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三百九十六生目 出所

「それにしても困ったな。ニンゲンにゃあ戻れねえのか」

「国に問い合わせているのでダカシという人物が実在するかはすぐに答えが出るでしょうが……まあおそらくそこは大丈夫でしょう」

「うん、もちろん実在するし、復讐罪で復讐するために刀を持って己を鍛えつつ犯人を探していたから、簡単にデータは出ると思う」


 ダンのぼやきに反応する。

 ゴウもさすがに私の言葉を鵜呑みにはしていないらしい。


「俺は……もう、良いんだ、ニンゲンに戻れなくても」

「良いのですか? 色々と不便だと思いますが」

「復讐が出来れば良いんだ。それと……俺の罪を、つぐないたい。夢中だったり、暴走させられていたりして覚えていなくても、たくさん傷つけてしまったみたいだから……」


 罪を償うか……

 ダカシは先ほどから非常に落ち込んでいるらしく身を伏せて目は下を見ている。

 まだ少年と言える程度の年齢が背負うには重すぎる復讐という荷物と罪という枷。


 さらには現実で意識が戻らない間に悪魔と話して打ち解けあっているそうで悪魔も受け入れている。

 つまり悪魔憑き。

 肉体は巨大なたてがみの無い黒ライオンから戻れるきざしなし。


 わりと並べ立てただけでひどい条件がダカシに揃っているな。

 ちょっと同情した。


「まあ、悪魔祓いも含めて検討はしていきましょう。それまでは混乱を避けるためにもアノニマルース内にいてもらっても良いですか」

「……ああ。俺に出来ることがあるなら、それもしよう。復讐の時までに、この身体を使えるようにしたい」

「わかった。改めてよろしく、ダカシ」


 鉄格子を開けて私がダカシと向き合って右前足を掲げる。

 ダカシは少し困惑してからためらいつつ。

 そっとそのサイズの違いすぎる前足を合わせてくれた。


 たとえ過去敵同士でもやれるんなら共同戦線はるとも。

 双方に得があるからね。

 今までもそうしてきたし今回もそうするだけだ。

 さて何をしてもらおうかと既に私の脳内であれこれ案を出していた。






 その後街に滞在している(フォウス)教の宣教師たちに悪魔払いの儀式をやってもらうなどはしたが効果はなかった模様。

 比較的下っ端だからというのもあるがお祓いをした者たちによると『信じられないほどの力がある』ということと『根の部分で人間の魂と混同していて、無理矢理引き剥がすのが危険』とのこと。

 ただダカシとしては、


「悪魔とは、まあうまくやっているし、力関係も今度こそ俺が上だから問題ない」


とのこと。

 それと肉体の大幅な変化はダカシではコントロールできないとのこと。

 悪魔にやらせてなんとか維持しているとか。


 ただ本質的には悪魔とダカシ両方がうまくやり方を覚えないと暴走する可能性がある危険な身の上で慎重にやっているからこの姿以外になれないらしい。

 少しずつ頑張るそうだがまだ道のりは遠い。

 ただ現状は無事危険性の薄さが立証できたのでゴウの許可のもと一時的に魔拘束具を解放することにした。


「それではじっとしていてくださいねー」

「ああ」


 ゴウは身軽に高所のダカシの身体の上に登る。

 拘束具とは言っても見た目は服に近い。

 いわゆる囚人服のようだが効果は恐ろしく高いらしく魔法1つスキル1つも出来ないとか。


 道具をいくつも取り出してアレコレと詠唱していくとひとつずつロックが外れる音が。

 厳重だ……まあそれほどに危ないと判断した相手に使うんだろうけれど。


 5つ目のロック解除音と共にダカシの身を包んでいた魔法の拘束具がドサリと地面に落ちる。

 形が縮んでゆきニンゲンひとり分くらいのサイズになった。

 これが本来の大きさか。 


「気分はどう?」

「随分と身軽になった。ただ……やっぱり肉体変化はまだ難しいらしい」

「そこは時間をかけてゆっくり行いましょう」


 こうしてアノニマルースにひっそりと仲間が加わった。






 地下から専用大型種通路を通って外へ。

 アノニマルースの比較的内側に出る。

 ダカシが久々の陽光に目をくらます。


「外は眩しいな……うん? なんか、ムショっぽくないな」

「そう?」


 まあわりと明るいカラーを中心に配色していていかにも『刑務所!!』っていう風にはしていない。

 町中で物々しさを減らしたいというのもあったけれどここの出入りがイコールハズレモノとなって社会復帰が困難ということは避けたかった。

 そのため他の設備とも併設だから実際に刑務所ぽさはまるでないだろう。


 ダカシは目が慣れてきたみたいで私達と歩きながら周囲を見渡す。


「なんだか小さくなったな……それと前見たときよりずっと発展している。テント村だったはずだが」

「ダカシが大きくなったんだよ! 発展の方はキミに焼かれてから必死にね」


 私のイヤミにダカシは申し訳なさそうにうめき声を上げた。

 うん思ったよりも落ち着いて見てみたらショックを受けているようだ。

 そこでただ普段営んでいるということに。


 まあ私達も食事のために誰かを襲ったりはするからね。

 私達が経験を稼ぐための的じゃないってわかってくれれば私は少なくともそれで良いさ。

 対して悪魔騒動で怒りをぶつけるのは主にダカシじゃなくて……魔王復活秘密結社だ。

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