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三百七十七生目 雪鮫

「今日で4日目……」

「なんとか足取りは追えてますが、なかなか奥まで探索させられてますね」

「まあ、長丁場になるのは覚悟の上よ!!」


 おはよーございます。

 流氷の迷宮に(くう)魔法"ファストトラベル"でワープして戻ってきました。

 アノニマルースで寝泊まり出来るのはかなり助かっている。


 さすがにずっと氷の上は火も起こせないから大変だしね。

 探索そのものは黒い獣らしき痕跡が残されているものを追跡して進んでいた。

 ただ今のところ追いつける気配はない。


 ツーと目の前を横切る多数の魔物たち。

 滑りながら移動するその姿はモグラっぽい。

 というより名前もユキモグラ。


 とは言っても彼らの目は退化しておらずこうやって氷の上を移動したり氷を割らないように器用に掘ったりしている。

 今は私たちが攻撃をしかけていないから向こうも気にしていないのだ。


 私はともかくゴウやダンは比較的周囲に警戒心もといプレッシャーを放ち自身の強さを漂わせている。

 カルクックに乗っている時はそうでもなかったので彼ら自身が完全にコントロールしているわけでもないのだろう。

 完全に未知かつ魔物だらけでどこから襲われるかわからない迷宮内だから警戒心がそうさせているだけで。


 少しの間眺めていたら列がとぎれた。


「では行きましょう」

「応ッ!!」


 ゴウが狼の耳をピンとはり周囲をゆっくりと見渡す。

 ゴウのスキルである"獲物探し"だ。

 やがて私たちに向かって頷いてから先に駆け出した。


 私たちはその後に続く。

 雪と氷で消えてしまっているはずの対象が通った痕跡すらも見破り解析してしまう。

 追跡(ストーキング)というやつだ。


 こうして移動しているとこの寒すぎる環境でも多くの魔物が暮らしているのがよく見える。

 ただ空には誰も飛んでいないね。

 割りと海に入ったり出たりする魔物は多い。


 私達のような冒険者の姿は珍しいらしくペンギンのようで頭に立派な1本角が生えた私よりも大きい魔物がゾロゾロと寄ってきたりする。

 近くまで来るとゴウやダンをシルエットで仲間だと勘違いしていたことに気づいて混乱するのが面白い。

 だが当然そんなおとなしいやつばかりではない。


 しばらく移動して走っていると並走して水中からこちらの様子を伺う気配。

 何もしてこなければとも思ったが気配が変わった。

 光魔法"ディテクション"の反応が黄色『警戒』から赤『敵対』に。


「何か水中から来ました!」

「水中? どこだ?」

「うん? アレは一体……」


 ゴウが見つけたのは氷の上に飛び出ているヒレ。

 (エフェクト)を纏って氷を斬り裂いている。

 ヒレがこちらを向いてきて加速した!


「危ない!」

「うおっとと!」


 みんな跳んで避けるが勢いはまだ止まらない。

 私の方に向かってきて氷が盛り上がる。

 大きく割れて飛び出したのはサメだ!!


[ユキモザメLv.15 比較:やや強い 異常化攻撃:攻撃力ダウン]

[ユキモザメ ユキモグラのトランス体。腹部にユキモグラをくっつけているが親子関係はほとんどない。まだ弱いユキモグラの代わりに存分に凶暴性を振るう]


 ええ!? あれユキモグラのトランス系なの!?

 違うじゃん! こう。違うじゃん!!

 でも確かにお腹にユキモグラが2匹くっついている。


 大口を開いて飛び込んできたのをなんとか身体を回して避ける。

 そのまま氷を噛み砕きながら下へと潜っていった。


「地形の問題が大きいですね……」

「どこ行った!? 来やがれ!!」


 地面が……つまり足をついている氷塊が揺れる。

 その振動が移動した。

 この方向は!


「ダンさん下!」

「わかったっ!!」


 ダンは強く踏み込んで走る。

 すぐ背後でユキモザメが氷の中から飛び出してきた!

 これはやっかいだ!


「そこだ!」

「うおおお!!」


 ゴウが素早く矢をつがえて一撃を飛ばす。

 ダンは背後を振り返ってユキモザメの腹へ向かった。

 ダンが素早く両腕にゴツいグローブを取り付けてゴウの矢が着弾すると同時に殴る!


 激しい振動をユキモザメの表皮が振動するのが見えた。

 矢がささった場所からは血。

 ダンが顔を歪める。


「ちいっ! 勢いを逃された!」


 さっきのユキモザメ表皮が振動したのはそれか。

 全体にダメージを逃すことで致命傷を避けたのだ。

 おそらくはそういうスキルか魔物としての特性だ。


 渾身の右突き拳があまり効かなかったが怯まずに左で殴る。

 数発叩き込んだところで尾まで出て勢い良くダンがはたかれた!

 ダンは軽く吹っ飛び受け身を取って着地。


「ダン!」

「だいじょ……おおっと!?」


 大きいとは言えあくまで流氷の上。

 摩擦が効かず滑って氷が割れた中に落ちかけ全力で走ってなんとか止まる。

 氷の穴はもちろん凍える水中へ一直線だ。


「まったく……次が来ます!」

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