三百八十四生目 炎氷
ついに無駄に馬鹿でかい怪獣サイズはやめたらしい。
私が鎧を全身攻撃モードから通常に戻している間にもダカシは縮んでいく。
さらに吹雪もおさまってきた。
無駄と悟ったらしい。
最終的に私のこのウルトラ鎧モードよりも大きい程度に収まった。
そしてそういう判断が出来るようになったということはただ暴走しているだけではなくなったはず。
「ダカシ! 何があったかは知らないけど、もうやめるんだ! 迷宮を壊すな!」
「ウウゥゥゥ……!! フクシュウウウウ!!」
わっ! 飛びかかってきた!
まだダメか! トゲで足場を固定してダカシ側にも大きくトゲ!
ギリギリ身を逸らされカスリ程度当たる。
私がまた身を翻す前に横から氷を纏った突撃を当ててきた!
グウッ! 足場のトゲが外れ押し飛ばされる。
だがダメージとしてはまだ大丈夫だ。
再び襲ってきたダカシに対して殴って牽制する。
向こうも負けじと噛みつき爪で引き裂こうとしてきた。
少し小さくなっても能力自体はそこまで弱くなっていないから厄介だ。
「ダカシ! 目を覚まして!」
「グルアア!! コロス!!」
激しく打ち合う中必死に声をかけるものの返事が要領を得ない。
肩を裂き頭を叩きつけられ返しに槍を作って"すくい上げ"。
互いが光を纏った攻防のせいで1撃が目の中で星が舞う程度には重い。
出血したダカシは跳んで下がるとふたたび肉が傷口を覆い隠す。
厄介だなーあれ。
行動力を使って生命力が治っているのも"観察"で見た。
ただこっちも!
剣を念力のように飛ばして直接斬りあわせる!
ダカシは爪から発する光でぶつかった!
剣ゼロエネミーは相手の身体に直接当たればそれだけで敵愾心を削っていく。
狂気的な想いに心が支配されているダカシ相手ならばかなり有効的なはずだ。
心のスキマができれば声だって届く。
剣をドリル状に変化させて回転させながら槍のようにつく。
受け流そうとしたダカシが前脚を振るったが回転にガリガリと当たった後に強く弾かれた。
今だ! 真上から叩きつける!
頭に強く当たり地面へ叩きつけられたあと反動で後ろへ跳ぶ。
私と剣で追撃に向かった。
空中でダカシはなんとか立て直して後ろへとびながら空中に巨大なつららを生成。
向かう私たちにつららを飛ばしてきた!
巨大さが麻痺してくるが1本1本が大樹のようだ。
前脚と剣を振るいなんとかつららを砕くが足止めはされてしまった。
いつもより自身の当たる範囲が大きいからどうしても避けきるのは難しいか。
ダカシが着地したところで口を大きく開く。
エネルギーが集まり口内が光り輝く。
何か来る!
「ガアオオオオッ!!」
青白い魔力ビームが放たれた!
私の前に剣を大盾に変化させて構える。
すぐに思いっきり衝突!
放たれたビームは盾に塞がれ周囲へ別れる。
1面にどんどんと氷をはっていく。
当然私の剣にも。
大盾状態のまま押されるがここはチャンス。
大岩をも動かす"フィクゼイション"の力を信じて念力のように大盾に変化させているゼロエネミーを押す。
行けると踏んで強く押し返す!
「うおおおおッ!!」
全力で押し返して走る。
ダカシがマズイと踏んでビームを途切れさせたその瞬間に強く踏み込む!
逃さない! 思いっきり大盾で殴りつけた!
殴られた衝撃で軽く吹き飛ぶ。
しかしキッとこちらを睨み返してきた。
「バウッ!!」
準備していたらしい風魔法が唸る!
緑の光とともに空気の砲弾をぶつけてきた。
攻撃に移ろうと大盾を解除していたからモロに喰らった!
「ぐあっ、いった!」
この金属塊みたいな身体を吹き飛ばす程度に強い風圧に殴られたがなんとか立て直す。
また両者距離が相手睨み合うこととなった。
どちらが早いか私とダカシ両者とも飛びかかって激しく光の火花を散らした!
時間にすると数分間は激しい攻撃の応酬があった。
あちこちに炎で溶けたり焦げたあとが広がりその上に氷結が覆いかぶさる。
私が炎を出してダカシが凍てつかせているわけだ。
実際の経過時間の数分というより濃密な攻撃の応酬に既に1時間近く戦っているのではという錯覚をする。
全く持って状況が進行しない!
普通ここまでやればダカシの行動力は尽きてくるはずなのだが。
「ガアアアアッ!!」
叫ぶと大地から少しだけ龍脈のエネルギーが溢れダカシに流れ込む。
それだけでダカシの行動力が治ってしまうからたまったものじゃない。
もちろん純粋な体力や敵愾心は少しずつ削れてはいるのだが。
肉体と生命力は自己再生能力で治されてしまう。
殺すのが目的ではないから"正気落とし"を使ったり腹に"峰打ち"を使いつつ刺し込んでから電気魔法"ショック"でエレキを流し込んで見たりと試してはみたが。
常識外の速度で治癒された。
私は私で致命傷を負いようがないウルトラアーマーに加えて"ヒーリング"で治してしまう。
体力はまだまだあるしバッチコイとは思うが単純に長い戦闘は精神をむしばむ。
つまり集中力が少しずつ危うげになっていた。
なるべくしてなった長期勝負。
だが勝ち目はある!