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三百九十二生目 美麗

 ドゴォン! と広場の一部の氷が積み重なっていた部分が吹き飛んだ。

 何がとかと思ったがこの気配は……


「大丈夫ですか!」

「来たぜ! 助太刀に! ってうわっ!! なんじゃありゃ!!」

「ぎ、ギャーー!! 気持ち悪い!!」


 人狼のゴウとミノタウロス系のダンそれにシカウサギたちだ。

 シカウサギたちは到着早々正気度をはかったほうがよさそうな事になっているがそれは置いといて。


「大丈夫! 今なんとかしているところ」

「な!? なんなんですか、あの悪魔の目! 常識外のサイズ……!?」

「これを逃しちまったら、国家存亡の危機だぜ……」


 ゴウの言葉が震えているあたりでやはりとは思ったがダンのつぶやきで苦笑いするしかなくなった。

 そりゃそうだよねー。こんな切ろうが焼こうが何しようがほとんど効かずに延々と切り刻み最悪の威力ビームを放つからね。

 これこの場所の構造的にどうにか勝てただけであって外界で肉塊伸ばし放題になって襲ってきたら……恐ろしすぎる。


 手元に剣ゼロエネミーを置いといて"無敵"を加算させながら敵愾心(てきがいしん)を削るオーラを放ち続けさせているがここまで来るとどこまで意味があるか。

 とりあえずここまでの戦いをざっくりと彼らに報告をした。


「……かくかくしかじか。という感じで、ニンゲン側が勝てるかどうかにかけている感じですね」

「……報告を聞いた限りでは、まさに地獄の極み。我々がいてもどうしようもないほどの事態ですね」

「なるほどなあ。殴って人間側にダメージ与えちまう可能性もあるわけか。かと言って悪魔の目やこの肉たちは再生能力がずば抜けていて、対国魔兵器とかじゃなきゃあ焼け石に水か」


 対国ってなんだ。魔兵器っていかにもな危ない響きだなと言いたいところだが空気を読んで抑えた。

 ただこの状況悲観はしていない。

 私が全力を尽くしたというのもあるが私の聖魔法の効果による実質麻痺が抜けているが相変わらず白黒と悪魔の目の色が変わっている。


 触手たちも動かず攻撃魔法も飛んでこない。

 ひたすら苦しくうごめく悪魔の目。

 雰囲気からしても勝敗は決まった。


「……なっ!」

「悪魔の目が、溶けていく……」


 ゴウの言葉通り悪魔の目が蒸発音すらたてながら形状を失っていく。

 肉塊たちも震えて形状を失いドロリと緩んで天井から剥がれ落ちる。

 って私の位置だと危ない!


 みんなは急いで来た道に引き返していったが早速その穴の前に肉塊がずり落ちる。

 塞がれたー!

 剣ゼロエネミーを大盾モードで上へ向ける!


 グチャリネチャリ。

 大盾の上に気味の悪い肉塊がのしかかる。

 悪魔の目ビームみたいに破壊力があるわけじゃないからそこは平気だけど本当にどうかと思う程度には気味が悪い。


『大丈夫ですか?』

『ええ、なんとか……あとはニンゲンの彼が制御しきれるようになれば良いのですが』


 ゴウから"以心伝心"を通して安否確認された。

 向こうも大丈夫そうだ。

 ダカシの名前を言わないのは説明がややこしくなるから。


 私の近くには悪魔の目があった。

 まあ剥がれ落ちて来たのだからそりゃそうか。

 さっきまでは白黒といった様子だったが今度は白が黒の球をはじき出そうとしていた。

 私の"セパレーション"の効果もあるのかな。


「ダカシ! あと少し!」


 あの黒いのは悪魔の因子……そして悪魔の力とか意思とかだろう。

 アレを追い出せればこの肉塊の支配権をダカシが得て引っ込められるはずだ。

 できないと困る。


 最後に肉塊が取り込んでいた龍脈の力がいくらか黒の塊に集まっていくのが見える。

 むしろ奪っているのだろうか?

 最後のあがきをしようと……


 そういえば悪魔ははじき出されたらその後どうするのだろう。


「って!?」


 ついに切り離された。

 私にまっすぐ向かって!

 冗談じゃない!


 "空蝉の術"で避ける!

 地面の氷をめくって盾に。

 すり抜けた!? 幽霊――


「グアッ!?」


 私のさっき使った聖魔法も解けている。

 私を吹き飛ばしはしない代わりに黒が私にまとわりつく。

 そして身体がまるで金縛りにあっかのように動かなくなった!


 ぐうう。身体の感覚が失われていく。

 "鷹目"で私の全体像を映し続けて何が起きているかだけは見える。

 それと身体の自由が効かなくなったけれど別の場所のお客さんに気づけれた。


 精神世界。

 私がアインスやドライと会話したり前死にかけた時に大立ち回りして死を遠ざけたりと色々やっていた場所。

 そこに招かれざる客がものすごい肩で息をしてかろうじて立っていた。


 ニンゲンの女性のようでいてその容姿は言葉に表せないほど美麗。

 まさにニンゲンを油断させて魂ごと貰うにはもってこいの容姿。

 まあ私はコレだからどこか冷めた目では見られるのだが。


 ただ容姿がこうというわけではなくて見るものに異常をきたすような強い力を感じる。

 "影の瞼"が発動して防いでいるけれどこの悪魔は本来見るだけでも危険なのかもしれない。

 なんとか息を整えて私に向き直る。

 コホンと咳払い。


「さあ、ワタシの美しさに(おそ)れ、この身体を明け渡しなさい!」

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