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三百九十五生目 折合

「あまり、覚えてない……」


 ダカシがなんとか話した言葉を繋ぎ合わせると。

 ダカシの記憶はこうなってからは非常に曖昧で言われれば何かをしていた気がする程度のもの。

 ただその初めだけはしっかりと覚えていたらしい。


「誰か……話しかけ……俺、力、欲しい……そう言って、何かしてきた、頭が痛く、覚えてない」

「ふむ……何者かに話しかけられて力が欲しいと言ったら何かされて、頭痛がしてそこから記憶が曖昧と」

「おそらく、そいつが魔王復活秘密結社の……」

「メレンって年寄りか!」


 ダンが拳と手のひらをぶつけ怒りをあらわにする。

 そして年寄りという言葉にダカシの耳がピクリと動いた。


「歳……そう、うん、しわくちゃ、声」

「声がしわがれていたと……その特徴も一致するものですか?」

「うん。私が聞いた声もそうだった」


 ダカシとの情報照らし合わせの結果やはりメレンの言うとおりメレンがやったことらしい。

 そしてメレンが言うにはもう元のニンゲンには戻れないと言っていたが。


「ところで、その身体小さくしたりそもそもニンゲンに戻ること、できないの?」

「む……確かに、聞く、ヤツに」

「聞く? 誰にだ?」


 ダンが疑問を口にしたがそれはおそらく……


「あー……悪魔」

「悪魔……! まだその体にいたのですか!」

「悪魔……困ってる、いろいろ、できないらしい」


 そこからダカシのカタコトを繋ぎ合わせると悪魔の現状が見えてきた。

 悪魔は私に蹴り飛ばされたあとダカシの身体に戻りダカシに脅迫されなんとか肉塊から元の黒い獣の姿に戻すことは出来た。

 ただダカシが一旦力尽きて気を失ったあと今度起きたら悪魔とのやり取りの大半の記憶を失っていたとのこと。


 そして肝心なのが悪魔自身も自分が悪魔だということぐらいしか覚えていなかった事に気づいたらしい。

 コレに関しては……


「確かメレンは悪魔の因子と言っていました。つまりは悪魔を引き起こすためのものでしかないから……」

「意図的に新しく生まれた悪魔ということでしょうか」

「そんで、その悪魔はどうしたいって?」

「帰る場所、ない、いさせて欲しいって」


 そして悪魔はダカシの中に住み着くようになったと。

 ちなみに悪魔も肉体操作はこれだけが限度で変質してしまっているためニンゲンに戻すことは出来ないとのことだ。

 徐々にダカシの言葉が流暢になってきた。


「困ったもんだな……」

「とりあえずここにいてくれる分には構わないのですが。壊したりしなければ」

「人間社会としても確かダカシ君はまだ子ども。しかもその大部分は利用されていただけなので変に罪を問うことはしないでしょう。問題のメレンは現在も捜索させています」


 ダカシが3日起きなかった間にあらかたこちらとダカシの関係性は伝えてある。

 ダカシはまだ子どもなので罪に問えず監督責任にあたる保護者も死亡しているため誰にも刑事責任は問えない。

 ただそれはそれとしてという話もさせてもらった。


「ダカシ、一旦ここに匿って置くにはひとつ条件がある」

「……なんだ?」

「過去私達の群れを燃やして吹き飛ばし、しかも大半の理由がうちのカムラさんをカタキと勘違いからということを、謝ってほしい」

「それは!」


 ダカシからしてみれば勘違いではないと言いたいのだろう。

 それはわかるが……


「おそらくキミのカタキに該当する相手が見つかった」

「な!?」

「アンデッドじゃない正真正銘のニンゲンで、そもそもカムラさんはそのニンゲンの姿をかたどって姿形は作られただけ。そしてそいつは、魔王復活秘密結社に所属している」

「そんな!」

「我々の方でも全力で捜索中です。それとダカシ君が怒りを飛ばしたと聞いているいうユウレン容疑者ですが、実は最近再審議中でもしかしたら犯罪を犯していないのかもしれないのです」

「な……! 俺の、正義は……!」


 ユウレンの話は実はちまちまと裏でやり取りをしてどうにかならないか頑張っていた。

 ゴウたちを通じて取引をした結果証拠の集め直しからやってくれるようになったらしい。

 1番効いたのが前護衛をした宣教師ゼストが訴える側の教会メンバーたちを少し黙らせてくれたという点だったのが世の中どう繋がるかわからなくて面白い。


 もちろん証拠がもみ消された可能性含めて裏でも動いているらしい。

 ゴウによると『国際問題にならなさそうだから司法ものびのびできるでしょう』とのこと。

 ユウレンたちが言っていたどうにもならなかったという話はどうやらこの国際問題発展を恐れてあちこち萎縮したのが大きかったらしい。


「そしてキミの罪はニンゲン界では問えない……けれど私達の群れで生きる魔物たちや各地の氷漬けにされた魔物たちは迷惑をこうむった。せめて、謝ってほしい」

「ぐぅ……」


 ダカシがたじろぐ。

 私が3つの目でダカシの逸れていく2つの目をじっと見つめる。

 許せないけれど。それでも互いに不幸にならない点で折り合いをつけて前に進むときだ。


「返事は?」

「……ごめん……なさい」

「……私は、受け取った。会う時が来たらみんなにも直接言ってあげてね」


 ダカシが下を見て絞り出すように答える。

 あまりに小さく見えて少し笑いそうになったが空気は読むよ。

 仕方ないから私が代表で謝罪を受けただけで私より死にそうになっていた面々はたくさんいるからね。

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