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三百八十一生目 兎角

 そのまま地面に落ちて転がされこれ以上だと氷の山にぶつかると判断して先に無理矢理にでも地面の氷に爪を引っ掛ける。

 ガリガリと踏みとどまり吹き飛んで行くふたりを(くう)魔法"フィクゼイション"で空間ごと固定した!

 そのあとゆっくり下ろす。


「た、助かったぜ……」

「く、黒い獣は……」

「……どこかへ行ってしまいました」


 吹雪の勢いが弱まったと思ったら本体がいない。

 音がするから私達とは逆方向に行ったことは分かる。

 ひどい目に合ったが追い払うのは成功したということかな。






 さっき救助できたシカウサギと合流出来た。

 他のシカウサギたちはだいたいは一撃で沈められたおかげで死んではいないが致命傷を負っているという状態だった。

 先ほどの吹雪で凍死しているものもいたが聖魔法"リターンライフ"で蘇りをなんとか出来るやつは行えた。


 それでも全員助けられたわけではない。

 つぶれたトマトになっている者は無理だ。

 それに魔法治療はしたものの満身創痍で自然治癒も必須の状況。


「本当に助けていただいてありがとうかたじけない……けれど、行かなきゃ、アイツを止めに!」

「無茶ですって!」


 こう言い出したから困る。

 シカウサギたちの中でなんとか最初に助けたウサギが1番立派なツノをしていた。

 誇りの証らしいからトップなのだろうか。


 それがこの調子で無理にでも戦いに行こうとして痛みでうずくまる。


 鹿サイズに大きいウサギはまさに毛玉でモフモフでそういう戦いとは無縁そうなのだが彼らは必死に戦いに赴こうとしている。

 理由は……あるのだろう。


「そいつらなんて言っているのか、わかるのか?」

「お礼と、それとなぜかあの黒い獣を倒したがっているようです」

「そりゃ無茶だぜ、オレらですら本気だしたアイツには近づくことすらできないのによ」


 ダンの言うとおりだった。

 私でも対策なしで近づくのは不可能。

 ただ先ほど救命していたらレベルが1つ上がって45になったからもしや……とは思っている。


 兎に角(とにかく)彼らの話を聞こう。


「なぜそんなに黒い獣を?」

「……詳しくは言えない……けれど、この世界を守るためには、必要で……」

「この世界……迷宮を?」

「迷宮! その言葉どこで! そうか、もしやあんたら外から!」

「は、はい」


 シカウサギたちが興奮して詰め寄ってきた。

 その後私と逆方向を向いてシカウサギたちだけで寄り合いゴニョゴニョと会議。

 結論が出たのか再び私に向き合った。


「話をここの迷宮の魔物たちに秘密にできるのなら、その圧倒的な力、お借りしたい!」


 真剣な眼差しだと思う顔でこちらをジイと見つめてくる。

 さすがにサイズがあるウサギたちに見つめられると心臓に悪いな!

 とりあえず落ち着いて。


「圧倒的かどうかはともかく、あの黒い獣にはこちらも困っているんです。話を聞かせてもらえますか?」

「ああ! かたじけない。死にゆく定めだった我らの命を多く救ってくれただけでなく、『誇り』をも蘇らせてもらった。

 その上で頼むのは恥の上塗りだが、事は我らだけではすまぬからな……」


 シカウサギは目を閉じて考えを整理しているようだ。

 それから再び話し出す。


「あの黒い獣は、迷宮の核となる場所を襲い、迷宮全体のエネルギーを奪おうとしているようなのだ。推測ではあるが、各地で似たような事をしている情報が入っている。我らが管理を任されていたが、まるでツノが立たない」


 歯がたたないということかな。

 やはりというかなんというか。

 迷宮の管理者は彼らだったか。


 しかも狙って襲っていると。

 迷宮のエネルギーといえば龍脈。

 龍脈だなんて個々の存在が保有するにはあまりにも莫大なエネルギーを秘めているしソレ故に万能で猛毒の力。


 普通の魔物なら龍脈のエネルギー迷宮1つ分を直に受けても器として耐えられずに肉体が耐えれず崩壊して死ぬなりそもそも受けれずに外を流れていってしまうだろう。

 ただあの魔物明らかに規格外だったからなあ。

 それに冷気を扱う魔物だったからこの寒い迷宮の質と合うかもしれない。


 この迷宮内のあっちこっちに痕跡があったのはそのせいか。

 おそらく龍穴から溢れ出るエネルギーを吸おうとしていたのかな。

 そして今度は大本へと。


 そう考えると他の迷宮を凍らせたまま放置していた理由が恐ろしい点を思い浮かべるが……

 ここはまだまだ推測の推測だ。


「では、あの黒い獣が向かった先は……」

「そう、あの方角! おそらくヤツは迷宮のエネルギー中心地、聖地へ向かったに違いない! どうか、止めてくれ!」

「ええ、協力できることなら」 


 話の内容をゴウとダンにも話して同意を得る。

 どちらにせよ黒い獣をどうにかしに来たのだから。


「かたじけない! 時間が惜しい、案内する! 我々の命と迷宮の未来、そなたたちに託そう!」

「は、はい!」


 すごい真剣に言われてしまって思わずこちらも固まってしまった。

 ただやることは実際そのぐらい重い。

 急いで移動を開始した。

 翻訳はもちろん続けている。


「なーるほど、熱いじゃないか! 兎たち! オレたちに任せておけ!!」

「気持ちはありがたいですが、実際に倒す方法を考えねば……」

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