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三百九十七生目 謝罪

 ダカシをひととおり観光案内。

 ちなみにそこには仕事が終わったからとゴウとダンもついてきた。

 まあ良いけれど。


 大体の魔物が今のダカシよりもちいさい。

 ほどほどに周りに寄られてワイワイ騒がれてすぐに去っていくというのを繰り返した。

 言葉が受信機でわかるようになってそうやって話しかけられるたびにダカシは何を言ったらいいか悩み去っていく姿を悔やんでいる。


 逆に自分よりも大きい魔物がいるエリアに来ると驚き不安げにうろたえていた。

 彼がパッと自分の腰の方を見たから剣を構えずに彼らと対峙するというのが不安なのだろう。

 まあダカシは前は怪獣サイズになれたから10mもあるサイクロプスリーダーすら巨大化さえできれば大きさを越すのだろうが。


「探索中はねどこに食事と世話になったが、ここはいいところだな! 何より活気がある!」

「ほんとう、想像していたような恐ろしいところではなく助かりました」


 ゴウが冗談めかすとダンは大いに笑った。

 良かった。彼らにも気に入ってもらえて。


 一通り見学し食事を得てぎこちない動きを少しずつ直していく。

 訓練所にきて場所を貸してもらった。

 私とダカシが向き合う。


「その身体、少しずつ慣れてきているみたいだから改めて練習してみようか」

「わかった」

「さあ、当てに来て!」


 ダカシの動き慣れに胸を貸す。

 私は動かずにダカシからすれば小さい相手に攻撃を当てにこさせる。

 そこそこ距離を離してね。


 ダカシは1歩踏み込み順調に歩み駆け出す。

 駆けるという動作は前へ細かく跳ぶような動きを繰り返す動作だが……


「ぬあっ!?」


 ダカシが踏み外しつんのめらせて倒れた。

 うーん見事に身体の動きがダメだ。

 おそらくニンゲンの2足歩行の感覚が邪魔している。


 速く動くやり方の前に幼児に教えるぐらいのレベルからやらないとやはりダメか。

 暴走していた時は無理にでも動かして成立させていたけれどダカシの力じゃないってことなのだろうか。


「ダカシ、獣の動き方には特徴があるんだ。それじゃあ復讐どころか日常生活も困難だから、教えるよ」

「うう……クソ、わかった」


 その後何度も転び立ち上がる。

 まともに走れるようになったのは日がすっかり暮れてからだ。

 まだまだひととおり動きを身につけるまでは遠い。


 今後はどうなるかはわからないがまさか元ニンゲンが私以外に増えるとは……

 ちょっとだけ共通点がダカシと出来たから世話をやくのかもしれない。

 まあまだダカシが暴れないかわからないから今のうち売れるもの売るという点はある。







「やっぱあったかいとこで美味いメシ食えれば最高だったぜ!」

「お世話になりました。実際色々見せてもらって助かりましたよ」

「気に入っていただけて何よりです」


 ダンとゴウは今日で帰宅。

 報告なども済ましておいてくれるらしい。

 別れの挨拶をして(くう)魔法"ファストトラベル"で別れた。


 ダカシはこちらに残る。

 ニンゲン界にはこの姿では帰れないからね。

 大型用の余っているテントを使うことになっている。


「何から何まで……俺はあんなことをしたのに、すまない」

「まあ、まだみんなキミがあの時のだとは気づいていないしね。時間をかけて少しずつ謝ってもらうためにも、場所は必要でしょ?」

「……厳しいな。やらなきゃいけないのだろうけれど」


 ダカシが振り返りたくさん行き来する昼とは違う夜の魔物たちの姿を眺める。

 経験稼ぎの的としてではなく共に暮らすための相手として見てくれているだろうか?

 ダカシはまだ混乱していて色々とおぼつかないがじきにひとりずつ謝れるだろう。


 ダカシの横顔をみてふとそう思えた。


「行ってみる?」

「……ああ」


 ダカシが意を決して数匹群れて話しているところに歩みを進める。

 何事かと彼らはダカシを見て私の姿を見つけて警戒心をとく。

 私が見逃しているなら味方だろうという判断か。


「はじめまして! おっきいね!」

「はじめ……まして。俺は今度からここにやっかいになる者で、その」

「そうなんだ!」「よろしく!」「何か食べる?」


 ワイワイと集まられている。

 ダカシが何か言いたげにこっちに視線を投げてくるがもちろん見ているだけ。

 やがて諦めて口を開く。


「俺は……言いたいことがあってここにきたんだ。それは――」


 さあ先は長いぞダカシ。






 こんにちは。また流氷の迷宮です。

 ここに来たのは私だけ。

 今日はシカウサギたちと後片付けに付き合いにきた。


「まことにかたじけない。やはりかなりエネルギーを持っていかれているようで」

「いや、大丈夫。私もこんな貴重な場所にこさせてもらってうれしいですし」


 流氷の迷宮でもその管理部屋に呼ばれるとは滅多にない。

 シカウサギの王……つまり1番立派なツノを持つ彼が招待してくれた。

 私も迷宮管理していると言ったらわりとすんなりと。


 ただやはりというか私がパッと見ただけでは意味不明なモノがたくさん。

 おそらくはシカウサギたちの感覚で理解できるように作られているのだろうか。

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