三百七十四生目 元姿
「来ましたね」
手紙に書いてあった通りニンゲンの街にある門付近の一角にやってきた。
そこにはゴウと見知らぬ筋骨隆々な男がいた。
「ええ、早速……と行きたいのですが、あなたは……それとオウカさんは?」
「オウカは来られないんですよ。もう山のような書類仕事に追われていたのでそっとしておきました」
ちょっと同情する。
あの人いつも裏方の処理に忙しそうだものね。
それにたしか緊急時のレスキューですっ飛んで行く役割もあるからあまり遠いところにいくのも問題なのだろう。
「オレはダン! こいつの仲間だ、よろしくな!!」
「ダンとは同期で、貴女のことも詳しく伝えてあります。声が大きいのは欠点ですが……頼もしいですよ」
「あらためて、私はローズオーラ、ローズと呼んでください」
「応ッ!!」
確かに声がデカイな!
よく通る。
ダンはガハハと腰に手を当て豪快にわらった。
その容姿をみるにいわゆるミノタウロスと呼ばれる類に近いのかもしれない。
頭に牛の角を持ち筋肉と血管がはっきり浮いているが毛皮に覆われている。
"観察"したらニンゲンだったけれど。
レベルもゴウも含め35あるし見た目通りトランスもこなしている。
さらにそこそこ長い間冒険者しているらしいからそういう経験からしても十分強いだろう。
レベルはあくまで能力値の目安だ。
同じ種族内ならともかく別種族だとわかりづらい。
"観察"で最近は比較が出来るようにはなったからそこまで困らないが。
「それにしてもだ、こうして見る分にはよくわからんな、その聞いた話のことがよ」
「まあ、それは移動中おいおい」
この世界のニンゲンからすれば私のホリハリー姿はちゃんと着込んでいれば魔物に見えはしないだろう。
それに実力も隠している。
「じゃあ行きましょう、遠いのでカルクックに乗りますが、荷物は最低限で良いですよね?」
「ええ、テントもいらないです」
「おいおい、話には聞いているが、本当に大丈夫か?」
ダンだけ半信半疑だったが私達がカルクックに乗ってひと目のないところまで移動したあとに納得してもらえた。
私が空魔法"ファストトラベル"で目的地になるべく近い探索済み区域まで飛んだからだ。
とはいってもまだここから1週間はかかるらしいが……
「おおお! すげえな!? だいぶの距離を一瞬で! コレがローズさんの力か!」
「ええ。夜になったら安全圏で休めばいいので、疲労をためずに移動しつづけますよ」
「そりゃあいいや! そんなに使ってもエネルギーカツカツにならないとは、よっぽどやり手だな!」
まあ"無尽蔵の活力"でほとんど節約できるしすぐ復活するからね。
魔法自体もかなり効率的に使えるように操っている。
ただまあうれしくはある
「ありがとうございます」
「ガハハ!! さあ行くぞ!」
そこから順調に乗れる烏骨鶏であるカルクックたちに乗せてもらい地を駆ける。
魔物が襲ってきても私の剣ゼロエネミーのオーラで追い払う。
敵愾心を削る力は本当に便利だ。
私が"無敵"に求めていた能力でもある。
いやまあゼロエネミーのオーラに上乗せして使っているけれど。
「すげえな!! それが噂のEX.ハイレア級か!」
「国宝一歩手前……その能力も納得ですね。どうやってそんな剣を手に入れたのかが、謎なのですが……」
「いやいや、たまたま良い職人さんと出会って打ってもらっただけだよ!」
ゼロエネミーは国宝認定を受けられるほどと言われたが国宝にされたら国の所持になるという仕組みがある。
もちろんその分のバックアップはあるだろうが面倒になるのは確実。
だから認定を1段階下げてもらっていた。
カルクックに乗って走りたまに休ませつつも夜になったら"ファストトラベル"の道標になりそうなめぼしい特徴を見つけてここに帰ってくるための準備。
それからアノニマルースへと"ファストトラベル"した。
ゴウとダンはアノニマルースに来るのは初めてだ。
到着したらキョロキョロと落ち着かなかった。
「うおお、マジで魔物ばっかりだ!! あ、人もいた!!」
「大丈夫、とは知っていっても身構えてしまいますね……しかし、聞いた話よりもまた発展度が増しているような。本当に魔物たちが……?」
案内係からパンフレット渡される時もいちいち警戒し罠がないかチェックするからちょっと笑ってしまう。
いやまあ冒険者として気持ちはわかるのだが。
私も"進化"を解いてホリハリーからケンハリマへと戻った。
「おお!? 小さくなって獣のように……本当に魔物だったんだな!! ガハハ!! こりゃすげえ!」
「褒めてくれたの……かな? ありがとうございます」
「応ッ!!」
やっぱりこの姿が1番楽だね。