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三百八十ニ生目 鎧獣

 雪原を駆ける。

 地の利を活かして最短ルートを駆けてゆく。

 駆けるというかもはや流氷をどんどん跳んで渡る感じだが。


「黒い獣はその巨躯を活かした圧倒的な力の他に、頑強な肉体とありますが、1番厄介なのはあの吹雪ですね」

「あんな凍らして吹き飛ばしてくる吹雪を前にしちゃあ、もはや攻撃すら出来ねえよ!」

「言うなれば吹雪結界……あれを突破できなければ、勝ち目はないですね」


 そう言いつつ自分自身のステータス整理。

 私の能力はそこそこ多岐に渡ってはいると思うが現状防御面は弱いし飛び道具攻撃は貧弱。

 全体的に悪い能力が少なく特に『あまり気にせずに大量の行動力消費技を行使しすぐ回復出来る』という点は優れていると思う。


 超必殺技はないものの大技程度のものなら全力でぶん回し続けられるのは強みだ。

 他者の戦いを見ていても常に残りの行動力との戦いで必殺技とも言えるものをはなった後に膝をつく者も少なくなかった。

 だから常に大きく強化しておいて大技を放って立ち回るというのは動き方として間違っていない。


 ただあの黒い獣相手となると……勝てる見込みが薄い。

 レベルが45となりスキルポイントが5。

 この新しいスキルが当たりだと祈るしかない。


[戦場の獣 消費ポイント5 重装備への適性が上がり重装備装備時の能力が上がる。また全耐性が上昇する。重装備装着時重ねて全耐性が大きく上昇する]


 獲得!

 これで残りポイントゼロ。

 説明文からして明らかにグラハリー用だ。


 全身を針の変化形態である鎧に身を包む重装備な"進化"先。

 正直かなりの奇策頼りになるかなと思っていたところだったからこれがうまくいくのならばかなり助かる。

 安定かつ安全策で突破出来るのならばその方が良い。


「――とかの、かなり不安定なものに頼るしかないですね」

「いっそのこと海に落とせれば良いんだがな。そうしたらさすがに吹雪は出せないだろ! 出てきた頭を叩けばいいだけだしな!」

「まあ、そんなこと即席で出来たら良いのですが」


 おっと話を半分程度聴き逃していた。

 ただ思いつきのアイデアをみんなで会話回していただけだからぶっちゃけどれもこれもリスクとリターンが合わない。

 やはりここは……


「なあ、ローズはどう思うよ!」

「そうですね……やってみたいことはあります」






 吹雪が吹きすさぶ。

 対象までの距離が近い。

 その中を私はひとりで歩いていた。


 ハイリスクハイリターン。

 ハイリスクが発生したら最大限取り戻せるように。

 ハイリターンが発生したら全力で得られるように。


 味方たちは控えてもらっている。

 気合を入れていかないと。

 さあ"進化"だ!


 地・土・火・光魔力を作り出して混ぜ合わせ今ここに。

 "進化"!!

 全身が針の変化した鎧に覆われてゆきピンと耳がはる。


 ずしりと大地ならぬ氷塊を踏みしめて。

 グラハリー!!

 こういう大舞台での利用は久々な気がする。


 うん……?

 この感じなんとなくもっと全身を鎧に覆いたい。

 "戦場の獣"効果が大きく発揮されているということかな。


 というわけでさらに変化!

 フルアーマー!

 からの超重化!!


 曲線のフォルムが顔面を完全に覆い隠す。

 "見透す眼"の透視と"鷹目"があるから平気。

 今まで関節の関係で完全に覆う事が不可能だった部位すらも分厚い鎧が何重にも覆っていく。


 虫の甲殻にも似ているかもしれない。

 さらに言えば関節に完全に覆っていても動きを阻害しないからまるで1つのゴーレムのように。

 尾まで完全に覆い尽くせばもはや寒さはなくなった。


 何重にも重ねられた装甲は本来の私の大きさを遥かに上回り。

 まるで鉄塊が動くがごとく。

 光すらも跳ね返すウルトラアーマーの完成形だ。


 あ〜。すごくしっくり来る。

 こんな本来の私ならばまったくうごけなくなる程度に針を変化させた鎧だらけ。

 だけど今は軽々スキップすらも出来た。


 もはや足元もブーツだなんて目じゃないほどに厚底でそれが全身にあるのだからまるでパワードスーツ。

 全身を覆うタイプのメカとも言える。

 鎧だけどね。


 歩けば響き走れば(とどろ)く。

 腕を振るえば鎧から生える大爪が相手を切り裂いて見せる。

 そう。なるべくリスクを抑えリターンを得るためにやる方法とは。


 ガチガチに防御固めて正面から殴り込む!!

 すぐにこの私の気配にまだ少し遠い黒い獣が気づいた。

 私の方を見て警戒心を顕にし牙を剥き出して唸る。


 私も駆け出した。

 多少鎧で大きくなってもやはり怪獣サイズに勝てるわけではない。

 補助魔法はバッチリかけてある。


「ウオオオォーー!!」


 吠えると吹雪結界が再び強く貼られたがこの鎧ならば負けない!

 じわじわと削られるが先ほどよりだいぶマシ。

 勢いを落とさず突っ込む。


 それにしても……なんだかニンゲンの声で吠えているような……そんな不気味さを感じた。

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