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三百七十六生目 綱渡

「うーむ! 泳いで行くにはやや寒すぎるな!!」

「間違いなく体力が寒さに奪われて死にます。なのでここは待てば良いはずです」


 ダンが笑ってゴウが冷静に分析しているがどういうことだろう。

 どう踏み込もうにも周りには海しか無い。

 そして遠い所に流氷たち……ああ!


 その予想通り数分で音をたてながら巨大な流氷がこちらに接近してきた。

 ただこちら側には踏み込める場所があるかというと壁しかないな。


「では、先行しますから後から続いてください」


 ゴウが大きめの鞄からさらに大きな弓を取り出す。

 あの鞄も(くう)魔法"ストレージ"のように亜空間なほどに拡張してあるのだろう。

 ただの弓じゃなく青白く波のようにクネクネと手に持つ部分が曲がっていて普通では使いにくそうだ。


 ただこの世界はこういう武器のほうが特別な魔力があったりして強い。

 "魔感"もただものではないと告げている。


 矢をつがえて狙いすまし。

 発射。


 矢の尾にロープがついていて矢と共に飛んでいく。

 氷の崖に深々と突き刺さり抜けないようにかえしも刺さる。

 そして反対側のゴウはロープのピンと張るように調整してから矢に巻きつけ今度は地面へ向かって放った。


 同じくかえしが伸びてささり抜けなくなる。

 簡易的な道が一瞬で出来たようだ。


「おー、こなれてますね」

「行きましょう」


 ゴウはロープに身軽に飛び移ってその上を駆けた。

 ダンはロープにぶら下がったあと反動をつけて飛び移る移動を繰り返す。

 私は4つの足でちゃっちゃかと渡った。


 全員渡ったあとでゴウが矢を持つ。

 魔力が流れたあと両方のかえしが外れた。

 今の仕組み便利だな……見て覚えたから詳しくあとで解析してみよう。


 矢を回収して氷塊を登り頂上から改めて道を決める。

 氷塊は水の流れで動いていくから道を想定しづらい。


「奥へ行くためにも、まずはあまり動いていない場所につきたいですね……」

「あそこの大きな陸みてぇな氷はどうだ? あの周りを今乗っている流氷が動いている程度には、でけぇぞ!!」

「あ、本当だ」


 ダンがビシッと指した先。

 白く染まっている景色のむこう側の氷塊は全貌がまったく見えない程度には大きい。

 あれなら確かに。


「戻りの糸の用意もありますし、ローズさんの力でも戻れますから、あまり帰り道は心配しないでいきましょうか」

「戻りの糸ってたしか……」

「ええ、外界へ出るための道具です」


 たしか束ねられた雲の縦糸のような魔法道具だ。

 外界と迷宮が別世界なのを利用して自動的に異世界に入る瞬間に位置を記憶する道具。

 対象者に結んでから燃やすと魔法効果が発動して外界までワープできるスグレモノのはずだ。


「ようし、いい感じに流氷が並んで来たな! いくぞ!!」


 ダンがビシッと指差した先は確かに流氷同士がぶつかりあいそうなくらい接近しているのが見える。

 滑って踏み外さないようにはしないと。

 ダンが先行してジャンプを繰り返し流氷を渡っていく。


 ゴウもなんなくその後を続いていった。

 私も場所の見極めをしながら跳ぶ。

 よっと!


 1つめ跳んで2つめと連続。

 ここでわかったことがある。

 テンポに任せて勢い良く跳ぶと勢いで滑る!


 踏ん張りも地面との抵抗が効きにくい氷の上ではあまり効果がない。

 だからダンはひとつずつ確実に跳んでいた。

 ゴウはさらに慎重で尾を氷に触れる程度にかがんでからまた跳んでいる。


 3つ4つと跳んだところで先行していた彼らに異変が起きた。

 乗っていた氷塊同士が衝突した!

 不安定な足場でしかも大きく揺らされて思わず手をついている。


 もちろん氷雪用の防寒具に魔法薬による一時的な寒冷防止をしているが落ちたら複数の危険が考えられる。

 まずこの氷塊自体が押しつぶしてくる危険さもあるだろう。

 なんとか耐えて一気に跳び渡っていった。


「ふう! ヤバかったぜ!」

「おや……?」


 それはいいのだが……

 さらに連続で衝突して氷塊が割れた。

 5と6の氷塊が割れて7までないのは少し距離が遠い。


 一気に跳ぼうと思ったがおそらく勢いがつきすぎて7の氷塊から滑って落ちる。

 その先が安定した大氷塊だからあと少しなんだがなあ。


「来られますかー!?」

「はーい」


 ただまあしっかりと向こうが見えている状態だし大丈夫だろう。

 (くう)魔法"ミニワープ"!

 パッとゴウの隣までワープできた。


「おまたせ」

「おおっと! 魔法ですか」

「ガハハ! 便利だな! よし行くぞ!」


 ここまでは順調だ。

 今度はしばらく歩きになる。

 軽く走るけれど。


 さすがに彼らもこなれていて早い。

 そして体力をできるだけ使わずに慣れない道をも駆けていく。


「フン! さあ、挑むやつはどこからでもかかってきやがれ!」


 ダンが全身からプレッシャーを発しているおかげで弱い魔物たちは自然に襲ってこずにすみそうだ。

 まわりにそこそこ見えるがこちらを遠目で見ているだけだね。

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