強く扇で仰げば目測から攻撃地点が僅かにズレて当たりそうで当たらない。
当たったら致命傷だからギリギリの戦いなことは間違いないがまるで赤龍を手玉にとっているようだ。
「アヅキ!」
「ありがたい!」
私は精霊と共に同時に補助魔法を次々と唱えていく。
3つ同時に……いや赤龍の敵愾心が向いていない今なら。
集中してさらに早く。さらに多く!
空魔法"ストレージ"も発動させて亜空間から剣ゼロエネミーを取り出す。
そのまま手に持って"無敵"を加算させ敵愾心を削るオーラを発動。
私に来ないようにお祈り。
赤龍は火炎放射を口から連射している。
ただ風との相性はあまり良くないらしく扇で殴られると向きが逸れる。
近くまでは来るからかなり熱いのは間違いないがアヅキはドヤ顔で対処。
「さあどうした!」
「アヅキ! 攻撃の補助を出すよ!」
「良し……行きます!」
近距離で飛び回り空で火が舞っていたところに変化が訪れる。
アヅキが高速で飛び回り一瞬だけ赤龍の頭上を取る。
扇を閉じると風の魔力も束ねられ羽根のように見える緑の光が大きくなる。
「せいやぁ!!」
ドンと鈍い音と共に赤龍の大口が閉じられる。
叩きつけられ無理矢理閉ざされた牙のスキマから炎が漏れる。
風という実体が見えないものだがなんとなくわかった。
今あの扇から具現化した巨大ハンマーのような1撃が放たれたのだ。
私の強化でアヅキでも赤龍と能力がほぼ互角になったようなのもあるが今のは大きかった。
怒りの燃料に油を注いだらしく赤龍はキッと天を見上げるが身体は体勢がおかしくなり崩れる。
頭に響いたのもあるし赤龍が魔力で空を飛んでいたのが大きく崩れたことにも原因がある。
まさに風の魔力で乱されたのだろう。
アヅキも手を緩めずに扇を追加で振るい赤龍を叩き落とした!