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三百六十七生目 姉弟

「ひ、広い……」


 外壁の中に入って宣教師ゼストが言った初めての言葉がそれだった。

 アノニマルース内は絶賛工事中である。

 そのためかなりのエリアを空白が埋めていた。


 とはいえポツポツと建築中なためそこまでド田舎を感じさせるわけでもないが。

 そんなところで作業中なのは職人たちもいる。


「む!? なぜ人が!?」

「魔物が中心だけれども、結構いるんですよ」

「もしや拉致されて……」

「給料で雇われているそうです」

「そ、そうなのですか」


 さっとカムラさんのフォローでなんとかなった。

 宣教師ゼストは彼なりの正義感で判断しすぐに行動するっぽいのが数日ともに旅したうえでの彼に対する評価。

 ちょっと危なげ。


 そして建築物資を運ぶ骸骨たちを見て宣教師ゼストが顔を歪める。


「くぅ、ここでもやはり、死があまりにぞんざいに扱われている……!」

「落ち着いてください、今回は見に来ただけですよね」

「それに敵対行動すると追い出されちゃいますから!」

「ぐ……むむ……」


 宣教師ゼストが色々言いたげながら言葉を飲み込んだ。

 おとなしくしていてくれるらしい。

 ふう……


 今度は正面から1匹の魔物が歩いて近づいてきた。

 一瞬身構える宣教師ゼストだったがすぐに解くこととなる。

 その姿は……キュートな妖精だった。


 服もしっかり着込んでもともと植物に近い魔物ながら美しく白い肌にも見える。

 というより見えるようにした。

 妖精は化粧しているのだ。


「こんにちは! 案内係です! 冒険者のみなさん、パンフレットはどうですか?」

「ひとつもらいましょう」

「はいどうぞ!」

「お、おお!? ……はい」


 カムラさんが指を1本立てて妖精が手に持ったパンフレットを宣教師ゼストに渡す。

 手書きのカラフルな『みんなの街アノニマルースについて』の小冊子だ。

 ちなみに私は光神術"ミラクルカラー"で色を変える技術でコピーのようなことが出来ないか試してみたがさすがに今すぐは困難だった。


 それにしてもいい感じの演技だぞ!

 さすが1番上手だからとみんなから推薦されただけある。

 宣教師ゼストが目をパンフレットに落としたさいに妖精が私に向けてウインクした。

 私も小さくうなずく。


「それでは口頭で説明もしながら、休憩所へ案内しますね! 料金がいりますが、夕食の時間はもう少しお待ちくださいな!」

「ああ、いや、そこまでは……!」

「まあまあ、せっかくですし、じっくり観光しましょう」


 カムラさんが細かくフォロー入れてくれて本当に助かる……

 奥へと歩いていく最中解説をしていく。


「まずはじめのページにある警告ですが、やはり大事なことですが、誰であれ警告なしに攻撃するのは、危ないのでしないでくださいね。最悪拘束させてもらいます」

「それはそうですな……うん? ということは、警告さえすれば大丈夫なのですかな?」

「同意の上であれば、大丈夫です! バトルが好きな魔物や冒険者も多いので……ああ、ほらあそこも」


 妖精が指した先にエネルギーが衝突しあいバチバチとほとばしる音が。

 冒険者たち5人と魔物5匹が正面から戦闘していた。

 周りにギャラリーもいて近くで『バトル中』の看板が立っていた。


「だ、大丈夫なのですかな、あれは……」

「ええ、よくあることなので! 決められたルール内での戦いですから、まあスポーツのようなものですね」

「な、なるほど……私とは少し遠い世界の話のようで」


 宣教師ゼストは困り顔で先にいそいそと進んだ。

 私達もあとに続く。


「……うん? そういえば、この中に来てからあまり風が寒くありませんね」

「よく気づいてくれました! パラパラっとめくっていただいて……はい、ここです。このページをごらんください!」


 妖精がパンフレットを数枚めくって1つのページにたどり着く。

 確か『環境について』というページだ。


「ふむ……気温は、特殊な魔法陣により……なっ!?」

「はい、アノニマルース内ならば個々に合わせた適温になります! なので炎を扱いそうな魔物や氷を扱いそうな魔物は気をつけてくださいね。暑すぎたり凍えたりしちゃいますから!」

「なんと!? まさかそんなことが、いや、こんな大規模に……? 現実なのか……?」


 私達がめちゃくちゃ苦労して作ったからな!

 驚かれるとうれしい。

 心の中でガッツポーズ。


「さあ、町はこの奥ですから、行きましょう!」


 妖精に導かれるまま宣教師ゼストは歩き私たちはそのあとに続く。

 妖精がパンフレットの中身を解説するたびに宣教師ゼストは驚いたり考え込んだりと忙しくしていた。

 ……おや。向こうにいるのはハックかな。

 身体に直感的に緊張が走る。


「あれ? あ、おねえ――」


 その瞬間私はホリハリー史上最速の動きを見せたと思う。

 風のごとく流れるようにハックと距離を詰めて頭を抑える。

 思考は後から追いついた。


「あぶっ!?」

「うわー! キュートな魔物ですね!」

「……? え、ええまあそうですか、な?」


 よし気づかれていない!

 小声でホエハリ系言語でバレないようにささやく。


「だから、今はダメだって……!」

「ゴメン、うっかり」


 胃が痛くなってきた。

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/473009/blogkey/1903963/

365記念の活動報告です!

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